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第6話 俺が喰われるなんて聞いてないっ! 俺を下の名前で呼ぶな!※

 ドッドッド。  自分の心臓の音がやけに速く、大きく聞こえる。身体中の血流が勢いよく流れているのを感じて、こんな感覚は初めてで怖くなって目を閉じようとした、その時。 「大丈夫。こわくない、こわくない」 「っ!?」  奴にあやされるように髪の毛を撫でられた。なんだこの幼稚園児に接するような舐め腐った態度は! 「おい。俺は子どもじゃねえぞ」  ドスの効いた声で告げれば、くすくす笑って余計に俺をイラつかせた。だがしかし、何の反抗もできない自分の細い身体が憎い。こんなことになるなら、筋トレしておくんだった。 「あーもう。ほんと、もういい加減にして? 俺のほうが我慢できなくなるから」 「へ?」  そのままゆっくり奴の顔が近づいてきたと思って避けようと首を逸らしたら、片手で顎を押さえつけてきた。ナチュラルに、スムーズに奪われた。  俺のファーストキス。 「ふ……んっ」  息継ぎの仕方もしらない。シュミレーションもしたことがない。奴は慣れているようで、ついばむようなキスを数回繰り返す。俺は奴に屈したくなくて口をぎゅっとつぐんでいたが、奴の指先がとんとんと俺の唇をノックしてきたので、驚いて口を開いてしまった。  それがいけなかったんだ。  奴はあろうことか俺の舌先をちゅ、ちゅと吸い始めたのだ。  くそ。ディープキスまで奪われた……。  なんだか少しショックのような、でもなんか熱い舌先を吸われると身体の力が抜けてしまいそうな、胸の中がぽわぽわ温かくなっていくのは何故だろう。  理由を見つけられないまま、奴は何度もまるで慈しむように俺に口付けを落とす。数分経った頃だろうか。俺にはその時間はひどく永遠に感じられた。そうしてやっと俺の口から離れてくれた。その表情は満足げだった。  もう俺が何を言ったとしてもこの男は停止しないだろう。  そんな諦めにも似た気持ちが胸を覆った。俺は、はぁ、と大きくため息を吐いて下から奴を睨みつける。 「これで満足?」 「んーん。まだ本番はこれからだよ」 「わっ……あっ」  俺が着ていたTシャツを、奴はするりと胸元まで持ち上げた。そうして性急にコトを始めたのだ。胸をやさしくまさぐられ、まだ触れたことのない胸の突起をいじられ、挙句の果てには舐められた。熱い舌で舐められるとひくん、と腹の奥が疼き出す。自然と熱が下半身に集まり、腰をくねらせてしまったのも奴を刺激するには十分だったようだ。  ぐり、と硬いものが俺の太ももに押し付けられた。下を向けば奴の黒いスラックスの一部が軽く盛り上がっている。男ならだれでもわかるあの感覚だった。  俺、今からヤられるのか?  俺はいちご狩りに誘われただけなんだが。  そんなことを考えている間も奴は俺の胸の愛撫を欠かさず、丁寧に触れてくる。腑抜けた声が洩れそうになるから、俺は慌てて唇をぎゅっと噛み締めた。 「我慢しなくていいよ。可愛い声、俺に聞かせて」 「あっ……ん……っんあ」  唇をふにふにとほぐされ、またしても俺は口の力が抜けて間抜けな声が洩れてしまった。奴は絶好のチャンスとばかりに俺の口内に人差し指を押し込み、歯列をなぞったり上顎の裏を優しく撫でてくる。  普段触れられたことのない場所は敏感で、身体に震えが走ってしまう。びく、びくんと腰が揺れた。膝から太ももの付け根まで熱くて骨ばったごつごつとした手のひらで撫でられ、気がおかしくなりそうだ。そうして奴の手は、ついに俺の一番敏感なところに到達した。やんわりとスウェット越しに揉まれ、俺の息が上がる。 「やめっ……触る、なっ……んん……ぁう」 「なんで? やめてって言うわりには腰へこへこしてるよ?」 「うっ……。言う、なあっ……あんっ」  俺が抵抗すればするほど奴の熱は激しく脈打ち俺の太ももを押し上げてくる。今、自分の人生の中で初めての女みたいな声を出したから絶句する。エロゲーでしか聞いたことのないような女の感じてる高い声だ。そんな声がまさか自分の口から洩れるとは思っていなくて、その場で消えたくなった。しかもこの俺の醜態を奴は見放題なのだ。それが解せない。 「いいから素直になれって。本当に嫌なら逃げ出してるでしょ。ってことは新も乗り気なんじゃない?」  問答している間も敏感になった身体に触れられて、頭が回らなくなる。平静を保とうとしているのに、ふにゃふにゃした声しか出せない。 「うぁ……ん……。下の名前、馴れ馴れしくっ……呼ぶなあ……!」  すっ、と奴の手が忍者みたいに俺のスラックスを下ろし俺の履いていたボクサーパンツの中に手を差し込んだ。直に触れられることがなかった童貞の俺は、簡単に翻弄されてしまう。竿の部分を優しく撫でられ、先端に溜まった透明な雫を滑りにしてぐちゅぐちゅと上下に扱かれる。奴の作る人差し指と中指の輪っかの間を硬くなった竿が何度も出たり入ったりしていると、最近抜いていなかったのもあって簡単にイってしまいそうになる。 「イきそう? イっていいよ」 「やだっ……! イくわけな、いっ……」 「ふうん。じゃあいいや。こっちでイかせてあげる」  奴は俺の足の間に入れていた手を一度抜き去り、今度はスラックスもボクサーパンツも下ろしてきた。いつの間にかおしり丸出しにされた俺はマグマが沸き立つような感覚に、自分の顔を手のひらで覆った。  母ちゃん。ごめんな。俺はお嫁にもお婿さんにもいけません。これからヤられるのですから。  胸の前で十字架を切り、祈りを捧げていると冷っこい何かが双丘に塗られた。 「ひゃっ!」  我ながら乙女みたいな声が出た。奴はくくく、と忍び笑いを洩らしてから俺の腰を持ち上げて尻を天井に向けて突き出す姿勢を取らせた。  こんな屈辱的な姿勢、許さない……!  わなわなと羞恥が溢れてきて、言葉にならなかった。 「これから天国見せてあげる」  そう言った奴の目が獣のように熱を帯びていた。

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