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ふと、周 がつぶやいた。
「だがカネ――。俺と冰 、それに一之宮 も遅かれ早かれ引退ってことになると――おめえさんはこの先どうするつもりでいるんだ」
今いるこの四人の中で周 だけは鐘崎 が紫月 に惹かれていることを知っている。例の事件を機に冰 との想いを通じ合わせることが叶った周 だが、友の恋路の行方と、この後の身の振り方も気掛かりなのだ。
まあ、一之宮 道場が鐘崎 組の真隣となれば、モデルの仕事を離れたとて頻繁に顔を合わせることになろうから、その点では心配ないと言える。鐘崎 の紫月 に対する想いは真剣のようだし、彼なりに慌てずゆっくりと絆を深めていこうと思っているのかも知れない。
できることならこの友の想いが叶い、幸せになって欲しい。
寡黙で男前で、あまりの見目の良さからともすれば愛想のない冷たい印象を抱かれるような彼だが、そんな見た目に反して実は至極思いやりがあってやさしい性質なのだ。案外晩熟なところもある男だから、自分に応援できることがあれば、これからも何かと節介を焼いてやりたいと思う周 だった。
そんな周 の思いを裏付けるべく、鐘崎 から語られた今後の身の振り方が彼の人間性を物語っていた。
「そのことについては――ここしばらくの間、紫月 とも話し合ってきたんだが。俺も現役としては紫月 とのカップリング期間が終了すると同時に引退しようと思っている。その後は裏方に回ってもうしばらくここに残るつもりだ。俺たちがいっぺんにいなくなっちまったら、レイさんや倫周 だって寂しくなっちまうだろうしな」
紫月 も同様で、モデルとしては今期を最後に引退すれど、道場が建ち上がるまでの間はこのままここに残るそうだ。とはいえ、年が明ければ建築も開始される予定だから、実質半年にも満たないほどでギムナジウムを去ることになるだろう。
「俺らのカップリング期間が終了したら、俺と遼 もモデルを引退しようって決めたんだ。今度は裏方に回って、後輩君たちの世話係ってわけじゃねえが、マネージメントの方で力になれればと思ってる」
もちろん、このまま鐘崎 とのカップリングを続けさせてくれと言えば、レイは二つ返事で承諾してくれるだろう。だが、それではいつまで経っても後進たちが陽の目を見られない。引き際も大事ということだ。
「――そうか。お前らも引退とな」
周 自身は、引退後に汐留の高層ビルにて商社を起業することを事務所に入る時からレイには打ち明けていた話だった。その伴侶として冰 と共に本当の意味でのカップルとなり生きていくわけだ。
そして紫月 は実家へと戻り、これからは影の忍者一族としての本業を全うしていくことになる。
鐘崎 とていずれは組に帰ることをレイならば重々承知だろうが、皆が揃って出て行ってしまうのではさすがに申し訳ない思いもある。周 が起業すれば、李 と劉 、医師の鄧浩 は当然自らの主人について彼らも事務所を去ることは折り込み済みだ。紫月 と綾乃木 にも同じことが言える。
「俺はしばしここに残って、つつがなくモデル事務所が運営できるよう後進を育てる手伝いをするつもりだ」
今現在、鐘崎 の護衛役としてモデル業に投じてくれている組幹部の清水 、橘 と共に後継を育て、立つ鳥跡を濁さずの状態で組に帰ろうと思っている――そんな鐘崎 に、周 はもとより冰 も紫月 も感無量にさせられるのだった。
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