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51 救出への道
機上――。
周 らを乗せたプライベートジェットは、あと小一時間ほどで着陸という状況にあった。
その機内で李 が幸先の良い声を上げていた。
「焔老板 ! 龍首 からのご助力で空港内の監視カメラの映像が入手できました。雪吹 さんと思われる方を到着ロビーに確認! 一緒にいるのは男の二人組です」
パソコンのモニターを周 へと向けながら逸った表情でいる。日本を発つ前に連絡を受け取った周 の父と兄が即座に手を回してくれた結果である。
「良くやってくれた! それで冰の様子は?」
周 に続いて皆も一斉に画面を取り囲む。
「お怪我を負っているような様子は見受けられません」
これまでのところ乱暴な扱いは受けていないと思われる。
「入国審査も難なくクリアしたところを見ると、やはり偽造パスポートを使いやがったか。ヤツら、よほど周到な準備をしていたということだな」
「問題はこの後何処へ連れて行かれたかということだが――」
鐘崎 も周 の隣で食い入るように映像を追っている。
「それについてですが、雪吹 さんを連れた二人組の男がタクシーに乗り込むところを確認できました。これからそのタクシー会社を当たります!」
「頼む!」
ちょうどその時、日本に残ったレイからも連絡が入り、道ノ瀬由羅 に直接確かめた結果、彼が暴力団を雇って冰 を拉致させたことが決定的となったということだった。
『由羅 が口を割ったぜ。遼二 の親父さんの僚一 にも助力を頼んだところ、由羅 が雇ったヤツらも明らかになった。冰 を直接香港まで連れ出した男二人だが、暴力団と言ってもどうやらその子飼いに当たる″まがい″といった連中のようだ。僚一 の調べでヤツらが冰 を引き渡した相手も香港じゃマフィアを謳っているそうだが、こちらも半分は自称といったところらしい』
「つまり――″暴力団まがい″の連中が″マフィアまがい″のヤツらに冰 を売ったということですか」
『だがな、焔 。どうも話がややこしいんだ。冰 を″売った″というよりは金を払って冰 を″引き取ってもらった″という方が正しいようだぞ』
「――金を払って引き取ってもらった?」
『僚一 曰く、つまりは金で冰 を始末してもらうという取引だったんじゃねえかと』
「――ッ、始末とな。では道ノ瀬由羅 の目的ってのは最初から冰 を亡き者にするということか」
『由羅 本人は殺せとまでは頼んじゃいねえと言い張ってるが、自分の視界に入らないよう海外に売り飛ばしてくれということだったらしい』
「――ッ、道ノ瀬由羅 ……赦し置けんクズ野郎だな」
『どうする焔 ――。由羅 の父親に話を通して警察に突き出すのは容易だが――お前さんの意を聞いてからにしようと思ってな。もしも別の方法で制裁を望むならば警察に連絡するのは待っておくが』
別の方法で――とは、周 の裏の顔のやり方で始末をつけたいというならばという意味だ。
「レイさん、ご配慮に感謝します。少し時間をいただけますか? 無事に冰 を救出できた時点で結論を出させていただきたい」
レイにも周 の意は聞かずとも理解できた。冰 を無事に救出できた場合と万が一にも叶わなかった場合とでは由羅 に課す償いの重さが違ってくるからだ。あってはならないことだが、もしも冰 が命を奪われるような事態に陥った時は、おそらく周 は迷わずに彼本来の――つまりは裏の世界に生きる者としてのやり方で――決着をつける心づもりでいるだろうからだ。
『そうか。了解した。由羅 の身柄は俺の方で責任を持って確保しておく。とにかくは冰 の奪還が最優先だ。こっちのことは心配要らねえから全力で彼を取り戻してくれ!』
「もちろんです。何としてでも冰 は無事に取り戻します!」
その後、李 の調査によって冰 を乗せたタクシーの運転手が判明。彼らを降ろした場所までを突き止めることが叶った。着陸まではもうあと少しだ。
「よし! 親父と兄貴に報告を入れる。着陸したら俺たちもすぐに向かうぞ!」
こうして周 らはモデルという表の顔から本来の彼らの顔へと戻っていったのだった。
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