83 / 103
82 鐘崎組へ
次の朝、紫月 が目覚めると隣の布団は空だった。反対側を向くと冰 と周 もちょうど目を覚ましたところだったのだろう、モゾモゾと布団の山が動いていて『おはようございます焔 さん』という冰 の声が聞こえてきた。
「冰 君、はよ。ってか、遼 はもう起きたんかな……」
寝ぼけ眼で布団から身を起こす。室内を見渡せど、父親たちの布団も既に空だった。と、そこへ父の飛燕 がやって来た。
「ボウズ共、起きたか? 朝飯出来てるぞ」
「親父……? 悪ィ、手伝わねえで」
紫月 が目を擦りながら言うと、飛燕 はクスッと笑った。
「いいってことよ。メシの支度は僚一 と遼二 坊が手伝ってくれたんでな」
その言葉にガバリと布団から起き上がった。
「マジ!? 遼 が……?」
「ああ。お前さんたち、今日は遼二 坊の家へ行くんだろ?」
それを聞いて不思議顔をしたのは周 だ。
「カネん家に行くのか? これから?」
「ああ、うん。昨夜そういう話になってさ」
紫月 は照れ臭そうに頭を掻いている。
「ほう? 俺らも邪魔していいってか?」
周 はニヤっと笑みながら、いつの間にそんな話になったんだ? と、冷やかすような視線を向けてよこした。
「もち、いいに決まってるべ。つか、車一台で来てるわけだし……さ」
そこへエプロン姿の鐘崎 が顔を出した。
「カネ――? おめえ、そのカッコ……」
周 は珍しいものでも見るように呆気に取られている。鐘崎 もまた、紫月 同様照れ臭げに頭を掻いてみせた。
「ん、おめえらの朝飯を――な。つっても俺ァ大したことはしてねえんだが」
殆ど飛燕 が作って鐘崎父子 はそれを皿に盛り付けたりしただけだそうだ。
「いや、遼二 坊たちが洗い物もしてくれたんでな。助かったぞ」
飛燕 に礼を言われて、鐘崎 はますます気恥ずかしそうに照れてみせた。
早起きして朝食を作る手伝いまでしたところを見ると、紫月 を自宅へ招くことがそれほどに楽しみだったのだろう。
「すまねえ、遼 ! 俺がやんなきゃだったのに」
慌てて布団を抜け出した紫月 に「よく眠れたか?」などと気遣い、二人して照れ合う様子を横目に周 は彼らの仲が急速に近くなったことを感じ取ったのか、「ふむふむ」と密かに嬉しそうな顔をするのだった。
皆で朝食の卓を囲み、そのまま鐘崎 邸へ移動することとなった。そういう話であれば――と、僚一 と飛燕 の父親たちも一緒に行くことになり、帰りのことを考えて車は三台に分乗。来る時は紫月 の運転だったが、今日は鐘崎 がハンドルを握って紫月 は助手席へ。周 と冰 は行き同様に後部座席で仲良く肩を並べる。後続車には父親たちが乗って鐘崎 邸を目指した。
「遼 ン家は川崎だっけ?」
「ああ。都内から川一本渡ってすぐのところだ」
ナビは必要ねえぜと言って笑う。
「紫月 さんのご実家に続いて鐘崎 さんのお宅へも行けるなんて!」
冰 は恐縮しつつも頬を紅潮させて喜んでいた。周 にとっては行き慣れた場所に違いないが、それでも数ヶ月ぶりらしい。天気も朝から上々で、楽しい一日となりそうな予感に車中は賑やかな笑顔であふれるのだった。
ともだちにシェアしよう!

