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「あ、アンタら……刑事か何か……? お、俺を逮捕しようってか?」
「刑事だと思うのか?」
短いそのひと言で、″刑事″よりももっと恐ろしい存在だということを感じたのか、由羅 は更にビクビクと全身を震わせた。
「……じゃ、じゃあ……検察の人……?」
「そんなことはどうでもいい。それよりお前の身勝手な企てのせいで我々の国の人間が二人殺された。その落とし前をつけてもらわんとな」
「……は?」
目の前の男は『我々の国の人間が――』と言った。ということは、刑事にしろ検事にしろ日本国内の組織ではないということか。
「し、知らねえよ……俺は何も。二人殺されたって……何それ」
「つまり――殺 ったのはお前ということだ」
「は!? 何ワケ分かんねえこと……! 俺は人なんか殺してないって!」
「お前がモデル仲間を売り飛ばした先で殺されたのだ。お前が殺 ったも同然だろうが」
「し、知らねって……! 第一、俺はずっとこの日本にいたんだ! 香港になんか行ってもねって!」
「香港で殺された――なんざひと言も言ってないがな」
なぜ香港で殺されたことを知っている? と言わんばかりに睨まれて、由羅 は墓穴を掘ったことに気付いたようだった。
「し、知らない……俺じゃない……! 俺はただ……雪吹 の野郎を適当に目に入らねえ場所に連れてってくれって……頼んだだけで……か、金だってめちゃくちゃ高額な報酬をちゃんと渡したんだ。人なんか殺してないし……あの後雪吹 がどうなったかなんて……知らねえ……し」
売り飛ばしたことは認めるも、その先はまるで関係ないと言い張る。だが、周 はそれこそ″刑事″ではない。ここまで吐かせればそれで充分なのだ。
「金で人を雇い、売り飛ばしたのは事実なのだな? その末に人が亡くなったのもまた事実だ。直接手を下したかどうかなんざは問題じゃない。結果的にお前の企てが発端で二人の人間が死んだという現実だ」
「……だ、だったら何だってんだよ。お、俺を逮捕でもする気……?」
「逮捕して欲しいか?」
「……は?」
「拉致を認めた温情だ。お前に好きな方を選ばせてやる。てめえの身勝手でモデル仲間を売り飛ばし、他所 の国で二人を殺戮。その罪を背負って刑務所にぶち込まれるか、あるいは――てめえが売り飛ばした雪吹冰 というモデルが辿るはずだった道筋をそっくりそのままてめえで引き受けるか。どちらでも構わんぞ」
二択を突き付けられて、咄嗟に由羅 の脳裏を巡ったのは『刑務所に入るのだけは絶対に御免だ』という考えだったようだ。
「む、ムショなんて……冗談じゃねえよ。俺はナンもやってねんだし……あの雪吹 がどうなろうと……俺が金を払ったヤツらが勝手にやったことっしょ? 俺には関係ねえし」
「ほう? では刑務所行きは嫌だと言うのだな?」
「あ……当たり前だろ……。いくら警察だって何もしてない俺をムショに入れる筋合いはねえじゃん……。ムショに入るなら俺が金で雇ったヤツらの方だろ?」
「あくまで金で雇ったヤツらに責任があると言うのだな?」
「と、当然っしょ? 実際……俺はあの後……雪吹 がどうなったかなんて……知らねんだし、関係もねえし」
「そうか。では刑務所行きは却下だ」
そのひと言で由羅 はホッと肩の荷を下ろしたわけか、安堵の表情を見せた。
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