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「上海と……アメリカ?」
いったいどんな演目なんだと周 らは目を丸くする。そんな彼らを前にレイは意気揚々と各コンセプトを話し始めた。
「お前さんたち、フィフティーズのアメリカ・ダウンタウンの若者たちを描いた有名な劇の話を聞いたことがねえか? ダウンタウンには敵対する著名な不良グループが二つあって、そこの頭の男と敵対グループの頭の男の妹が赦されぬ恋に落ちるって話だ」
「ああ――ミュージカルで上演されてる有名な……」
「そうだ。つまり今回のコンセプトは一部、二部共に『赦されざる恋』だ」
ニヤっと笑みを浮かべては親指を立ててレイが皆を見渡す。
「赦されざる恋――ね。それを俺たちが演 るってわけか」
「その通りだ」
詳しく説明しようと言ってレイは皆に椅子を勧めた。
「まずは一部の上海だが、世界観は大世界だ」
「大世界――? というと、もしかしてダスカか?」
周 が言う傍らで、冰 がポカンと口を開いたまま目をパチクリとさせている。一方のレイはまさにその通りといった得意げな表情でパチンと指を鳴らしてみせた。
「ご名答だ。さすがだな、焔 ! お前さんたちに演じてもらうのはまさにそのダスカの世界観だ」
その横で冰 は『それって何ですか?』といった表情でいる。
「大世界、ダスカってのは今から百年以上前、二十世紀初頭に出来た上海の遊技場のことでな。そこには表も裏も牛耳る闇のボスが存在していたらしいというのは有名な話だ。今回、冰 にはそのボスの一人娘を演じてもらう」
「――一人娘? ってことは、冰 は女装で出演するということか?」
「そうだ。焔 にはその大ボスの一人娘に恋をしてしまったというダスカの常連客を演じてもらう。常連客といっても近隣諸国から来た裏社会の後継ぎと言われる御曹司の役柄だ。ダスカを牛耳る大ボスも焔 の演じる常連客の男も、双方共に裏の世界で力を持つ男たちだ。本来ならば同じ世界の者同士、相入れる間柄には違いないが、常連客の男がボスの一人娘に惚れちまったことで二人の間に亀裂が生じる。ボスは溺愛している娘を他所 の男――それも近隣諸国の同業者に渡すことを拒み、常連客の方も娘を諦める気は更々ない。娘本人は父親と恋する男の間で悩みつつも、最終的には恋を選んで若い二人は駆け落ちを決意をするといった流れ――つまりは赦されざる恋というわけだ」
父親は娘を渡さんとあの手この手で恋人たちの仲を妨害する。娘の方にも常連客の男に言い寄る女性たちからの横恋慕や嫌がらせが相次ぐといったストーリーで、観客は始終ヤキモキとさせられる。だが、数々の障害にもめげずに若い二人は愛を貫き、ハッピーエンドを迎えて終演。拍手喝采というのが狙いだそうだ。
「ほう? 何ともドロドロとした展開だが、最終的に二人が結ばれるならやり甲斐もありそうだ」
周 にとっては公私共に想いを寄せる冰 とハッピーエンドを演じられるのは満更でもないといったところのようだ。
「次に第二部の方だが、こちらも舞台背景が異なるだけでコンセプトは一部と同様、『赦されざる恋』だ。しかも先日のショーの評判が上々だったことから、今回も同性同士で恋に落ちるというストーリーでいくことが決まった」
「ってことは、俺と遼 が赦されざる恋人同士ってわけだな?」
紫月 が面白そうといった表情で身を乗り出す。
「そういうことだ。舞台は二十世紀半ば、一九五〇年代のアメリカ・ダウンタウン。そこに生きる不良グループの頭役に遼二 。紫月 は敵対グループの頭役だ」
「つまり敵対する不良グループの頭同士が恋に落ちるってわけか?」
今度は鐘崎 が興味深げに瞳を細める。
「そうだ。だが――そうなりゃ当然、双方のグループに所属する若者たちにとっては当然認められない間柄となる。しかも男同士の恋となれば尚更だ。二人は最初の内こそ秘密裏に逢瀬を重ねるが、次第に双方の仲間たちに隠しきれなくなっていく。最終的には頭を下ろされ、二つのグループから追われることになるという流れだ」
不良グループの頭である以上、二人共に腕が立つことは事実だが、さすがにグループ全員を相手にするのは無理がある。戦闘の末に二人は手負となり、廃墟へと追い込まれ、逃げ場を失ってしまう。もう後が無いという状況の中、二人は共に死を覚悟し、来世では必ず結ばれようと固く誓い合う。廃墟の中でしっかりと抱き合い、外には大勢の不良たちが囲み、最期を思わせるところで終演となる――そういった流れだそうだ。
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