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「今回、我々の事務所にとっては打ってつけのお題だ。従って注目度もこれまで以上に高くなるのは必至だからな。各所からの期待が高い分だけ『なんだ、この程度か』とガッカリな結果に終わらせるわけにはいかねえ。まずはフォーマル担当の焔 と冰 の方から決めていこうか」
専属デザイナーに当日のヘアメイク担当も交えて綿密な打ち合わせが成されていく。
「お前さんたちのカップリングコンセプトは『溺愛』だからな。ここはひとつ思い切り甘い感じで幸福感を全面に押し出す形でいってみるのはどうだ?」
レイ曰く、青葉若葉の美しい森の中の教会で二人だけの甘い挙式を演出してみたらいいのではないかと言う。二人はこの春から組み始めたカップリングでもあるし、初々しい関係性ならではの熱い想いを強調すべく、森の隠れ家のような場所で二人きりで誓い合う挙式というのもそそられるのではというのだ。
「スクリーンにそういった背景を映し出してだな、スポットの光で木々の間から差し込む太陽のキラキラ感を演出するんだ。その中で焔 が冰 を抱き上げる――とかはどうだろう」
身振り手振りでレイがステージ上での動きを体現して見せる。
「いいんじゃねえか? だったらステージの先端で俺が待っていて、雪吹 は反対側から俺に向かって駆けて来る――とかも動きがあって面白えかもな」
周 がニヒルな笑みで案を口にする。レイも納得の様子だ。
「いいぞ、焔 ! お前さんたちの体格差からもそういった演出なら映えそうだ! 衣装は――二人とも純白のスーツでどうだ」
「いいな。雪吹 には良く似合うだろうぜ」
そんなレイと周 の会話からデザイナーも彼らの意を汲み取っていく。
「では周焔 さんのスーツは男性らしさを強く打ち出した粋なテイストで仕立てるとして、雪吹 君の方はそれよりは若干若々しさを意識した甘めで可愛らしい印象にしましょうか」
デザイナーから見ても、二人の内どちらがリード側に当たるかというのは一目瞭然のようだ。年齢的にも大分上で、体格もがっしりとしている周 がいわば旦那の役割で、年若く華奢な冰 が嫁さん的なイメージで映るのは誰が見ても明らかだろうからだ。
「そうだな。デザインは任せる。挙式の為の白いスーツは、焔 が選んで冰 に贈ったっていうストーリー仕立てでいこう。挙式当日の朝、冰 がそのスーツに袖を通す際の幸せそうな表情なんかを事前に撮影しておいて、スクリーンに流せばいいんじゃねえか?」
レイの頭の中はすっかりステージの構成でいっぱいのようだ。自身もトップモデルだった彼にしてみれば、ランウェイ上でどう動けば観客の視線を惹きつけられるかというのが、次から次へと脳裏に浮かんでくるわけである。
「よし! 焔 ・冰 組の方はこれで行こう。お次はアンダーウェア部門の遼二 と紫月 のコンセプトだ。こっちはちょいと頭を捻る必要があるぞ。今回のお題は同性同士のウェディングだからな。アンダーウェア部門といったところで、まんまパンツ一丁でランウェイを歩くわけにもいかねえからな」
きちんと下着のテイストを残しつつ、且つウェディングというお題に沿うアイディアを盛り込まなければならない。さすがのレイもすぐにはこれといったアイディアが浮かんで来ないようだ。
そんな中、それまでは黙って皆の意見に耳を傾けていた紫月 が、ソファの上で前屈みになって肘をつきながらポツリと呟いた。
「ならさ、こういうのはどうだべ。背景をジャングルに見立てて、俺らはそこに生きる動物を擬人化した感じの衣装にするとか」
思いもよらなかった構想に、皆は一堂に紫月 を見つめた。
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