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18 二人の密談

 その数日後のことだった。鐘崎(かねさき)は隣室の(ジォウ)と共に行きつけのバーに来ていた。老舗ホテルの一画にある落ち着いた趣きの店だ。個室もあり、人目につきたくない時には最適といえる、二人の気に入りの場所だった。 「お前から誘ってくるなんざ珍しいな。もしや″本業″の方で何かあったのか?」  (ジォウ)がバーボンのロックグラスを揺らしながら不敵な笑みを見せている。相反して鐘崎(かねさき)の方はやたらなことをぬかすなといったふうに、ジロりと視線をくれた。 「軽はずみなことを言うな。″本業″に関しちゃ俺とお前とレイさんしか知ってる者はいねえんだ」  なにやら意味深なやり取りである。二人は一応有名なトップモデルだ。それ以外に本業があるなどと知れたら、一大事である。実のところ、紫月(しづき)(ひょう)にも本業といえる裏の顔があるわけだが、現時点では鐘崎(かねさき)(ジォウ)もそのことを知らなかった。彼らについては単にモデルという立場の一般人と認識していたからだ。 「本業のことじゃねえってんならいったい用向きは何だ」  鐘崎(かねさき)がなんだか思い詰めたような顔をしているのを、公私共に馴染みに馴染んだこの(ジォウ)が見逃すはずもなかった。 「ああ……ちょっとモデルの方の件でな」 「なんだ。″表″の方か。で、どんな悩みを抱えてるってんだ?」 「悩みってわけじゃねえ。単にお前の意見を聞いてみたかっただけだ」 「ますます珍しいこったな。何を聞きてえんだ」  鐘崎(かねさき)はグラスの酒を一口含むと、小さな溜め息と共につぶやいた。 「お前さんの方はどんな塩梅なんだ」 「どんなというと?」 「雪吹(ふぶき)だっけ、お前の相方。ここ数日一緒の部屋で暮らしてみてどうだと訊いたんだ」 「どうって、まあ快適だ。雪吹(ふぶき)は性質も素直で今時の若者にしては珍しいくれえきちんとしてるといった印象だな。昨夜なんざ手作りのメシを作ってくれてな。たいそう旨かった」 「ほう? メシね」 「あいつも俺と同じ香港生まれだそうでな。昨夜はシュウマイやら水餃子を作ってくれたぞ。香港の話で盛り上がってな、お陰様で俺たちの方は楽しくやれそうだ」 「そういやヤツのプロフィールにそんなことが書いてあったっけな。良かったじゃねえか、同郷同士で気が合いそうだ」  またひとたびグラスを口へと運ぶ。何か言いたい素振りを見せつつも、なかなか本題に入らない鐘崎(かねさき)を横目に、(ジォウ)は首を傾げてしまった。 「てめえの方こそどうなんだ。一之宮(いちのみや)ってのは俺も今回初めてまともに話したが、なかなかにいいヤツじゃねえか」  変人などと噂されているのが不思議なくらいだと(ジォウ)は笑った。 「ああ、そうだな」 「そういやてめえらのコンセプトは決まったのか?」  未だ口渋っている様子の鐘崎(かねさき)に、(ジォウ)は自分から話題を振ることにした。 「ああ、ついさっきレイさんに会って正式に決めてきたところだ。俺たちは片想い系でいくことになった」 「片想い系かよ。なんだ、それじゃこれまでと変わらんじゃねえか」  ()り慣れたコンセプトで良かったなと笑う。ところがどうやら少々意味合いが違うようだ。 「コンセプト自体は変わらんが、今回は逆だ」 「逆?」 「俺の方が熱を上げるって設定になったんだ」 「おめえの方が?」  (ジォウ)は驚きに目を見張ってしまった。

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