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二日後、周 ら一行は日本で待つレイの元へ帰る為に香港を後にした。ロナルドはそのままファミリーの病院で怪我が完治するまで手厚く面倒を見てもらえることとなった。
帰路もまた、周 所有のプライベート・ジェットだ。そのあまりの豪華さに冰 が目を剥いていた。
「本当に……すごい飛行機。でもまさか焔 さんが龍首 の方だったなんて――」
廃倉庫から救出された際に周 を始めとする鐘崎 や紫月 の素性を知らされて、当然か冰 は驚かされたわけだが、そんな自分にも裏社会と繋がりのあった育ての親がいたことを言っていなかったのだから五分五分といったところだ。
「でも僕、じいちゃんの勤めていたカジノが香港マフィアの龍首 が経営しているお店だっていうことは存じていました。じいちゃんからはファミリーのお名前が″周 ″さんだということも聞かされていたんです。でもさすがに焔 さんのご実家だとは思いもしませんでした」
店の名前はシャングリラといった。高校を卒業してからは黄老人に連れられて何度か顔を出したこともあり、店内の様子はよく知っていた。むろんのこと顔見知りのディーラーもいたそうだ。だから、もしもあの後、何事もなくロナルドたちとカジノ巡りを続けていたとすれば、隙を見てシャングリラから日本に連絡を入れようと思っていたのだと冰 はそう打ち明けた。
「そうだったのか。だが冰 、突然拉致に遭って驚いただろうに――よくたった一人でそこまで考えたものだ」
感心の域を通り越して尊敬に値すると皆はつくづくそう口を揃えた。
「とにかく無事で良かった。二度とこんなことが起きねえように――これからは俺がしっかり守ってやる」
大真面目な表情で周 はそう言った。側で聞いていた鐘崎 や紫月 が唖然とするほど真面目極まりない調子で――だ。冰 は嬉し恥ずかしといったふうにモジモジとうつむいては頬を染めていたが、傍から見ている者たちにとってそんな二人はまさに″溺愛″カップルだ。
「良かったな、冰 君! 周 さんに守られてりゃ怖いもん無しだべ」
紫月 がニカっと白い歯を見せながらウィンクしてよこす。
「はい、あの……焔 さんにご迷惑の掛け通しにならないよう精進いたします」
気恥ずかしそうながらもとびきり嬉しそうにますます頬を染める冰 だった。
「よし! 帰ったらまた忙しい日が待ってるが、レイさんからの計らいで一週間ほど休暇がもらえるって話だ。冰 、せっかくだからゆっくりじっくりデートでもするか!」
クシャクシャっと髪を撫でてくれる周 の大きな掌があたたかかった。
「はい、焔 さん。デ、デート……た、楽しみです!」
すっかりラブラブな二人に、これがカップリングモデルとしてのコンセプトの上だと分かっていても微笑ましい気持ちがあふれてしまう鐘崎 らだった。
(案外、焔 のヤツもなまじ仕事としてのカップルというだけじゃなく、しっかり本心も混じっていそうじゃねえか)
二人を横目に、鐘崎 はついそんなふうに勘ぐってしまうのだった。周 と冰 、そして自分と紫月 、縁あってカップリングモデルという相方として巡り会えた幸せを噛み締める。一年経てばまたカップルの組直しが行われることも承知だが、できることならこのままずっと――というよりもモデルとしての仕事上の関係だけではなく、公私共にいつまでもこのメンバーと人生を歩んでいけたらなどと思ってしまう。
(さすがにそれは過ぎた望みってやつだろう――)
モデルという表の顔も、いつまで続けていられるか分からない。いずれは引退して本業たる裏の世界に戻っていく時が来るだろう。その時に本当のカップルとして自分たちは互いの隣に立っていることができるだろうか。それともそんなふうに望むのは大それたただの夢幻に過ぎないのだろうか。
とにかくも今を精一杯、一分一秒を無駄にすることなくこの仲間たちと紡いでいきたい。鐘崎 はそんなふうに思うのだった。
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