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第十話
「さぁ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい! 御喜楽座 のお目見えだよー! 御喜楽座が新渓 にやって来たよー!」
ある晴れた昼下がり。
その大通りに、少年の溌剌とした声が響き渡る。
旅一座が宿場町、新渓 にやって来たのだ。
「我らが座長にして、御喜楽座 の看板娘、聖羅 様がついにこの新渓にお目見えだよ!
さぁ、ここで出会ったのも何かのご縁! 束の間の出会い、夢のひととき! 出会いも別れも、これ一度きり!この機会を逃したら、いつ聖羅 様にお会いできるかわからないよ!
さぁ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃいー! 」
少年は愛嬌のある笑顔を振り撒きながら女座長を乗せた馬を引いている。
町中に笛と太鼓が鳴り響き、祭りのような賑わいで大通りを練り歩く。
女座長は馬の背に横座りし、馬の揺れるがままに身を任せている。
一本に高く結い上げた黒髪は腰まで伸び、襟元からは淡く香りたつような白肌が見えた。
少年の言葉に偽りはない。
『聖羅 様』と呼ばれた女座長は香るように美しい女性だった。
ごった返す人混みのなか、男たちの欲望と女たちの嫉妬——
しかしその両者の視線には共通する、抗うことのできない「羨望」といったものも含まれていた。
女座長、聖華はそれらを一身に浴びながら——そういった視線には慣れているのだろう——当然のことと、優雅な眼差しで微笑みかえす。
御喜楽座一行は新渓の大通りを練り歩きながら最初の四辻へと辿り着いた。
「姐さん、この辺でどうでしょう? 」
馬を引いていた少年が見上げて言った。
女座長は静かに頷くと、少年の手を借り馬から降りた。
懐から銭袋を取り出しそれを少年に渡すと、少年の耳元で何やら囁く。
少年はこくりと頷くと、馬を引いてその場を離れていった。
少年は数日の逗留するための宿を探しへと行った。
少年が人混みに消えるのを見届けると、女座長は残りの男たちに軽く目配せした。
一座の一人が張りのある声で叫ぶ。
「さぁ、さぁ、お立ち合い! よーく目を開いてご覧あれ! 天上天下広しといえど、我れらが聖羅様に勝る花はなし! 天に愛されし絶世の美女が、天女の如く舞い踊る!一座の至宝! 聖羅様の舞をとくとご覧あれ!」
燃えるような赤い衣を纏った女座長は、ひらりと袖を翻すと笛と太鼓の音に合わせて舞い始めた。
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