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70 焔と冰の初デート
その後、金目鯛の煮付けと炊き立ての白米、味噌汁に付け合わせの冷や奴と緑黄色野菜の温サラダで夕卓を囲んだ。
「本当に旨かった。いつも作ってくれる中華も絶品だが、今日の純和食もめちゃくちゃ旨かったぞ。冰 は本当に料理が上手いな」
「そ、そんなふうに言っていただけて恐縮です。でも……とっても嬉しいです! 焔 さんの喜んでくださるお顔を見るのが僕にとって一番の幸せですもん」
「おいおい――あんまり可愛いことを言ってくれるなよー」
そんなんだとメシだけじゃなくお前さんのことも食っちまいたくなるだろうが――と言われてボッと赤面。
「イ、イ……焔 さん」
「よし、冰 。旨いメシを食わせてくれた礼だ。明日のデートでは俺がとびきりの夕飯をご馳走するぞ」
「え……? あ、はい! あ……りがとうございます」
未だ真っ赤に染まった頬の熱は冷めやらず、モジモジと照れている冰 を見つめる周 の瞳がまたもや細く弧を描く。
(可愛いヤツだ。このままずっと――例えカップリングモデルの期間が終わったとしても――このままずーっとこの顔を眺めて暮らせたら幸せだろうよな)
そんなことを脳裏に思い描きながら、周 はますます細まってしまう瞳を抑えることができなかった。
そして次の日――。
朝から晴天に恵まれて気分も上々。周 の運転する車で二人だけのドライブデートと相成った。
「冰 、今日はな、東京湾の海底と海上を走る高速道路を渡って房総へ出掛けてみようと思うがどうだ?」
「はい! とっても嬉しいです。僕、日本に来てから殆ど事務所とお仕事場の往復で、観光にはなかなか行く機会がなかったのですごく楽しみです!」
房総も初めてだという。近場ではあるが、天気も良いし気持ちのいい一日となるだろう。
「途中にあるパーキングエリアにも寄ってみるか。その後は内房の海外線沿いを走ってから少し内陸に入ったテーマパークへ行ってみよう」
「テーマパークですか?」
「ああ。今の時期だと花の絨毯が見事だそうだぞ。それに動物と触れ合える広場があったり、野菜の収穫体験なんかもできるそうだ」
「わぁ! 楽しそうですね! お花の絨毯も楽しみです。あ、じゃあ紫月 さんや李 さんたちにもお野菜収穫してお土産にできるかなぁ」
紫月 も料理はするようだから喜んでくれるかも知れない。自分たちが楽しむだけではなく、こんなふうに仲間たちへのお土産の気遣いまで思いつくところがまた可愛いものだ。周 はつくづく、この冰 と相方に選ばれたことを嬉しく思うのだった。
海上にあるパーキングエリアに寄ってティータイムでひと息入れ、高速を降りたら海沿いをドライブ。春爛漫のこの時期は窓を開けてそよ風を感じながら走るのが本当に心地好い。その後お目当てのテーマパークに着くと、なるほど季節の花々でびっしりと埋められた色とりどりの絨毯が見事だった。
「うわぁ……! 見て見て焔 さん! すっごーい! あーんな遠くまで花で埋め尽くされてるー!」
いったいどのくらいの本数が植えられているのだろうと目を丸くしてしまう。冰 はそのままスマートフォン片手に一生懸命に風景を写真に納めていく。季節がいいので平日でもそれなりに人出はあったが、すごく混雑しているわけではなかったので、動物とのふれあい広場や野菜の収穫体験などもゆっくりと楽しむことができた。男同士、しかも美形揃いの二人は行く先々で人々の視線を惹きつけていたが、幸いにもモデルとしての彼らを知っている人もいなかったようで、ご老体のツアー団体などからは仲の良い兄弟のように思われていたようだ。
園内のレストランで軽くランチを取り、お土産の野菜も充分収穫できた頃にはすっかり午後の陽射しが傾き掛けていた。
「焔 さん、すっごく楽しかったです! ワンちゃん抱っこできたし、お花畑もたくさん写真が撮れたし、お野菜もほら! こーんなに!」
子供のようにはしゃいで喜ぶ様子を見ているだけで、周 にとっては嬉しいものだった。
「よーし、冰 。そろそろ帰るとするか。ちょっと早いが混む前に抜けたいのでな」
今日のディナーは都内に戻ってビルの最上階から夕陽を眺めながらしたいのだという。
「夕陽が沈んで街に灯りが灯り出すまでの移り変わりをお前さんと一緒に眺めながらメシを食おうと思ってな」
想像するだになんともロマンチックだ。
「うわぁ……素敵ですね。なんだかドキドキしてきちゃった」
「うむ、なかなかに絶景だぞー」
楽しみにしておけよ――と、またクシャクシャ髪を撫でられて、冰 は更にドキドキ。心拍数を上げるのだった。
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