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なるほど。それで先程から鐘崎 の様子が変なわけかと周 は苦笑を誘われてしまった。おおかたそのコンセプトが不満なのだろうと思ったからだ。
ところがどうもそうではないようだ。
「実は俺の方から希望したんだ。一之宮 に片想いを抱いているが、なかなか報われねえっていうコンセプトだ」
周 はますます驚かされてしまった。
「お前の方から希望しただと?」
「ああ」
「ほう? そいつぁまた……どういった心境の変化だ。てめえの持ち味からしたら真逆な感じを受けるが」
鐘崎 の持ち味といえば寡黙であまり感情を表に出さないというのが似合いだ。相方モデルがどんなに熱を上げても鐘崎 の方では興味を示さないという冷たさが、ファンをヤキモキさせるわけだ。事実、これまでもそういった雰囲気のコンセプトが多かった。
「去年の綾乃木 氏とのバディ系は異色と言われてただろうが」
「まあな。そういやお前の方はバディ系オンリーだったな? 今年の雪吹 との溺愛系ってのは珍しいパターンではあるな」
「雪吹 は可愛いタイプだからな。さすがに俺とのバディ系は無理があるだろう。レイさんもそろそろ新しいタイプの相方と組ませる方がマンネリ化しねえだろうと思って、俺たちを組ませたんじゃねえかと思う」
「確かにな」
「――で? そのコンセプトのことで何か悩みでもあるってのか?」
「いや――悩みってわけじゃねえ。ただ――」
鐘崎 はそこまで言い掛けたものの、
「――何でもねえ」
悪かったなと言い、それきり口をつぐんでしまった。
周 にとってはまったくもってワケが分からない。
「何だ、てめえ。今日はヘンだぞ」
「ああ、いや――すまねえ。ただお前に俺らのコンセプトが決まったことを伝えておきたかっただけだ」
「――ほう?」
本当にそれだけとも思えないが、周 は敢えてそれ以上突っ込まないことに決めた。まあ、必要ならいずれまた言いたくなった時に聞いてやればいいだけのことだからだ。
「どうせ部屋も隣同士なんだ。今度っからは部屋飲みも悪くねえだろ。一之宮 と二人で遊びに来りゃあいい。雪吹 の手料理をおめえらにも食わしてやりてえしな」
自慢げにそんなことを言った周 に鐘崎 は唖然とさせられたが、不思議と心温まる気がしてならなかった。
(案外この野郎も今は気付いてないだけで、いずれ雪吹 に惹かれていったりしてな)
そうなればいい――などと思ってしまうこと自体が鐘崎 にとっては驚愕といえるだろうか。だが、仕事としてのカップリングを離れたオフであっても周 が雪吹冰 に惹かれれば、自分も一之宮紫月 にこれまでは有り得なかった想いを抱いていることを打ち明けられる気がするからだ。二人でああでもないこうでもないと相談し合える日がくるかも知れない。鐘崎 は無意識の内にもそんな楽しい想像に心を躍らせるのだった。
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