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何だかんだとハプニング続きの一日ではあったが、結果としてはこれ以上ない素晴らしいショーになった。アンダーウェア部門では審査員はもとより観客からの一般投票に於いても満場一致の勢いで鐘崎 と紫月 の組がトップを独占。フォーマル部門では周 ・冰 とタイで女性同士のカップルでウェディングを演じた事務所の二組が最優秀賞に選ばれた。
レイからはモデル四人の咄嗟の機転を大絶賛され、それに合わせて裏方でも尽力してくれた李 や劉 にも感謝の言葉が贈られた。帰りのマイクロバスの車中では、皆がそれぞれの活躍を讃え合って和気藹々。
「しかしお前さんたちの機転には正直驚かされたし、本当に助けられた! 冰 のアドリブには度肝を抜かされたし、即座にそれに合わせた焔 の機転も見事だった」
さすがの俺でも現役時代あんな危機に陥ったことはなかったぜと、レイが興奮気味で大絶賛を繰り返す。
「まさにレイさんの言う通りだな! 最初に冰 の格好を見た時は正直焦ったぜ」
周 もまた、泥だらけの衣装を見た瞬間、このステージをどう打開すればいいかと脳がパンクしそうになったと言っては苦笑。
「だがあのアドリブは見事だった。冰 が靴下を脱ぎ始めた時、頭の中にシチュエーションが浮かんできてな。教会へ来る途中で転んだ拍子に水溜りにでも突っ込んだんだろうってな光景が見えた気がしたんだ。本当にすげえ発想だった」
「いえ、そんな……。僕の方こそ焔 さんがすぐに考えてることを分かってくださって、合わせてくださったから助かりました! 本当にありがとうございました!」
その傍らで鐘崎 と紫月 も二人の機転を大絶賛。そんな彼らの決闘シーンも凄かったと、周 はもちろんだが特に冰 の方は目を剥いて驚いていた。
まあ、周 と鐘崎 は互いに裏の世界に生きる者同士という素性を知っているわけだから、体術が達者なことは織り込み済みだが、紫月 に武術の腕があるとは思っていなかった為、驚かされたのは事実だ。
「まさか一之宮 が武術に長けているとは思わなかったぜ」
周 がほとほとびっくりしたと言って目を丸める。むろんのこと鐘崎 にとっても同様だ。
「最初の攻撃をかわされた時はホントに驚いたぜ……」
怪我をしない程度にと思って繰り出した攻撃というのもあったが、ああも軽々かわされるとは思ってもみなかったからだ。まるで肩透かしを食らったように、一瞬戸惑ってしまったと言って鐘崎 は笑った。
「うん、攻撃かわした時に一瞬身構えた遼 の構えで空手かなって思ったんよ。そんじゃちょっと仕掛けてみっかなってさ。レイさんがある程度本気出せって言ってたけど、あの瞬間にその意味が分かったっていうね! きっとレイさんは俺らが空手や合気道やってるのを知ってたからあんな作戦に出たわけだなって」
「ああ、俺もあの一撃でレイさんの言ってた意味が分かった。合気道は幼い頃からやってるのか?」
「ん、ガキん頃からなぁ。何歳から始めたとかは覚えてねえけっども」
「そうか――」
とはいえ、紫月 の動きは単に武術を習ったというだけではなかった。生まれた時から裏の世界に生きる者として育てられた鐘崎 からしても、正直肝が冷えるような感覚に陥ったのは確かだ。先程の手合わせは、あくまで舞台上での演出なわけだから、お互いに全力を出し切った闘い方でなかった。もしも本気でやり合ったなら自分はこの紫月 に勝てるだろうかとさえ思わされる。
これまで紫月 と同室で衣食住を共にしてきたが、彼から自分と同じ世界に生きる人間だというニオイを感じたことはなかった。当然、あれほど腕が立つなどとは想像もしていなかった。そんな実力を微塵も表に出さなかったとすれば、ある意味では相当恐ろしい相手といわざるを得ない。
(もしかしたら――紫月 にも俺や焔 同様に秘密にしている素性があるのかも知れない)
鐘崎 はふとそんなふうに思うのだった。そして、おそらくだがレイはその素性を知っている可能性が高い。
確かに一目会った瞬間から興味を惹かれ、好意を持ち始めたのは事実なわけだが、それは単に彼の外見や性質という観点だけではなく、もっと深い何かによって強烈に惹きつけられる理由が存在するからなのかも知れない。良くも悪くも鐘崎 には、この紫月 と暮らすこれからの一年間に心掻き立てられる気がして、より一層胸は高鳴るのだった。
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