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87 モデルたちの新たな公演

 レイから贈られた一週間の休暇も瞬く間に終了してしまい、今日からはまたモデルとしての忙しい日々が始まろうとしていた。そんな四人を含め、ペントハウスの稽古場にはカジュアル部門バディカップルの清水剛(しみず ごう)橘京(たちばな きょう)も顔を揃えていた。むろんのこと、マネージメント担当の(リー)(リゥ)綾乃木(あやのぎ)なども集まっている。  そこでレイから今後の活動について少々驚くべき発表を聞かされることとなった。 「実はな、先日のショーの後で持ち上がった話なんだが――。あの時に参加していたいくつかのモデル事務所と合同でミュージカル仕立ての公演を行おうということになったんだ」 「ミュージカル仕立て?」 「他所の事務所と合同で――か?」  (ジォウ)鐘崎(かねさき)がポカンとした表情でレイを見つめる。 「ああ、そうだ。先日のショーの評判が上々だったということでな。通常のファッションショーとしてランウェイを歩くだけじゃなく、ストーリー仕立てにした劇のような舞台をやってみようということになったそうだ」  そんな話が持ち上がったきっかけといえば、あのショーを観た観客や後日配信した動画への反応が大きな原因だったそうだが、今後もああいったストーリー仕立ての舞台を企画したら斬新なのではということで、主催者側も意気込んでいるそうだ。 「とはいえ、ミュージカル仕立てにするにはひとつの事務所だけじゃモデルの数も足りねえ上に舞台装置などの設営もかなりの負担が強いられる。そこで企画に賛同する事務所が複数集まって協力することで実現を目指そうという話になったわけだ」  レイの『モデルクラブG9(ジーナイン)』は男性オンリーの事務所だが、女性モデルのみの事務所や男女混合の事務所ももちろん参加するという。 「有り難てえことにだな、先日のショーで最優秀賞になった事務所がそのミュージカルでも主役級を()らせてもらえることになってな。つまりお前さんらが舞台のセンターに抜擢されたというわけなんだ」  あの時、最優秀賞を取ったのはフォーマル部門では(ジォウ)(ひょう)、そして女性同士のカップルでウェディングを演じた事務所の二つだった。アンダーウェア部門では鐘崎(かねさき)紫月(しづき)の組が他の追随を許さずに堂々のトップ、カジュアル部門では他の事務所に持って行かれたものの、清水(しみず)(たちばな)の組も三位という好成績を残したのだった。  それにしても他所(よそ)の事務所と合同、しかも女性モデルや他の男性モデルらとの共同企画とは随分と大掛かりな話だ。稽古ひとつとっても皆のスケジュールを合わせるなど、何かと大変になるのは想像に容易い。 「その稽古場だが、先日のショーが行われたホールの一室を貸し切ることが決まった。もちろん各々普段の撮影や雑誌取材なんかの仕事もこなしながらだから、これから本番までの三ヶ月間はめちゃくちゃハードになることが予想される。お前さんたちにはまた足労を掛けることになるが、業界内でも斬新な試みとして各所からの期待も大いに盛り上がっている。よろしく頼みたい」  レイはそう言って頭を下げた。 「いや、俺たちの方こそそんな企画に抜擢してもらえて光栄だ」  企画側や観に来てくれる観客たちをガッカリさせないように精一杯やらせてもらうと言って(ジォウ)らも頭を下げたのだった。 「それでレイさん、演目ってのはもう決まっているのか?」  (ジォウ)が皆を代表して問う。レイはニヤっと不敵な笑みと共にうなずいてみせた。 「ああ。今回参加する事務所は全部で五つ。演目は一部、二部で別のストーリーを行うことになった」  一部と二部で各一時間ずつ、間にトイレ休憩を挟んでの二時間半をワンクールとして、それを日に二回行うそうだ。 「日に二回か。つまり昼の部、夜の部って感じか?」 「その通りだ。一部には(イェン)(ひょう)、それに例のウェディングコンセプトにて(イェン)らとタイで最優秀賞を取った女性モデルの事務所から主役と準主役が選ばれることになった。二部は遼二(りょうじ)紫月(しづき)の主役だ。演目も一部と二部ではまったく世界観の違うものが用意される」  肝心の演目だが――と言って、レイは稽古場に設られているボードをクルリと回転させてみせた。  そこに書かれた文字は――。  一部が二十世紀初頭の上海、二部はフィフティーズのアメリカとあった。

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