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第29話 【最終話】幼い願い(主人公受け)

 からっぽ、からっぽなんだ。俺が。  腹だけじゃなくて、別なところも。でも、どこなのかわからない。何が足らないのかわからない。肉を食べて、良い匂いがして、身体が火照ってる気がする。 「――」  叫んでみる。足らない。これじゃない。  どうしたらいいのかわからない。  いつの間にか足の間のものが固くなってて、それを肉に擦り付けてみる。ぞわぞわした。足りないものに少し近いかもしれない、気もした。 「出来損ないになると、やっぱり理性がなくなっちゃうんだね」 「食欲の次は性欲みたい」  何か音が聞こえるが、どうでもいい。足りないものを埋めたくて、血を啜る。飲み込む。でもこれじゃない。 「わかってないみたいだしさ、助けてあげたら、アイリ」 「そうだよ、かわいそうだよ」  誰かが何かを言っている。何の話だろう。どうでもいい。 「っ、皐……こんなつもりじゃ、なかったのに」  肉が蠢く。まだ破ってなかった服を脱いでいる。手間が省けた。手を動かしているが、何をしているのかわからない。  血じゃ足りなかったから肉を食んでみる。おいしい。腹が満たされるのに、違う。水みたいな音がする。 「こんな風にしたくなかった、けど。でも……皐がそれで少しでも、楽になるなら」  よくわからない。わからないのに、伸びてきた手を払えなかった。  わからないものはこわくて近付きたくないのに。 「じっとしててね。痛くしたくないから」 「ッ!」  服を脱がされ、足の間の熱に直接触られた。 「こわくないよ」  固い熱を擦られる。ぞわぞわする。ざわざわする、奥が。どこかが。もっとほしくて。 「ここ、かな?」  さらに奥、窄まりの表面を撫でられた。 「っ、ぅぁ……」 「うん。そのまま、ね」  やさしいこえ、いいにおい。  熱いものを擦られながら、後ろを触られる。 「助けてあげるよ、じれったいから」  声が聞こえて、後ろになにかぬるっとしたものが掛かった。ひんやりする。きもちいい。どくどく、する。  そうだ、そこに欲しかった。  そこが満たされたら、何かが満たされる気がする。  足りないものが。乾いたものが。  中に何か入ってくる。指だ。ゆっくり、じりじり、入ってくる。 「痛くない?」  そんなことはどうでもいい。欲しいものはこれじゃない。もっとあついもの。こんなものじゃない。  腰を振って指を抜いてしまう。 「っ、動いたら危な……あっ!」  さっき肉塊が擦っていたそれを掴んだ。熱くて、少し固い。俺のより固くない。でもきっとこれなら。 「まだだめ……ッ」  指を入れられたところにそれをあてた。欲しいものは熱量。  逃げようとする肉を捕まえ、熱を掴み、強引に腰を動かした。 「っ、ぁぁ」  めりめりと、身体が裂けるような痛み。これが熱。欲しかったもの? 「離して……っぐ!」  肉が暴れるのが鬱陶しく、手のひらを爪で突き刺して床に繋ぎ止め、熱を奥に入れていく。奥へ奥へ。この奥で熱を食べれば、俺はきっと足りる。 「ぅぐ、ぁ……」  これ以上入らないところまで肉が入って、埋まった。  そのまま足を使って身体を上下に動かし、熱を出し入れする。だんだん痛みが鈍くなっていって、ぐちゅ、ぐちゅ、と音がして、動きやすくなるから丁度良い。 「っ、血が……」  何も知らない。俺が欲しかったものはこれ……じゃない。  なんなんだ。  奥まで満たされたはずなのに、足りない。これじゃなかったのかもしれない。 「なんか違ったみたい? それとも満足したのかな?」 「今度は食欲かな。両方落ち着いたら、きっと大人しく眠ってくれるよ、きっとね。その間に首輪付けちゃえば安心だね」  動いたから、腹が減った。腰を引くと、ずるり、腹の中に入っていたものが抜けた。 「皐……?」  がぶり、腹に噛みついた。肩よりもやわらかい。 「っ、あ! ご、めん。ごめん、ね……?」  肉がなにかを言っている。妙に美味しい肉で、噛めば噛むほど広がる甘さに夢中になって、気付けば爪で肉を引き裂いていた。腹の中にずぶずぶと手首まで埋めていく。 「そ、れでも……会えて、うれしか、った。俺、と同じ……だから……」  あたたかい。  あの時の母さんや父さんのはらわたとは違ってあったかくて、手を、腕を、包み込んでくれる。もっと中に入りたい。もっと包んでほしい。ずっと包まれていたい。この心地好い香りと温度の中で。 「だから……同じになってほしく、なくて。躊躇って……ごめん」  肘までたっぷりとあたたかな胎内に浸った。指先がなにかに触れている、どくどくと脈打って生きている何か。  心臓。  それはきっとおいしい。  それはきっと俺の空腹を満たしてくれる。 「──ッ」  肉が震えた。痙攣して、大きく跳ねて、食べにくい。肩に齧りつく。固い。腹ならもっとやわらかいだろうか。  肉を地面に転がして、手で開けた腹の穴に顔を埋めた。 「思ったよりも食欲旺盛だね」 「餌用にアイリを置いてなかったら僕が食べられてたかも」  穴には血が溜まっていて、甘い飲み物を口にたっぷりと含み、ごくごくと喉を鳴らした。  飲んだら、食べたくなる。  やわらかい部分だけを口に含みながら、穴の奥を探る。腹の肉と臓腑は肩よりも遥かに匂いが強くて柔らかく、美味しかった。  大分満たされてきた。あとはとっておきのものだ。 「っぐ……」  艶めかしい深紅を纏ってぬらりと光る宝石が奥まった場所で脈打っているのが見えた。 「ごめん、ね……」  この世でそれだけが持つ美しさに目を奪われて、思いきり掴み、引きずり出した。 「──」  大切な宝物に牙を立てる。  全ての音が、消えた。   【偏愛ネクロマンチシズム ED1 幼い願い】 ※その他のエンディングや水無月とアイリの幸せな結末はフリーゲーム「偏愛ネクロマンチシズム」をご覧ください。

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