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「おう、里恵子 に蓉子 姉さん! 久々だな」
「ホントねえ! かれこれ半年ぶりくらいかしら?」
「もうそんなになるか。森崎 も元気か?」
「ええ、お陰様で!」
キュートにウィンクを飛ばしながら里恵子 というモデルが答えた。
森崎 というのは彼女の恋人で、フルネームは森崎瑛二 という。里恵子 は周 や鐘崎 とはデビューした時期が一緒で、かれこれ十年来の付き合いである。一方の蓉子 の方はそれより少し先輩に当たり、よって周 らにとっては″姉さん″的存在だ。二人共、キャリアも容姿も抜群のトップモデルである。性質もサバサバとしていて明るく、後輩の面倒見もいいことで有名だ。むろんのことファッション誌の巻頭ページでは常連でいて、女性読者からはファッションリーダーとして人気も抜群であった。最初に周 と話していた白蘭 は彼女たちの後輩に当たるそうだ。
「あら、白蘭 。お話中お邪魔しちゃってごめんねー」
里恵子 がにこやかに断りを入れる。
「いいえ。私の方は大した用事というわけではなく、イェンさんにご挨拶させていただいてただけですし、どうぞお話しされてください」
里恵子 も蓉子 もありがとう、ごめんねと言ってイェンを囲んだ。
「まさかあなたと一緒にステージに立てるとはねえ。光栄だわぁ!」
「そういえばこの春からあなたの相方になった――雪吹冰 ちゃんだっけ? レッスン見てたけど、あなたたち本当に息もピッタリのお似合いカップルだわね!」
「ホントよねえ。冰 ちゃん、とっても可愛いんだもの! 演技力もベテランと引けを取らない実力派だし、聞かなきゃ女装だって分からないくらい役柄にもハマってるし! 今度是非ディナーでもご一緒したいわぁ」
里恵子 と蓉子 の視線の先には遠目でレイと話し込んでいる冰 がいる。
「二人にそう言ってもらえて何よりだ。今度冰 のことも紹介させてくれな」
「ええ、楽しみにしてるわ!」
二人が去ると、それを待っていたかのように白蘭 というモデルが再度話し掛けてきた。
「あの、イェンさん」
「ああ、すまんな。話の腰を折っちまったか」
「いえ、いいんです。里恵子 さんも蓉子 さんもベテランの先輩モデルさんですし。それよりも……もし良かったら今度――」
白蘭 が何か言い掛けた時だった。
「おーい、イェン! ちょいといいか? お前さんと冰 の衣装のことで相談したいんだが」
遠目からレイがそう呼んだ。
「すまんな、ちょっと失礼する」
白蘭 はまだ話し足りなさそうだったが、大物のレイ・ヒイラギからの用事では仕方がない。
「あの……ではまた今度。ステージではどうぞよろしくお願いします」
「ああ、こちらこそよろしく頼む」
すまんなと言ってにこやかに笑むと、周 はその場を後にした。
その彼の向かう先にはレイと話し込んでいる相方の冰 の姿――。その横顔を見つめながら白蘭 が一瞬浮かべた険のある表情に気付いた者はいなかった。
◇ ◇ ◇
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