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第7話

「母上ー! 」 子は護衛を振り払うと、床に伏した母のもとへと駆け寄った。 冷たい大理石の床が真紅に染まっていく。 「母上、母上……。いやだ、死んじゃいやだ……」 「私の……」 側室は血に染まった手を伸ばした。 子の柔らかな頬に触れようとしたが、その手が届くことはなかった。 「母上! 母上! 母上っ––––! 」 「護衛、なにをしておる! さっさと片付けろ! 裏切り者の二人の首を市中に晒せ! 骨になるまで晒しておけ、よいな! 」 「御意! 」 「やめて! 母上に触らないで! 」 「お前も死にたくなければ、大人しくしているのだ! 子供とて容赦はしないぞ! お前だってここで死んでもおかしくはないのだ、いつ死んだっておかしくないのだ! 」  「王様、子に罪はございません。仮にも王様のお子でございましょう」 見兼ねた正室が声を振るわせながら言った。 憎い相手の子とはいえ、幼い子供が目の前で殺されるなど見たくもない。 「そうだな、仮にも私の子だ。だが、私を裏切る者は例外なく殺す! いいか、例外なくだ! 」 正室は背筋が凍るような思いでその場に立ちつくした。 国王は護衛に子を連れていくよう命じた。 「さぁ、行きましょう、皇子様」 護衛が泣きじゃくる子の肩に触れた—— 「あつっ! うわぁっー! 」 護衛は絶叫した。 子に触れた手から一筋の黒い煙がたちのぼった。 護衛の手の皮膚は焼け爛れ、骨の一部がむき出しになっていた。 「母上をこんな目にあわせて……許さない……」 その場にいた誰もが絶句した。 子の全身は黒い烈火に包まれ、めらめらと燃えているではないか。 「お、お前……、まさか……」 国王はあの夜の出来事を思い出した。 白い鹿と黒い鹿–––– 「許さない! 許さない!許さない! 許さない!許さない! 許さないー! 」 子は赤く目を光らせ、国王を睨みつけた。 その目は煮えたぎる血の海のごとく、すべてを焼き尽くさんと憤怒に燃えている。 「なっ、なにをしておる、殺せ! 殺すんだ! こいつは呪われた子だ! く、黒神に呪われた魔物だ! 生かしてはおくことはできぬ、殺せ! 殺せ! 」 護衛たちは一斉に斬りかかった。 「絶対に、許さない––––! 」 子の目が赤く鈍い光を放った瞬間、黒い炎が天井へと一気に立ち上り、渦を巻きながら爆ぜた。 本編へ続く

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