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74 男たちの恋愛相談

 その後、ダイニングからの絶景を楽しみながら皆で軽くワインを空け、(ジォウ)の自室に移動しておしゃべりやテレビを楽しんだ。四人でワイワイガヤガヤと過ごす時間は本当に楽しくて、気付けばあっという間に日付を越していた。先に目に鳩が止まったらしい(ひょう)がソファの上でこっくりこっくりとし始まったのに気付いた(ジォウ)が、ヒョイと軽々彼を抱き上げてはそっとベッドへと連れていく。それを横目に紫月(しづき)もまた『ふぁーあ』とあくびを繰り出す。 「(イェン)、客室へ移動すんのも面倒だ。もうこのまんまおめえのベッドで雑魚寝でいいだろう。ここ、めちゃくちゃでけえことだしな」  鐘崎(かねさき)がベッドを指差しながら背伸びをしてはそんなふうに言う。 「ああ、そうだな。修学旅行気分ってやつだな。風呂は朝になったら入ればいいだろう」  結局、先に(ひょう)紫月(しづき)がベッドを占領することになり、(ジォウ)鐘崎(かねさき)の親友二人はまたもう一杯寝酒を酌み交わすこととなった。 「――で? おめえらの方はどうだったんだ。晩飯、例のホテルのレストランで食って来たんだろう?」  例のホテルとは、ここ周の自宅ビルの近所に位置する五つ星ホテルだ。二人がモデル業を始めた頃からたまに通っては食事や酒を楽しんでいる老舗である。レストランはもちろんのこと、スイーツのバイキングなども種類豊富でたいへん美味しいという評判なのだ。 「ああ。一度紫月(しづき)を連れて行きたいと思ってたからな。旨かったぜ。一緒に暮らす内に紫月(しづき)は甘いもんが好きみてえだって知ったからな。デザートが選び放題でヤツも喜んでくれたし良かったわ」 「そうか」  (ジォウ)はバーボンをひと口含みながら、ふと瞳を細めた。 「そういや思い出したぜ。カップリングモデルの組み替えが決まってすぐの頃だったな。おめえに誘われてあのホテルのバーに行ったことがあっただろ?」 「ん? ああ、そういやそんなこともあったな」 「あの時――俺はてっきりおめえがカップリングのコンセプトに不満でもあるのかと思ったもんだがな」  当時、決まったばかりのコンセプトは鐘崎(かねさき)紫月(しづき)に熱を上げるものの、なかなかその想いが実らないという片想い系だった。(ジォウ)にしてみれば、それが不満で愚痴でも聞かされるのかと思ったのだという。 「だが――本当はその逆だったってことじゃねえのか?」 「――あ?」 「おめえ、既にあの頃から不安だったんじゃねえかと思ってな」 「……不安って、おめえ」  急に何を言い出すんだと鐘崎(かねさき)は視線を泳がせる。 「一之宮(いちのみや)に嵌まっちまうかも知れねえ――という不安だ」 「――! てめ、何言って……」 「図星だろうが。あの時はこれまで滅多に見たことがねえお前の様子が気に掛かったもんだが――今ならあの時のおめえの気持ちが分かるような気がする」 「……(イェン)、それって」 「ああ――。俺も同じ気持ちだ。誰かに本気でのめり込むほど惚れちまったら――俺はこの先、これまで通りに生きていけるんだろうか――とな。別に恋をしたからって何が変わるわけじゃねえ。だが、俺たちのような世界に生きる人間は、いつ何がこの身に降り掛かるか予測が付かねえのも事実だ。それがもしも本気の恋なら――てめえ以外に大切だと思える存在をこの手にしてしまったとしたら――不安にもなるし、誰かにこの気持ちを聞いて欲しいと頼りたくもなる。あの時のお前もそんな気持ちだったんじゃねえかとな」 「(イェン)――。それって、もしかして――」 「察しの通りだ。俺はあいつを――(ひょう)を大事に思い始めてる。確かに――カップリングモデルのコンセプトが多少なりと影響してないとは言い切れん。ショーであいつが俺に嫁いで来るっていうシチュエーションもその一旦だったかも知れねえ。だが、あれが現実だったらいい、ずっとあいつとこんなふうに――仕事を離れても共にいられたならさぞ幸せだろうと思うようになった」 「(イェン)――」 「こんな気持ちをおめえに聞いて欲しい、そうも思うようになってな」  またひと口、バーボンを含んではまるで遠い未来を見つめるかのように(ジォウ)は窓の外の夜景に視線をやった。切なくも狂おしく、甘く、愛しくも踏み込んではならないと戒める気持ちと闘う矛盾に迷い、悩み、それらが混在して苦しくもある。そんな気持ちを映し出すように街の灯りが(ジォウ)の瞳の中で揺れていた。

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