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寿安の決意

正室は身籠らなかった。 その後、国王は儀礼的に正室の部屋を訪れることはあっても、二度と寝所に入ることはなかった。 月日は容赦なく過ぎていった。 期待された世継ぎは未だもって生まれず、この国の将来を憂いた側近の一人が国王に側室をおくことを進言した。 国王は内心では側室を置いたところで何かが変わるわけではないと分かっていたが、世継ぎがいないのは憂慮すべきことであることも承知していた。 どうあっても務めは務め、果たさねばならない。 それならば、気位の高い女より従順な心の根の優しい女がいい。 側室に迎えられた女性(にょしょう)は氷のような美しさの正室とは異なり、木漏れ日のような柔らかな温かさをもっていた。 側室は常に温かく国王を迎え入れ、そんな側室を国王も次第に気にいるようになった。 決して色欲の対象となることはなかったが、近侍以外にも心を許せる相手ができたのだ。 国王は遂に側近との間に子をもうけることをとを決意した。 しかし自分の性的嗜好が変わるわけではなく、だからといって正室にしたようなことを側室にするつもりもなかった。 そんな時、国王はある妙案を思いついた。 それはある夜のこと。 国王は近侍と睦あった後、国王の隣でまどろむ近侍に言った。 「なぁ……」 近侍はゆっくりと目を開けた。 事後の余韻が淡い光となってその目に揺らいでいる。 国王は体の中心が小さく疼くのを感じた。 「なんでしょう、王様? 」 「お前の子が見たい」 「えっ? 」 「私はお前の子が見たい」 「あの、それは……どういう意味でございましょう? 」 「お前も知っての通り、私には世継ぎがいない。今まではのらりくらりとやり過ごしていたが、いつまでもそうしていることはできない。 だから、妃との間に子をもうけることにした。うむ、そう決意した」 「それが……、どうして私の子が見たいということになるのでしょう、王様? 」 「お前にも話しただろう、正室とのあの忌々しい夜のことを。私にはどうやっても女性は抱けぬ。だからな、お前が私の代わりに二人を抱くのだ。どちらかが身籠るまで、いや、二人とも身籠るまで、種を蒔き続けるのだ。 お前の子なら、さぞ美しいだろう。どうだ? 我ながら良い考えだとは思わないか? 」 「王様! 」 近侍は驚愕とも恐怖ともいえぬ表情で国王を見た。 国王はよしよしと慰めるように近侍の背中を摩った。 「お前の言いたいことは分かっている、私とて苦しいのだ。お前が女性と交わるなど、考えただけでも気が狂いそうだ。 お前が正室を抱く時、私は自分の流す涙で溺れてしまうだろう。お前が側室を抱く時、この胸は天と地、二つに裂けるだろう。 だが、分かってくれ、私には無理なのだ。どうあっても女性は抱けぬ」 国王は近侍の顔をそっと撫でた。 「私の願い、聞いてはくれぬか? 」 「王様……」 「私はずっとお前と一緒にいたい、ずっと寝屋を共にしたい、お前もそうだろう?だがそれは国王としての勤めを果たしてこそだ。 己の務めを果たさねば私とて立場が危ういものになる。ひいてはお前の立場も……、なぁ、分かるだろう? 」 「はい……、王様……」 「では、頼まれてくれるか? 」 「はい……、王様、仰せのままに……」 「そうか、そうか、よく言った! 頼んだぞ! 」 国王は近侍を抱きしめると、耳元で熱い吐息を吹きかけながら囁いた。 「なぁ、あと一つ、私の願いを聞いてくれぬか? 」 「? 」 国王は寝台の上で四つん這いになると、近侍に尻を突き出した。 「ここが疼いて仕方ないのだ。なんとかしてくれ」

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