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「ああ。綾 さんと俺は持ち味が似てるって言われてたからな。オーナーのレイさんがバディ系カップルが似合うんじゃねえかって言ってな」
綾乃木 も鐘崎 も高身長な上に体格もがっしりと男らしい筋肉質だ。恋愛系を想像させるカップルよりも、互いに同等という立ち位置の方が似合うだろうということでバディ系に決まったのだそうだ。
「綾乃木 さんの前の年は片想い系だったっけ? 後輩モデル君があんたに憧れて慕うっていうパターン」
「ああ、そうだったな」
「鐘崎 さんっていえばこれまでは割と片想い系が多かったよね? 綾乃木 さんとのカップルが異色っていうかさ」
「そういやそうだな。カップリングモデルっていうシステムが出来てからは、そういうコンセプトが多かったな。まあ組む相手が殆ど年下モデルだったってのもあるが」
鐘崎 はかれこれ五年ほどカップリングモデルに抜擢されているが、昨年度の綾乃木 以外はすべて後輩モデルと組まされていた為、自然と片思い系になっていたようだ。
「俺も鐘崎 さんより年下だしさ、今回も片思い系でいいんじゃねえかな」
紫月 の提案に鐘崎 当人は驚いたように瞳を見開いた。
「……一之宮 、だがあんたはそれでいいのか?」
「ん、鐘崎 さんの持ち味が一番生きるのはやっぱこう……相方に慕われて、けどあんたの方はさして興味がねえっていう冷たさみてえなの? そうゆうのが″らしい″んじゃねえかって思うんだよね」
ファンの人たちもそういった雰囲気を期待していると思うしと紫月 は言った。
「一之宮 がそれでいいなら……」
しばし考え込んでいた鐘崎 だったが、
「いや待ってくれ。それも悪くはねえが、ある意味マンネリともいえる。だから――今回は逆にしたらどうだろう」
「逆?」
「俺が一之宮 に片思いするっていうパターンだ」
「俺に? 鐘崎 さんがか?」
奇を衒ってはいるが、それではファンも納得しないんじゃないかと紫月 は苦笑気味だ。
「あんたのファンが怒りそうだ」
砂糖で埋めた珈琲を口に含みながらニヤっと悪戯そうに笑う。その仕草がなんとも艶かしくて、鐘崎 は図らずもドキッとさせられてしまった。
だがまあ、確かにそうだろう。鐘崎 が変人と言われるような相方にゾッコンになるシチュエーションなど、ファンからすれば論外だろうからだ。おそらくは相方になった紫月 に対して嫉妬がすごいだろうし、例のコミュニティ板などではブーイングと罵倒の嵐になりそうなのは想像に容易い。
「……まあ、少なからず文句も出るかも知れねえがな。このコンセプトでいくとあんたにとばっちりがいきそうだが、そうなれば俺は全力であんたを守る。誰にも手出しはさせねえ」
心強い言葉に紫月 はもちろんのことだが、言い切った鐘崎 本人も自らの言葉に驚いていた。
何故だろう、この紫月 という男にはこれまで誰と組んでも感じたことのなかった感情が湧いてしまう。誰にも渡したくはない、この相方は自分だけのものなのだと世間に見せつけてたくて仕方ない。理由もなくそんな思いが沸々と胸の奥を焦がすような気にさせられるのだ。
もしかしたらコンセプトとというだけではなく、案外本気でのめり込んでしまいそうな予感に鐘崎 はガラにもなく戸惑いを感じるほどだった。
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