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「皆、告示は見たようだな。知っての通り公演までは日も迫って来ている。この時期に配役変更ということで驚いた者も多いだろうが、より良い舞台にする為に我々が決断したことだ。動揺することなく各自の稽古を突き詰めていって欲しい」
上からの決定なら致し方ない、誰もがそう思ったようだ。場はまたしばしざわつきを見せたが、ここで反論を唱えたところでどうにもならないだろう。皆もそれは承知のようで、次々に自らの稽古へと散っていった。
「それから雪吹冰 、キミには急遽ディーラーの振り付けを覚えてもらう。日も少ないことだ。特別に個室の稽古部屋を用意する。綾乃木 君が専任で付いて指導するから動きをよく頭に叩き込んでくれ。同様に白蘭 は恋人役となるイェンとのデュエットダンスを始めとした絡みシーンを徹底的に稽古する。こちらはレイ・ヒイラギが付ききりで指導する」
そんなわけで急ぎ各自の振り付けや立ち回りを覚えるべくレッスンが始まった。冰 は個室で綾乃木 と共にディーラー役の動きを確認。ただ、これまでの稽古場で他の出演者たちの動きも見ていた彼は、難なく振り付けを身に付けていった。
一方の白蘭 は周 扮する常連客の男とのデュエットダンスシーンから入っていった。こちらは冰 と違い、背後で踊る群舞と動きを合わせる為もあってか個室が用意されているわけではない。広い稽古場のあちこちから向けられる好奇の視線の中、白蘭 は動揺を隠せずにいたようだ。
「あの……イェンさん……? 配役のことですけど、あなたが上の方々に仰ってくださったの?」
ダンスをしながら白蘭 が心細げに問う。周 は役になり切っているのか、穏やかで愛しげな視線を彼女に向けながらも平然と答えた。
「担当者に話したことは事実だが、ダブルキャストにすることを決めたのは上の連中だ。そもそも俺は単なる出演者の一人に過ぎないことだしな。いくら何でも俺に配役をチェンジする権限などあろうはずもない。それよりも公演まであまり時間が無いんだ。しっかり動きを頭に入れてくれよ」
未だ愛しい恋人に向けるやわらかな視線のままで周 は更にこう付け加えた。
「とにかく良いステージになるよう互いにがんばろう」
そう言ってにこやかに笑む。そんな対応に白蘭 の方は彼が怒ってはいないのだと安心したのか、嬉しそうに頬を染めたのだった。
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