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 一方、その少し前のことだ。  業火の中、(ひょう)を捜し回っていた(ジォウ)は、僚一(りょういち)によって無事に彼が助け出されたことを知らされた。 「(ひょう)にはスタッフらと共にすぐに表へ避難するよう伝えた! 舞台袖はまだ火の手が回ってなかったから無事であろう」  (ジォウ)はホッと胸を撫で下ろし、だがそんな自身も火傷と怪我を負ってすぐにも手当ての必要な状態だ。(ひょう)を捜しながら焼け落ちてきた木材や機材に潰され掛かり、黒煙を吸い込んで喉にも火傷を負っていた。避難を手伝っていた鐘崎(かねさき)紫月(しづき)らも皆似たような有り様だったが、場内に火が回り切る前に飛燕(ひえん)がいち早く観客たちを出口へと誘導したのが功を奏して、誰もが命に別状はない状態でホールの外へと避難が叶った。むろんのこと怪我人は大勢出て、外には消防車と救急車であふれていたものの、誰かが命を落とすという最悪の事態は避けられたのだ。  レイら一同の中でも必死に(ひょう)を捜し歩いていて一番の重傷を負ったのは(ジォウ)だったが、彼もまた、命に別状はなく、鐘崎(かねさき)紫月(しづき)らに肩を貸されて表へと出た。  ところが肝心の(ひょう)の姿が見当たらない。誰もが焦燥に駆られた。 「おかしい――あの後すぐに出口へと向かったはずだ」  寸でのところで(ひょう)を守った僚一(りょういち)本人がそう言うのだから間違いはなかろう。 「まさか……避難を手伝おうとしてホールに戻ったんじゃ」  (ひょう)君のことだからあの惨状の中にあって自分だけが逃げるなどという考えは浮かばなかったのかも知れないと言って、紫月(しづき)が不安げにホールの方を見やる。 「だとしても火はほぼ鎮火に向かっている……」  消防隊も入って行ったことだし、仮にホールに留まったとしてもそろそろ表に出てくるんじゃないか――と、皆で顔を見合わせていた時だった。 「ああ、ここにいらした! イェンさん! レイ・ヒイラギさん!」  警備員の男が焦燥感いっぱいといった表情で駆け付けてきた。騒ぎが起こったホールからは遠く離れた警備室にいた彼は、レイや(ジォウ)らを捜して方々駆けずり回っていたようだ。 「実は……自分は警備室のモニターで騒ぎを知ったんですが、とんでもないものを見まして……」  なんと、(ひょう)が暴力を振るわれる場面をモニターの中に見たというのだ。 「相手は女でした。でも誰だかは分かりません。雪吹(ふぶき)さんを引っ叩いたり、足で蹴飛ばしたりしていて……」  中でもその女が執拗に(ひょう)の足を踏み付けている素振りに、警備員は直感的に女が彼をあの場に足留めして焼き殺すつもりなのではと思ったそうだ。これは一大事だと舞台袖へ向かおうにも既に下りていた防火シャッターに阻まれて現場への道はとうに塞がれていた。とにかくはレイたち関係者に応援を頼もうと駆けずり回っていたのだそうだ。事情を聞いた(ジォウ)らは一気に蒼白となった。 「まさか……(ひょう)はまだホールの中にいるってのかッ!?」  (ジォウ)は血相を変えて一目散に駆け出した。鐘崎(かねさき)紫月(しづき)僚一(りょういち)飛燕(ひえん)ら一行もすぐさま後に続く。  何度も足を踏み付けていたということから、靴に刃物を仕込んだのはその女の可能性が高い。(ひょう)の怪我についてはレイをはじめとしたごく限られた仲間内以外には知らせていなかったからだ。むろん出演者たちにも内密にしていたから、足の怪我について知っているのは犯人だけということだ。  だが、今はそれこそ犯人が誰かなどということを考えている余裕はなかった。(ジォウ)は一秒でも早くホール内に戻らんと怪我には目もくれずに全力疾走し、鐘崎(かねさき)らも同様だった。  途中、紫月(しづき)は燃え残っていた木片を拾い上げてはそれを手に皆を追い掛けた。万が一、敵が複数犯で警備員の言っていた女以外にも仲間がいて対戦といった事態になった場合、刀の代わりになるからだ。  息咳切らしてホール内へと戻ったが、遠目のステージ上には信じ難い光景が待っていた。女――白蘭(バイラン)――が(ひょう)を蹴り飛ばして、奈落へと突き落とす瞬間だったのだ。

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