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 それからは普段の雑誌撮影などに加えて、稽古場での特訓が始まった。巨大スクリーンに映し出すコンセプトに沿った映像などは、この春からマネージメント専任となった(リー)を筆頭にして、彼のサポート役には(リゥ)が抜擢された。(リゥ)は元々事務所内モデルたちの広報に使う画像やプレスレリースの作成など、デジタル関連を担当しているベテランである。歳はまだ若く、(ジォウ)鐘崎(かねさき)らの少し下といったところだが、各種デジタルソフトの扱いなどに精通している彼は、(リー)にとっても非常に頼りになる存在といえた。  また、稽古場で(ジォウ)らモデルの動きや振り付け全般を指導する役には綾乃木(あやのぎ)が抜擢され、細かい所作を含めた綿密なレッスンが積み重ねられていった。綾乃木(あやのぎ)もつい先頃までは現役モデルとして鐘崎(かねさき)とカップリングを組んでいたというベテラン中のベテランである。しかも、幼い頃から修業するまではモダンバレエを習っていたという経歴の持ち主でもあった。ステージ上でのことも熟知しているし、どんな見せ方をすれば観客の目を惹きつけられるかもよく分かっている頼りになる存在だ。今回は同性同士のウエディングという――レイの男性モデルオンリーという事務所にはこれ以上ないお題が向こうからやって来たという好機もあって、皆の思い入れもいつも以上に強いものとなっているのだった。もちろん、代表のレイにとっては最優秀賞を視野に入れているのは言うまでもない。連日、自ら稽古場へ顔を出しては、直々にモデルたちの指導にあたるという意気込みぶりであった。 「同性同士のウエディングっていうお題だ。うちは野郎オンリーの事務所だが、当然女性同士のカップリングで攻めて来る事務所もあるだろう。カップルの内、どちらか片方が男装の麗人――みてえなコンセプトで来ることも充分予想できるからな。お前さん方もしっかり自分たちのコンセプトを意識して稽古に励んでくれ!」  確かに全ての事務所がゲイカップルで出場してくるとは限らない。当然、女性同士のカップリングをコンセプトにしてくる可能性もあるはずだ。 「女性同士か――。男装の麗人と言やあ、現実の男には出せねえファンタスティックな雰囲気だろうからな。そう言った意味では逆立ちしたって勝ち目は無えな」 「確かに! 世の中の女性たちが幼い頃から頭ン中で思い描く理想の王子様像という点でも、本物の女性が演じることで俺たち野郎連中よりはよっぽど核心に迫る演技をしそうだな」 「だよなぁ。ショーってのは現実離れした″夢″を体感できるひと時のファンタジーでもあるしな。俺らも負けねえように頑張らねえと!」  (ジォウ)鐘崎(かねさき)紫月(しづき)がそんな話をしているのを聞きながら、(ひょう)もまた、彼らのようなベテランに混じって自分には何ができるだろうと思いを巡らせるのだった。 (とにかく――(ジォウ)さんの足を引っ張らないように頑張らなきゃ!)  それには実際に木漏れ陽が差す森の中のチャペルにでも行って、その場の空気感を体感するところから何かを掴めるかも知れない。そう思った(ひょう)は、次の休日を利用して実際に足を運んでみようなどと思うのだった。

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