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「あの子は換金した金をそっくり俺たちに差し出してきました。望みを叶えてくれたからそれだけで充分満足だと言って……ニコニコしながら金をよこしたんです。これから酷え目に遭わされるってのに、まるで分かってねえのかと不憫にも思いました。けど――あんな純粋な笑顔を見せられて、俺たちは次第にてめえらのしていることに罪悪感を覚え始めました」  もちろん、彼をみすみす売り飛ばすよりこの先もカジノを回って稼がせれば得だと思ったのも事実だったという。だが、共に過ごす内に哀れに思う気持ちがどんどん大きくなってもいったのだそうだ。 「一緒に居たのはほんの二、三日のことでしたが……あの子といるとホッとするっていうか、今まで感じたことがねえあったかい気持ちになることに気付いたんです。仲間の二人も同じような気持ちだと言ってましたが、特に俺は――あの子を見てたら……死んだ弟を思い出したんです」  ロナルドには歳の離れた弟がいたそうだ。 「もう十五年も前のことです。俺の両親は飲んだくれの親父とアバズレのお袋で、何かにつけて喧嘩ばかりしてやがりました。弟は両親の喧嘩を止めようとして――突き飛ばされ、打ち所が悪かったのかそのまま息を引き取った……。弟が五歳の時でした。やさしくて素直な……いいヤツでした。その後すぐに俺は家を飛び出て――後はお察しの通り褒められたもんじゃねえ人生を送ってきました」  食べる為に盗みを働き、他人を脅して金を巻き上げたり、繁華街で出会った似たような境遇の者たちと徒党を組んでは悪事を働いて生きてきたそうだ。 「もしも弟が生きてたら――今頃はちょうどあの子と同じくらいの年頃になってただろうと……。あの子に似た……やさしくて素直で、笑顔の綺麗な青年になってただろうって思ったら……てめえのこれまでの人生が情けなくて仕方なくなって。あの子と一緒にいれば……こんな俺でも人生やり直せるかも知れねえ――なんて、そんな夢まで抱くようになって」  脅しや恐喝で稼ぐよりもカジノで稼ぐならばよほどマトモな人生だと思ったのだという。 「あの子の腕で稼いだ金を使うことには罪悪感も覚えましたが、その分俺は……あの子の足となってどこへでも連れてってやろう、一緒に世界中のカジノを巡って、あの子に旨いモンを食わせて、デカい家を買って――なんて夢は広がっちまって。あの子には――もしかしたら死んだ弟が引き合わせてくれたのかも知れねえなんて思って」  弟の生まれ変わりのような彼と共に、今度こそマトモに生きてみたい。そんなふうに思ったそうだ。銃撃から咄嗟に庇ったのもそういった思いからだったのだろう。 「ですが、もう悔いはありやせん。人生の最期に――弟の生まれ変わりのようなあの子に出会えて、ほんの数日でも一緒に過ごせたことは手前のようなろくでなしにとって最後に与えられた褒美と思っています。龍首(ロンシゥ)に所縁のあるお人だと――知らなかったとはいえ、手前のしたことは事実です。どんな制裁でもお受けいたしやす」  本当に申し訳なかった、どうぞこの命で償わせてください。ロナルドはそう言って、深々とベッドの上で突っ伏した。

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