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 ホールを後にし、事務所へと帰る車中で、(ジォウ)ら一行はレイの出演についての話題で湧いていた。 「今の今まで俺たちにさえ黙っていたとはレイさんも人が悪い」 「ああ。だが、まさかレイさんと一緒のステージに立てるとは――まさに貴重な機会だな」  レイ本人も皆と共にステージに立てることが非常に嬉しそうであった。 「当初この話をもらった時は驚きもしたんだがな。なにせ俺は現役を退いてから年数も経ってることだしと躊躇もあったんだが――。よく考えてみたらお前さんたちと同じ舞台に立てる機会なんざそうそう無えことだとも思ってな」  言葉には出さなかったが、レイとしてはいずれ遅かれ早かれ事務所を巣立って裏の世界に帰って行ってしまうだろう(ジォウ)らと、同じステージに立つ機会などこれが最初で最後であろうことは事実だろう。企画担当者からもせっかく声を掛けてもらえたことだし、有り難く引き受けることにしたというわけだった。  そうして、週が明けるといよいよ本格的な合同レッスンが始まった。他所(よそ)の事務所のモデルたちに囲まれての稽古は、普段よりも活気に満ちていて、特に若手の部類である(ひょう)などからすれば周りはほぼ先輩に当たるわけだ。律儀な彼にとっては稽古そのもの以前に気遣いが大変なくらいであったが、それでも一旦稽古が始まれば経験豊富な先人モデルをも圧倒するような演技力はさすがといえた。その(ひょう)と主役を組む(ジォウ)もむろんのこと、実力派であるのは確かだ。二人の息の合った演技に他の事務所の者たちも触発されるのか、ショーに向けて出演者一同は日に日に一丸となりつつあった。  そんな中、とある日の休憩時間のことだった。(ひょう)とのデュエットダンスのレッスンを終えた(ジォウ)がドリンクコーナーで喉を潤していた時だ。 「あの……イェンさん……ですよね?」  声を掛けてきたのはカジノディーラー役を務めている白蘭(バイラン)というモデルだった。彼女も(ひょう)同様、デビューして数年という若手モデルだが、準主役に抜擢されたほどだから実力はあるらしい。(ジォウ)自身は顔を合わせるのは今回の企画が初めてだったのだが、彼女の方では(ジォウ)のことをよくよく知っていたようだ。 「ディーラー役をやらせていただいている白蘭(バイラン)と申します。あの……実は私、イェンさんに憧れてモデルになったんですよ」  そう言われて、(ジォウ)は飲み終えたカップをダストボックスに落としながら彼女を振り返った。 「――そうだったんですか」 「はい、私イェンさんがデビューされた時からのファンだったんです。まだ小学校に通っていた頃だったんですが、イェンさんと同じモデルの世界で生きていきたくて。ですから今回は一緒の舞台に立ててとっても嬉しくて……」 「それは光栄ですね。こちらこそ今回はよろしくお願いします」 「は、はい! こうしてお話しさせていただけるだけで……信じられないくらいです。舞台でもよろしくお願いします」 「ええ、こちらこそ」  そんな折だ。また二人、別の女性モデルが手を振りながらやって来た。 「イェン! 久しぶりー!」 「元気だったー?」  声を掛けて来たのはステージガール役の二人、里恵子(りえこ)蓉子(ようこ)である。

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