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104 地獄絵図

 それ以後、ネット上の書き込みやコミュニティ板でも好意的な絶賛は続いていたものの、ダブルキャストとなった白蘭(バイラン)については相変わらずに酷評が見受けられた。  それとは逆に、少し前のショーでウェディングシチュを演じた辺りからは新人の(ひょう)に寄せられる期待の声も増えて、カップリングを組んだ当初は『ベテランのイェンに素人同然の新人を当てるなんて』と不満げだったファンたちからも似合いのカップルだと認められるようにもなってきていた。特に今公演では(ひょう)が女装での娘役を演じたことで、元々イェン推しであったコアなファンたちにとっても(ひょう)演じる娘の役が自身に置き換えられて投影されるわけか、舞台を離れた私生活に於いても二人に仲良しであって欲しいという声も聞かれるようになってきていた。個人ブログや投稿サイトなどでも二人をカップル化した二次創作までお目見えするほどとなり、ボーイズラブ的な観点での創作物なども増えてきているようだった。  元々話題性があったせいかチケットの売れ行きという点でも前売りから上々だったわけだが、公演が進むにつれて特に(ひょう)が主役の娘役となる夜の部の方は完売が相次ぐようになり、それこそオークションサイトやフリマアプリでは争奪戦で値が釣り上がるような事態も見受けられ、主催者側としても嬉しい反面、法に触れるのではと、そんな心配までさせられる羽目となっている。  それとは裏腹に、白蘭(バイラン)が主役を演じる昼の部ではチケットを手放す風潮も見られ、次々とオークションサイトなどで売り捌かれ始める。とはいえ、一応は連日満員御礼という安泰は変わらずじまいだったが、目当てはダブルキャストの(ひょう)演じるディーラー役の方だというのが見え見えの事態。  当然、白蘭(バイラン)としては喜べるものでもなかっただろうが、理由はどうでもとにかくは満席にできている時点で彼女の目論みは達成できていたのだろうか。表面上は何事もなく千秋楽を迎えようとしていた。 ◇    ◇    ◇  千秋楽当日、いつも以上に賑わいを見せたホールでは、昼の部からも立ち見が出るほどの超満員となった。  そんな中、夜の部の客席には鐘崎(かねさき)紫月(しづき)の父親である僚一(りょういち)飛燕(ひえん)の姿があった。レイが取ってくれた席は、舞台から見て右端の方に当たる位置ではあったものの、最前列というプラチナチケットである。僚一(りょういち)はダークスーツ姿、飛燕(ひえん)は和服姿といった準フォーマルな出立ちで、息子たちの舞台を楽しみに席へと腰を落ち着けた。 「それにしてもレイのヤツ、我々の為にこんないい席を用意してくれて……」  他の観客たちに申し訳ないなと言いながらも嬉しいことは隠せない。 「まあな。その分、有り難く隅から隅まで堪能させてもらうとしようぞ」 「そうだな」  息子たちの出番は休憩を挟んだ第二部だが、(イェン)(ひょう)の一部も楽しみだと言いながらパンフレットに目を通す。そうこうする内に場内の灯りが落ちてブザーが開幕を告げた。  前半は何事もなく無事に行われ、(ジォウ)(ひょう)が主役のステージも終盤に差し掛かった頃――。

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