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「話は聞いた。途中からだがな」  決して荒げているわけではない静かな物言いだが、そこには無言の圧が渦巻いている。 「あんたはディーラー役だったな。名は白蘭(バイラン)とかいったか? (ひょう)と配役を交代したいとか」 「いえ、あの……別に強要していたわけでは……。ただ……この(ひょう)さんが女装するのが気の毒とも思ったもので……そういうのもどうかしらと……」  突然の(ジォウ)の登場に白蘭(バイラン)はアタフタと視線を泳がせる。 「ほう? ではあんたが大ボスの娘役を、(ひょう)にディーラー役を()らせたいということだな?」 「え、いえ……あの……」 「分かった。ではこの俺から担当者に話そう」  (ジォウ)は無表情のまま言うと、しっかりと守るように(ひょう)の肩を抱きながら足早にその場を後にした。 「あの……! イェンさん! 待ってくださいッ!」  背後から女の声が廊下に響くも、(ジォウ)が振り返ることはなかった。  次の日、稽古場では朝からザワザワとモデルたちが驚きの声を上げていた。レッスン室のボードに配役の交代についての掲示が貼り出されていたからだ。  そこにはこう記されていた。  第一部公演に於いての配役変更について  大ボスの一人娘役とカジノディーラー役を雪吹冰(ふぶき ひょう)白蘭(バイラン)の交代制によるダブルキャストとする。 「ダブルキャストですって? 今頃になって急にどういうこと?」 「さぁ……。公演まで日も迫って来てるっていうのに、ワケが分からないわ」 「やっぱり娘の役を雪吹冰(ふぶき ひょう)っていう男のモデルが演じることに違和感が生じたってことかしら?」 「でもあの(ひょう)っていう子、正直に言って女顔負けっていうくらい化粧も上手に仕上がってたじゃない? 体格だって華奢で可愛らしいし、言われなければ女装だなんて分からないくらいだったのに」 「それに演技力だって文句なしだったわよ。相方のイェンは文句のつけようがないくらいのベテランだけど、そんな彼とも遜色ないくらいの出来栄えだったっていうのに。担当者も何考えてんのかしらね」 「だったらダブルキャストの白蘭(バイラン)ってディーラー役の方に問題があったとか?」 「確かにね。あの子、顔立ちは綺麗だけど、ディーラー役としてカードの扱い方とかも正直上手くないし、素人感丸出しって感じだったもの」 「男の雪吹冰(ふぶき ひょう)の方がカードの扱いとかが上手く出来そうってことで交代制になったのかしら」  ボードの前では出演者たちが様々な憶測を講じている。そんな中、企画担当者が姿を現し、稽古の始まりを告げた。彼と共にディレクターやレイの姿もある。いわば今回の舞台を仕切る要となるお偉いさん方の登場に、場は一気に静まり返った。

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