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第8話 俺に彼氏ができたらしくて前代未聞すぎるって
「あーらた」
「うぜぇな。失せろ」
いちご狩りを経て晴れて? 恋人同士になった俺と海皇。
大学の図書館で勉強中の俺にちょっかいをかけてくるのが、いつしか日常になっていた。
「そんなに余裕しゃくしゃくってことは、ゼミのレポート書き終わったんだろうな?」
俺は手元のパソコンのキーボードを連打しながら、ゼミの課題に打ち込んでいる。その様子を見守る海皇は得意げな表情。
「優秀な俺だから、終わってるに決まってる」
「ちっ。クソうぜえ。邪魔だから消えてくんない?」
「怒るなって。俺が見てやるから」
やけに積極的な優しさを見せる海皇。
そう。こいつは少し頭がおかしい。
いちご狩りの件の後、正式に付き合うことになった。
やけに面倒見の良い海皇が俺の住むアパートに転がり込み、半同棲生活を送っている。
理由を聞けば
「お前ん家ならセックスし放題じゃん」
とのクソ発言である。
よくよく話を聞いてみれば、海皇は実家暮らしのお金持ちボーイ。
俺が襲われたあの日はたまたま両親が海外旅行へ行っていたらしい。だから俺をらくらくお持ち帰りできたのだと、勇ましく語っていた。
本当は家で勉強したいところだが、海皇がくっつき虫になって全然集中できない。
だからこうして、大学の図書館という公共の場でならさすがの海皇もセクハラしてこないだろう、という俺の計算である。
「ほらレポート見せて。んー、ここは別の表現のほうがいい。俺なら……」
カタカタカタ、とキーボードを使って勝手に俺が魂込めて書いたレポートを改変する。
「おい、勝手に触んなよ」
「なんでよ。俺がブラッシュアップしてやってるのに」
「はあ? 頼んでねえよ」
「ツンデレあらたもかわいいな」
「(怒)」
レポートはその後、海皇の的確なアドバイスによって無事に仕上げることができ教授にメールをして提出した。
「はー、腹減った」
図書館を出て、大きく伸びをした俺の影が地面に伸びていく。
「駅前のラーメン食いに行こうぜ」
こいつ基本ラーメンか肉か寿司しか誘ってこない。
「まあなんでもいい」
「じゃあ後ろ乗れよ」
「おす」
海皇がヘルメットを投げてきたのでキャッチする。
ナイスキャッチ、俺。
スポーツド下手くそなのにがんばっててえらい。
「行くぞー」
「安全運転で」
「俺が事故ったことある?」
俺が海皇のバイクの後ろに乗って、そう警告を与えるとにやりと笑ってヘルメットを被った。俺も慌てて被る。
「ほら、俺に掴まって。落ちても助けに戻らないからな」
「やっぱクソだなお前」
ぎゅっ、と海皇の腹に手を回してくっつく。
バイクが走り出し、振動が全身に響く。
連れのバイクに乗ってラーメン食いに行くとか、生きてて想像したことすらなかった。
けど、意外と楽しいもんなんだな。
バイクを走らせる海皇はどことなく大人っぽく見えるし、ライダーって感じがする。
俺と喋る時は馬鹿な時があるのに、バイクに黙って乗せてたら様になるんだから、容姿が整っていることは素直に認める心を持ちたい。
彼氏とラーメン食うとかどんなリア充だよ。
前はリア充爆発しろとか思ってる側だったけど、案外悪くないか。
どうか俺らは爆発しませんように、とバイクの振動で高鳴る心臓に祈りを捧げた。
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