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そうして冰 が周 らと共に自室へ赴くと、これまで同室だったモデルたちが驚きと興奮でてんやわんやの大騒ぎとなった。
「よう、邪魔するぜ」
「え……! 周 ……さん?」
「ウッソ……! なんで周 さんが……」
驚く彼らに向かって周 はにこやかに言った。
「コイツの引越し作業にな。少し騒がしくしちまうが、すまねえな!」
「い、いえ……」
「ど、どうぞお気遣いなく……」
周 と共に冰 もペコリと頭を下げる。
「皆んな、ごめんね。ちょっとバタバタしちゃうけどすみません」
彼ら若手にとって周 はまさに憧れ中の憧れである。階下の――いわば外界ともいえる自分たちの大部屋に周 のような大物が姿を見せたというだけでも大変なことなのだ。それにも増して当の周 は進んで荷造りなどを手伝う様子だ。閉めた扉の中からは仲睦まじく作業をする会話が聞こえてくる。
「よし、まずは服からか。タンスの中のをこっちのハンガーラックに移しゃいいな」
「あ、はい……! すみません、周 さんにそんなことをさせてしまって……。ぼ、僕がやりますので……どうぞお座りになられていてください……!」
「バカタレ。なんの為に来たと思ってんだ。一緒にやった方が早えだろうが。俺らが荷物を詰めっから、雪吹 は遠慮せずに指示出してくれ。李 は小物系をまとめた箱を台車に乗せてってくれ」
「すみません、周 さん! 李 さんも……本当に恐縮です」
「いいって、いいって。雪吹 、お前遠慮し過ぎだぞ。まあいい、これから時間を掛けて俺が調教してやっから」
周 はそう言って笑う。
「何が調教ですか! そんな言い方をしたら雪吹 さんがますます縮み上がってしまうでしょうに!」
李 も横から楽しそうに揚げ足を取っている。
「すみません、お二人にご足労お掛けしてしまって……」
「ああ、ああ構わん。それより手を動かせ雪吹 !」
「は、はい……! すみません!」
真っ赤に頬を染めながらも、冰 は心ここに在らずというくらい緊張と感激の入り混じる心持ちでいた。
一方、部屋の外では同室の者たちだけでなく、隣のそのまた隣からも噂を聞きつけたモデルたちが駆け付けて来て、ワラワラと大騒ぎになっていた。
「周焔 さんが来てるって?」
「マジか?」
「な、な、どんな感じだった? 間近であの人が見れるなんて超絶ラッキーじゃね?」
「すっげカッコ良かった! まさに神って感じだったし!」
「ウッソ! 俺も拝みてえー!」
「つか、なんでいきなしこんな外界においでになったわけ?」
「雪吹 の引越しを手伝いに来たんだって! ほら、あいつってばカップリングモデルに抜擢されたじゃん! そんで今日から周 さんと同部屋で住むんだって話!」
「うそ! マジで? もう一緒に住むの?」
「早くねえ? ついさっき発表あったばっかなのによー」
「雪吹 も中にいんの? 二人、どんな雰囲気だった?」
「んー、チラッとしか見てねえけど、仲良さそうに見えたけどな……」
皆一様に中の様子が気になって仕方ないらしい。扉越しだから声がくぐもっていて聞こえづらいものの、時折周 の笑う声が聞こえたりしていて、楽しそうな雰囲気であるのは間違いない。
「おい、押すなって!」
「どんな話してんだ? まさか周 さんが引越しの手伝いに来るなんて……」
「くぅー! 羨ましいったらないぜ! 雪吹 のヤツ、マジで棚ボタじゃん!」
「あーあ、俺も周 さんか鐘崎 さんの相手に選ばれたかったなー」
冰 の部屋の前は野次馬の人だかりでおしくらまんじゅうのようになっており、扉が軋む勢いであった。
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