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111 生涯の伴侶となりて永遠に歩む
「冰 ! 冰 ! しっかりするんだ! 冰 ッ! 目を覚ませ!」
ガクガクと肩を揺さぶられて目を覚ませば、そこには無事な周 の姿――焦燥感いっぱいといった表情で自分を覗き込んでくれている。
「……あ……焔 ……さ」
良かった。彼は業火に包まれてはいない。無事でいる。生きていてくれている。
ぐっしょりと濡れた枕は悪夢によって無意識に流れ出た涙だろう。寝巻も全身から噴き出した汗でじっとりと濡れていた。
「冰 ! 目が覚めたか? 大丈夫だ。もう何も起こらない。もう怖いことは何もねえ」
大きな掌で両の頬をしっかりと包まれて、今見たそれが夢だったのだと知る。
「焔 さ……焔 さん……」
生きていてくれた。
僕を呼んでくれてる。
声を聞かせてくれる。
良かった。
「本当に……」
無事で良かった――。
現実が戻ってくると同時に再びボロボロと涙があふれ出した。
抱き起こし、頬の涙を拭ってやりながら周 は華奢な身体を目一杯懐へと抱え込んでは抱き締めた。
「また――例の夢を見たのか?」
「焔 さ……ごめ……なさ……僕……」
「大丈夫。俺はここにいる。ずっとお前の側にいる。怖くねえからな。大丈夫だ」
「焔 さ……ん、どこにも行かないで……。僕を置いて行かな……いで」
「ああ。ああ、もちろんだ。二度と放しやしねえ。ずっと――ずっとお前の側にいる!」
「……本当? 本当に僕を一人にしない?」
「当たり前だ。約束する。もう二度と――決して側から離れたりしない」
「本当に? 僕を置いて……死んだりしない?」
「ああ。お前を置いて逝くわけがねえ」
「絶対――約束して……! もしも焔 さんが死ぬ時は僕も一緒に連れてってくれるって……約束して……!」
必死の形相で縋るように訴えてくる。周 はこんなことを言い出す冰 に驚かされたものの、初めて耳にすることができたその気持ちに胸が熱くなるのを抑えられなかった。
「ああ、約束する。二度と離れねえ――! お前と一緒に生きて、思う存分幸せになって――二人でめちゃくちゃ楽しい毎日を過ごそう! 二人で一緒に歳を取って、一緒に白髪になって、共にヨボヨボの爺さんになって――生きる時も死ぬ時も絶対に独りぼっちになんざしねえから心配するな!」
「焔 さん……焔 さ……ん! うん、ん、約束だよ? 焔 さんがいなくなったら僕は――」
生きていけない――。
「冰 ――! 約束する。何も心配するな。俺は口先だけの約束なんざぜってえしねえ。適当なことを言ってお前を慰めて今を凌げればいいなんて、そんないい加減な気持ちで言ってるんじゃねえ。生涯お前の側にいる」
生も死も、苦も楽も――すべてを共にすると誓う。
繋いだ手と手を生涯放さずに生きていこう!
そして一緒に、目一杯倖せになろう!
真剣な表情でそう言ってくれる周 を見上げながら、ふと、ある言葉が脳裏に蘇る。周 と冰 が初めて顔を合わせた日の言葉だ。
『バッカ、そう畏まるなっつったろ? 俺たちは今この瞬間から相思相愛の恋人も同然なんだからよ。どっちが上とか下とか、キャリアやレベルがどうのなんてのは気にする必要ねえ。誰がなんと言おうが、この俺がしっかり守ってやっから、お前さんは安心して俺の懐ン中でヌクヌクしてりゃいいのさ』
あたたかい笑顔で、とびきりやさしく瞳を細めてそう言ってくれた。クシャクシャっと朗らかな仕草で髪を撫でてくれた。まさにその言葉の通り、今回も身を挺して守ってくれた。拉致されて香港に連れ去られた際にも危険を厭わず助けに駆け付けてくれた。
口先だけの約束などしない。共にいると誓う。そしてその言葉通りに行動で示してくれる。
こんなに尊いことはない。こんなに深い愛もまた――ない。
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