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34 新たな受難

 こうして(ひょう)の会心のアドリブで、レイの事務所はあわや最悪の事態を見事逆転。素晴らしいステージを遂げた。  その度量と功績を讃える間もなく、次は鐘崎(かねさき)紫月(しづき)のアンダーウェア部門が始まりを告げる。こちらもまた、(ジォウ)(ひょう)ら同様に出番は五番目であった。  順調にショーが滑り出し、二番目の事務所の演技が始まった時だ。またもや頭の痛い事態に悩まされることになるとは思ってもみなかった。  なんと、鐘崎(かねさき)らがコンセプトに選んでいたジャングルのシチュエーションが被ってしまったからだ。しかも二番目の事務所の方が先に演じたことから、同じシチュエーションで行えば、どちらかがパクったと思われかねない事態となってしまったのだ。 「分が悪いのはどう見たってウチの方だ。後から演じる方がパクったと取られるだろう」  レイが眉間の皺を深くする。ステージ上では動物を擬人化したと思われるワンショルダーのデザインまで同じで、毛繕いをするという流れまでもがほぼ一緒だ。さすがに黒豹と白豹ではなかったものの、彼らの方は二頭のライオンで構成されている。 「クッ……毛繕いの動きまで一緒とはな」  ここまで被るのは最早″たまたま″では片付けられない偶然だ。明らかに誰かが事前にコンセプトを横流ししたと思われる。  だが、それこそ犯人は誰だなどと言っている暇はない。衣装はもちろん、ジャングルをイメージした小道具などを取り替える時間もない――。 「……どうする。本番まではあと二十分足らずだ」  レイはすっかり頭を抱えてしまっている。 「仕方ねえ。レイさん、シチュエーションが被っちまったといって今更変えようがねえ。こうなったら演技力で勝負するしかねえな」  鐘崎(かねさき)が言う。 「毛繕い自体は同じでも、幸い振り付けは全く違う。何よりモダンバレエの動きは俺たち特有のものだし、これまでのショーでは見掛けたことがねえ斬新さがある。あとは俺と紫月(しづき)に任せてくれねえか」 「うん、そうだよ! 俺と(りょう)にしか出せねえ色気で勝負してみせるぜ!」  鐘崎(かねさき)紫月(しづき)の意気込みは嬉しいが、シチュエーションがまったく同じでは良くも悪くも相当な話題に上がってしまうことは必至だ。  しばしの後、意を決したようにしてレイは言った。 「――こうなったら仕方ねえ。シチュは同じでもストーリーを変えるしかねえ。毛繕いの前にもう一つ新たな動きを足そう!」 「動きを足すって……今から即席で振り付けを考えようってか?」  いかにベテランの鐘崎(かねさき)らであっても五分十分で考え付くものでもない。例え振り付けが考え出せたとしても、リハーサルも無しのぶっつけ本番では二人の動きが上手く合わせられるとも思えない。  ところが、レイは振り付けなど必要ない――! と、不適な笑みを浮かべてみせた。

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