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「どれ、診せてみろ」  鐘崎(かねさき)が駆け寄って若い組員の肩を診る。 「こいつぁ……すっかり関節が外れちまってるな」  痛むかと訊くも、当の怪我人はブラブラとして今にも身体と腕が離れそうだと情けない声を出しては涙目になっている。 「鄧浩(デェン ハァオ)がいればすぐに診せられたんだがな」  (ジォウ)もそうつぶやく傍らで、 「どら、ちょいとごめんよ」  怪我人の側でしゃがみ込み、紫月(しづき)がそう言った。 「ありゃ……ホント見事に外したもんだ。状態確かめっから、痛むかも知れねえがちょっとの間我慢してくれなぁ」  慰めるようにそう言っては外れた肩に触れる。 「うわぁー! わッ、わッ、おわぁー!」 「はいはい、ダイジョブ! 幸い綺麗に外れてっから。すぐ元通りにすっからもうちょい頑張るべ!」  言った側からゴキっと肩を押した。 「うぎゃーーーッ! うぎゃ……あ、あれ……?」  叫んだ次の瞬間にはケロっとした顔つきで自身の肩を見つめていた。 「う……そ! な、治ってる……」  グルグルと両腕を動かしては歓喜に涙ぐむ。 「マジで治ってる! どこも痛くねえですし!」  ありがとうございやす! と言って、紫月(しづき)に向かいガバリと頭を下げた。 「お、お医者さんっスか? ホントにありがとうござんす!」  他の若い衆たちも揃って深々と腰を折る。 「いんや! 医者ってわけじゃねえが、とにかく治って良かった」  ニカっと微笑んだ見知らぬ顔の紫月(しづき)に、組員たちはポカンと大口を開けたまま呆然としている。まあ、紫月(しづき)は道場育ちであるがゆえに幼い頃からこうした怪我も見慣れているといえる。当然、その対処法も身につけているわけだった。 「あの……(わか)のお知り合いの方っス……か?」  誰かがそう訊いた傍らで、 「あー! 手前、存じてます! (わか)の″(あね)さん″になられた御方っスよね!」  別の組員がすっとんきょうな声を上げた。 「(あね)さん……? この人が(わか)の?」 「そうっス! ほら、この春から(わか)の相方になられたモデルの――」 「あーッ! ホントだ! 自分もこないだのショー観に行きました! マジ本物っスか!」 「うっはー! 噂通りの超絶美人さんっスね!」  一気に場がてんやわんやの大騒ぎと化した。そんな中で組員の一人が恐る恐るといった調子で紫月(しづき)の顔を覗き込んでよこした。 「あのぅ……(あね)さん、ちょいとうかがってもよろしいスか? 手前共は(わか)のご活躍を毎度楽しみに拝見してるんですが――(あね)さんは(わか)のことを……その、何ちゅーか……敬遠してらっしゃるっスか?」  え――?  突然の問い掛けに紫月(しづき)はポカンと首を傾げてしまった。 「敬遠……?」 「だってほら、インタビュー動画なんかでも(わか)の方は(あね)さんにやさしいっつーか、熱っい視線を送ってらっしゃるように見えるスけど、(あね)さんの態度はどこそこ冷めてるっていうか……言葉では(わか)の仕事ぶりを尊敬してるようなこともおっしゃってるのに、その実あんまし楽しそうな笑顔も見せてくれないし。こんな言い方したらめちゃくちゃ失礼かも知れやせんが、ちょっと冷てえっていうか、内心では(わか)のことを嫌ってるのかなって……そんなふうに感じるっス」  どうしてかなと思って――と、言いづらそうに口ごもる。そんな彼らに、紫月(しづき)は言われていることの意味をつぶさに理解した。

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