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48 明かされる素性
一方、周 と鐘崎 、紫月 ら一行は冰 を追って香港へ向かう空の上にいた。周 所有のプライベートジェットの機内だ。同行者は李 に劉 。他にはレイのギムナジウムで常駐医をしている鄧浩 という男――彼については万が一にも冰 が怪我を負わされるような状況にあった場合のことを鑑みて、レイが同行するように差し向けたというわけだ。加えて、鐘崎 が『源 さん』と呼んでいた男も一緒だった。
「プライベートジェットかよ……。これって周 さんの持ち物? すっげえのな」
紫月 があんぐり顔でいたが、周 もまた紫月 に対して訴えたいことがあったようだ。
「すっげえのな――は、そのまんま返すぜ。一之宮 、そろそろおめえさん本人の口から正体明かしてくれてもいいんじゃねえのか?」
周 が苦虫を噛み潰したような何とも言えない表情で肩をすくめている。
「正体明かせって、事務所出る時にレイさんから聞いたんだべ? だったら敢えて言う必要……」
「そりゃ聞いたわ! まさかおめえが……おめえがあの――影の忍者一族だったとはな」
周 の言葉に、紫月 は『うへえ』といったような変顔で、半ば嫌そうに肩をすくめてみせた。
「忍者一族って……レイさんってばまだそんな呼び方して……。つか、俺ァ別に……ンな大した」
野郎じゃねえし――そう言い掛けた言葉を遮られた。
「嘘ぬかせ! レイさんがはっきり言ってたじゃねえかー! 決してその正体を明かさねえ日本の裏の裏の、そのまた裏ってくれえの世界で秘密裏に悪をぶった斬ってきた影の忍者と云われた一族。おめえはそこの現当主の一人息子だってな」
「や、ぶった斬ってって……ンな大袈裟な」
「だっておめえ、体術はもちろんだが剣の腕前も神業級だって話じゃねえか」
一度居合い抜きでも見てみたいものだと興味を隠さない周 に、紫月 は『ははは……』と苦笑いだ。レイさんもいちいち言うことがオーバーなんだよと呆れ顔でいる。
「おい、カネ! おめえも知ってたってわけだよな? ってこたぁ、蚊帳の外だったのは俺だけってかよ」
プリプリと、まるで子供が拗ねるように周 はお冠だ。鐘崎 もどう言い訳したものかとタジタジ、頭を掻いている。
「別に知ってたというわけじゃねえ。もしかして――と思ってただけだ。なにせ紫月 とショーで手合わせした時に、ただ武術を習ってるってだけの動きとは思えなかったからな」
とはいえ、さすがの鐘崎 でも紫月 の本当の素性を見破るまではできなかったそうだ。
「もしかしたら俺たちと同じ世界に生きるヤツなのかも――と思っただけだ。レイさんは俺たちの本業を知っていたわけだし、そんなあの人がペントハウスに住まわせている人間なら、曰くあっても不思議じゃねえ――とな」
「まあ……確かにな。そういう俺らも素性を伏せてたのは事実だ。一之宮 を責められる筋合いでもねえわけだが」
「そういうこった。何はともあれ、これで互いに正体バレねえようにと神経遣う必要もなくなったってわけだ。今は無事に冰 を取り戻すことに集中しよう」
鐘崎 の宥めに周 ももちろんだと言ってうなずいた。
「そういやさ、その冰 君だけっども。あのレイさんが周 さんの相方にしたくらいだ。もしか冰 君も俺たち側の人間ってことか?」
紫月 がつぶやく。
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