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第十一話
大通りの昼下がりとあって、大通りは行き交う人々でごった返していた。
そんななか宿場町の新渓 に旅一座がやって来たのだ。
人々は賑やかな音色と女の舞いに興味津々、足を止めると早々に人だかりができた。
見物客の男が隣の見ず知らずの男に話しかける。
話しかけた男はこざっぱりとした単衣に身を包んで、旅の行商人といった風情だ。
「随分と背の高い踊り子だな」
「なんでも温蘭 から来たらしいよ」
声をかけられた男は人の出入りが多いこの宿場町の者らしく、話しかけてきたよそ者と思しき男の問いにも気軽に答えた。
「温蘭? あぁ、なるほど。あの地域の者は男も女も軒並み背が高いと聞いたが、噂にたがわずだな」
「えぇ。温蘭族の連中は背が高くて肌の色も雪のように白い。もともとは辺境の地みたいなもんだったけど、最近、花街みたいなのができたらしく、芸達者な連中が集まって見せ物を披露したり、賑わっているらしい」
「花街か……」
「そうだよ、花街! いろんな楽しみがあるのさ! 一度でいいから行ってみたいもんだ! 」
「……」
「それにしても、見ろよ、旦那。あの女の肌。玉のように透きとおって……それにあの柔らかな腰つき……いやぁ、触ってみてぇなぁ」
話しかけられた男は妄想の翼を逞しく広げ、女のあらぬ姿を想い描いては一人悦にいる。
そこへ狙いすましたように、女は男に柔らかな視線を送った。
「あっ、ねぇ、旦那、見たか? 俺の方を見て、片目つぶったぞ! ニコって笑ったぞ!俺に気があるんじゃないか? そうだろ? そうに違いないだろ? あれっ? 旦那? 旦那、どこに行った?」
単衣の男はいつのまにか姿を消していた。
「ったく、なんだよ、話しかけときながら、挨拶もしないで行ったのかよ——ん? 」
男は不意に胸元に違和感を感じた。
妙に懐が軽くなったような感覚を覚えたのだ。
男は懐に手を入れた。
「えっ? あっ、な、ない! ない! くそっ、やられた! 俺の銭袋! 銭袋——! 」
次の瞬間、軽快な笛と太鼓の音色は一気に趣をかえ、地響きのような太鼓の音だけが大通りに鳴り始めた。
男の絶叫は熱狂の渦に虚しくかき消された。
女は小さく——誰に気づかれることもないくらいに——小さくほくそ笑んだ。
そのうちにも太鼓の音が激しさを増していき、女の舞も激しさを増していく。
赤い衣は美しく乱れ、女の襟元からは玉のような白肌が垣間見え、そこにはうっすらと汗が滲んでいる。
可憐な天女は危うい色香を纏った艶女へと変化し、見る者の身も心も——それは男も女も違わず——芯から熱くさせた。
締めの太鼓の音が一つ鳴ると、女の舞もぴたりとやんだ。
一瞬の静寂の後、熱狂的な歓声と拍手とともに、四方八方からおひねりが飛んできた。
女は激しく踊ったにも関わらず、息ひとつ切らさず、余裕の笑みを浮かべている。
優雅なお辞儀で応えると、見物客の熱量は最高潮に達した。
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