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第五話

光安(こうあん)大主(おおぬし)との話を終え、竜仙山(りゅうせんざん)の山頂に座す(あま)の離宮に戻ると、自身の居室がある奥座敷には戻らず、すぐさまとある場所へと足を運んだ。 「詳しい話は蘭宣(らんせん)に尋ねよ」と、大主が人界に行く前に師匠のもとを立ち寄るよう命じていたのだ。 光安は奥座敷の南側にある、両端を竹林に囲まれた小径へと入っていくと、結界に守られた竜仙山の山頂は下界の自然界と同じく、春のような陽気に包まれ、時折、微風によって竹林の葉が囁くような音を立てる以外、辺りは静寂に包まれていた。 光安は奥へ奥へと進むうち、天の離宮を覆う結界とはまた異なる、別の結界の存在を感じた。 それは蘭宣が張った結界で、蘭宣が認めた者しか通ることができない結界であった。 光安は立ち止まることなく、その結界を難なく通り過ぎた。 そこからほどなくすると、その小径の抜けた先に、ひっそりと佇む一軒の平屋——光安の仙術の師匠、蘭宣が住む隠所が現れた。 光安の師匠である蘭宣は白神の中でも卓越した仙術の使い手で、かつては光安の父と大主の座を競ったことがあるともいわれていた。 今では大主の右腕として、光安のような若く経験の浅い神の指南役として多くの弟子を抱えていた。  光安は小さな庭に面した縁側を通り、蘭宣が普段過ごしている安室(あんしつ)と呼ばれる部屋へと向かった。 「師匠。光安が参りました」 障子の向こう側に蘭宣の気配を感じるが、本人から返事はない。 「師匠? 失礼します 」 光安は障子をそっと開けた。 すると、光安の耳に刺すような鋭い金属音とともに、針のような閃光が光安めがけて飛んできた。 光安はすぐさま庭へ飛び退くと、サッと一振り袖を払った。 閃光は細氷(さいひょう)のように、細かな銀色の塵となった。 光安は微動だにせず、その場に留まっていると、再び張り詰めた音が光安の耳を掠め、今度は流星のような無数の閃光が光安を襲った。 光安は執拗に飛んでくる閃光をものともせず、空を切り裂くような素早い動きで、右から左、左から右へと横一線に袖を払い、閃光を退けていく。 衣擦れの音すらせず、軽やかな身のこなしは舞を踊っているようだ。 光安は閃光に向けて手のひらをかざすと、それは手のひらの前でピタリと止まった。 閃光は吸い込まれるように光安の手のひら一点に集まり、小さな白銀の玉へと変化する。 光安は「(さん)! 」と言って握りしめると、光の塊は散り散りになって消えていった。 微風が光安の頬を掠め、竹葉をくすぐるように揺らす。 光安は乱れてもいない袖を整えると、安室に視線を送った。

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