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20 カップリングとしての初舞台
そうしていよいよ新たなカップリングモデルとしての日々が本格的に始動し始めた。
周 と冰 はステージ中心の活動ながらも、ファッション雑誌に於いても特集を組まれることがあったりで、カップルとなって日も浅い内から業界内では既に相当な話題に登るようになっていた。
一方の鐘崎 と紫月 の方も順調な滑り出しのようだ。本来の下着モデルに加えて、大人の男同士のブロマンス特集などと銘打った企画記事を打ち立てる雑誌社も出てきて、ターゲットであるゲイカップルの顧客以外に新たな女性ファンも付いてきたらしく、オーナーのレイは機嫌も上々である。モデルクラブとしても、まさに押しも押されもしない人気と立場がより一層強固になったのは事実であった。
そんな中、業界内では非常に関心度の高い大きなイベントが催されるとあって、レイのギムナジウムを含めた各モデル事務所はその準備に浮き足立つ日々を迎えることとなっていた。
それというのは、共通のコンセプトに従って各事務所が服のデザインを競い合うという一大イベントである。これは年に一度催される大々的なファッションショーであり、会場は都内一等地のイベントホールで行われる。オートクチュールとかプレタポルテとかといった類のショーとは少々趣きが違い、毎回ひとつの『お題』のようなものが提示され、それに合わせた服をモデルたちが纏って優劣を競うというニュアンスのものなのだ。
お題というのは、例えばゴシックであったり古代中国の皇帝であったり、はたまた裏の世界に生きるマフィアであったり、かと思えば神々をモチーフにした天界と魔界というお題が出された年もあった。他にも古き佳きヨーロッパの紳士淑女が集う貴族階級の舞踏会などがテーマであった年や、アメリカのフィフィティーズやシックスティーズの時代に生きたダウンタウンの若者たちなどといったテーマの年もあった。
とにかく様々なシチュエーションの設定が各回毎に決められて、参加するモデル事務所はそのお題に沿った衣装を一からデザインしてモデルたちがステージ上で披露するというものである。単にランウェイを闊歩するだけでなく、時にはダンサーによる本格的なミュージカル仕立てが用いられることもあったり、巨大スクリーンに映像を映し出して映画仕立てで魅せるなどの他、台詞の無い演劇のような演出を仕掛ける事務所もあったりして、単なるファッションショーとは少々意味合いの違うイベントといえる。
観にくる客たちもそれぞれが推すモデル事務所毎にファンクラブ同士が揃いのパーカーや団扇などを作成。競い合って応援したりと、主催者側も参加者側も多いに盛り上がれるという異色のイベントなのだ。レイの事務所もこれまで幾度か参加していた常連の部類だ。当然、看板であるカップリングモデルたちをメインに、どう見せるかといった案が打ち出されていった。
ギムナジウムの館のペントハウスでレイがお題を告げる。
「今回のテーマはウェディングに決まったぞ」
しかも、なんと同性同士の挙式というコンセプトらしい。そうとくれば普段から男性モデルオンリーを売りにしているレイの事務所は鬼に金棒といった、願ってもないお題といえる。案の定、レイは意気揚々の得意顔でいた。
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