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「ああ、マジだ! 稽古場は確かに地下だが、一応陽の光が入るようにって――中庭から覗ける位置に細い天窓がある」  やはり紫月(しづき)の記憶にあるのは自分の家へ来た時のことではないのか。そう思うと鐘崎(かねさき)は逸る思いをとめられずにいた。 「紫月(しづき)――是非家へ来て欲しい。稽古場を見てもらいてえ」 「うん、(りょう)がいいなら今度行ってみてえな」  そう言って紫月(しづき)は、はにかむように笑った。鐘崎(かねさき)にとっては感激ともいえるエピソードが聞けたことで高揚感が半端ない。 「そうか――。もしもお前の見た兄ちゃんってのが俺だったなら――こんな嬉しいことはねえな。お前がめちゃくちゃ強くなったきっかけになれたってことだろう?」 「強く――なれたんかな、俺」 「ああ。めちゃくちゃ強えさ。香港でお前さんの技を目の当たりにして、俺ァ背筋が寒くなったくれえだ」 「マジ? (りょう)こそ体術は言うまでもねえけど射撃の腕前だって神掛かってたべよ! そんなん言ってもらうと恐縮しちまうけど……素直に嬉しいわ。とにかくあの時の兄ちゃんがきっかけで真面目に稽古するようになったのはホントだし、あれが(りょう)だったら俺たちはすっげ昔から縁があったわけだべ? 何つーか、奇跡みてえだよね」 「そうだな。お互いに知らねえところで実はそんなガキの頃から繋がってたとはな」  お前の見たという兄ちゃんが俺だったらいいなと言って鐘崎(かねさき)もまたはにかんだ。 「紫月(しづき)――善は急げだ。良かったら――この連休中にも俺ん家に来てくれ」 「いいのか? じゃあ、うん! 是非連れてってくれよ」 「ああ。ああ、もちろんだ! 明日ここから帰りがてら直行してもいいか?」  鐘崎(かねさき)のあまりの逸りようがまるで少年のようで、思わず微笑ましい笑みが漏れてしまう。 「もち! (りょう)がいいなら」 「いいに決まってる!」 「んじゃ早起きしねえと! そろそろ寝るべ」  そう言って、紫月(しづき)は笑いながら手を差し出した。 「(りょう)、ありがとな。俺、(りょう)とカップリングに選んでもらえてホント嬉しいわ。これからもよろしくな!」 「ああ。――ああ、俺もだ。すげえ――」  幸せだ。 「これからも――ずっと。ずっと――」  そう、できることなら一年経ってカップリングモデルという期間が終了したとしても――変わらずにずっと側で過ごせたならどんなに幸せか。  今はまだ――それを言葉にして伝える勇気がないが、いずれ云うことができるだろうか。そんな気持ちを抱き締めながら、 「俺の方こそ――お前さんと組めたことが宝だ。これからもずっと――よろしく頼む」  そう言って差し出された手に自らの手を重ねた。そのままずっと――どちらからも引っ込めることなく手と手を繋いだままで互いに目を細める。 「おやすみ、紫月(しづき)」 「ん。おやすみなぁ、(りょう)」  そのまま朝まで繋いだ手を離すことなく眠りについた二人だった。

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