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幸せ*
ぐちゅりと水音を立てながら、青年がその長い指で男のナカを掻き回す。
「ぅ……く……、ん……っ」
男は手の甲で自身の口を塞ぐようにして、必死に声を殺している。
三本の指を揃えるようにして男の敏感な部分を押し込むと、男の体がびくりと跳ねた。
「んんっ……っ……!」
息が上がるのを整えきれず熱を持ってゆく身体に、男の肌はじわりと赤く染めあげられる。
「カース……気持ちいい?」
「っ、聞く、な……っ!」
リンデルに耳元で囁かれて、男は一層顔を赤く染めると乱れる呼吸の隙間から返した。
そんな男が愛しくて、リンデルはぐいと奥まで指を押し込む。
「んんっっっ! ぅ……ん……っ」
「もう、入れてもいいかな?」
「っ……、ん……っ」
声を抑えながらも、小さく頷いて応える男の額にリンデルはそっと口付ける。
男のじわりと汗ばんだ肌は、やはりどこか花のような香りがする。
どうしてこの男からは、いつもいい香りがするんだろう。
隊員達も俺も、汗をかけばすぐ汗臭くなってしまうのに。
リンデルは不思議に思いつつも、目の前で追い詰められつつある男に尋ねるのは難しそうだと判断して、またの機会に尋ねてみようと思う。
そう。まだ明日も、その次も、この男と二人きりで過ごせるはずだから。
青年は喜びに口端を緩ませながら、そっと自身を男の体内へと滑り込ませる。
「ぅぁっ、あっ、んんんっっ!」
ずぶずぶと入り込むと、そこはあたたかく柔らかくリンデルへ吸い付いてくる。
ぎゅっと目を閉じて快感をやり過ごそうとする男がいじらしくて青年はその目元に口付ける。
「カース……俺を見て……?」
囁かれて、黒い睫毛が震える。
荒い息に犯されながらも必死でリンデルに応えようとその目を開こうとする姿が健気で、青年は堪えきれず腰を揺らした。
「んぁっ、つ、ぅ……っ、ふ、んんんっっ!」
ようやく薄っすらと開かれた瞳から、滲んでいた涙が一粒零れ落ちる。
男の口端から、飲み込みきれなかった雫が溢れて顎へと伝う。
今は朱に染まった浅黒い肌に、細い黒髪が濡れて張り付く様も、実に色っぽいとリンデルは思う。
「カース……すごい、えっちな顔してる……」
「……っっ!」
言葉にはならなかったが、男の眼光に「言うな」と訴えられて、リンデルは肩をすくめる。
けれど、そんな風に恥ずかしがる姿もまた、青年にはたまらなく愛しい。
男を愛しいと思うほどに熱くなる身体の芯で、青年は思うままに男を貫いた。
「ふ、ぅうぅっ、く、ぅ、ぅぁぁあああっっ!」
堪えきれずに男が漏らした声が、リンデルの耳に入る。
リンデルは男の両足をぐいと持ち上げると、さらに奥へとそれを突き入れた。
「ぁっ、は、っ……ぁああぁんんっっ!!」
びくりと大きく身体を震わせる男の頬を、涙の粒が転がり落ちる。
切なげに眉を寄せて、男がそれでもリンデルを見ようとしている姿に、リンデルは真っ直ぐな愛を感じて息が詰まる。
「カース……好き……。大好き……。もっと奥……行ってもいい……?」
溢れる想いを言葉に変えながら、頬を桃色に染めてリンデルが尋ねる。
「……っ、ぅ……」
男は苦しげな表情をほんの少し緩めて、視線で青年を受け入れる。
「痛かったり、苦しかったら……、無理しないで、言ってね……?」
リンデルは気遣う言葉をかけつつも、男の脚を自身の肩にかけ、男を押し潰すようにじわりと体重を乗せながら、更なる奥へと侵入を試みる。
「んっ……ぁっ……ふ、ぁっ」
未だかつて触れられたことのない部分にまで押し入られ、男が目を見開いて小さく跳ねる。
あの男も小さい方ではなかったが、リンデルのそれはさらに大きい。しかも、長さが……。
男が考えられたのは、そこまでだった。
「んぅ、あっ、あああああああっ!!」
ゴツンと骨に当たったかのような感触と同時に、全身に電流が流れるようなビリッとした刺激が広がる。
「ぅああああぁぁぁああああああぁぁっっっっっ!!!」
男の内側が勝手に収縮を始める。
「あぁっ……、カースの、ナカ……、すっごい、きつ、い……っっ」
ぎゅうぎゅうと締め付けられて、リンデルが声を漏らす。
「くぅっっっぅぅぅぅぅぅっっっっ!! んんんんんっっっ!!!」
男はビクビクと激しく痙攣する体をどうする事も出来ず、ただ歯を食いしばって強烈な快感に耐えている。
「んっ、こんな……、締めたら、俺、イっちゃ、ぅ、よ……っ」
リンデルがじわりと汗を浮かべて、ゆるゆると動かしていたそれをさらに早める。
リンデルが動く度、男の嬌声が止めどなく溢れた。
ゴツゴツと奥を抉られて、その度甘く広がる幸せな熱に男は翻弄される。
こんなのは知らない。
奥の奥まで犯されて、それでもまだ、この青年が欲しいなんて。
もっともっとと縋りつきたくなるなんて。
「あっ、んんっ、リン、デルっあっぁぁぁああああっっっ!!」
男は震える指先を青年へのばす。まるで助けを求めるように。
こんな激しい快感、耐えきれる筈がない。
けれど男は意識を失いたくなかった。
この青年を、こんなところで……、俺以外に話し相手もいないようなところで、一人にしたくない。
「も、これ、ぃ、……っ、やめ……っっ、あぁぁぁぁっっ!」
リンデルは金色の瞳を滲ませると、男の手に頬を寄せる。
言葉こそ否定的だったが、リンデルの耳に届く男の声は、痛みや苦痛を宿したものでは無かった。
それどころか、甘く切なげなその声は、リンデルには自分を求めてくれているように聞こえた。
大丈夫だよ。とでも言うように、青年は優しく微笑むと、男にとって絶望的な言葉を告げた。
「んっ……イクよ……っ」
「まっ、あっ、ぁぁああああんんんんんっっ、んんんああああぁっ!!」
ひとまわり大きく弾けんばかりに膨らんだ青年のそれで、男のナカは限界まで押し広げられる。激しさを増すその動きで、ゴリゴリと奥まで貫かれて、男の視界が白色に滲む。
(ダメだ……、リンデルを……)
男が必死で金色の瞳を見上げる。
「あぁ、カース……っ、イク……っ、ぁああっっんんんんんっ!」
リンデルの物がどくりと脈を打ち、男のナカへ焼け付くほどの熱さが広がる。
「くぅんんんっっっぁぁああああぁぁぁぁあぁんんんんんんんんんんっっっ!!!」
その衝撃に、男の視界はチカチカと明滅し、白色に青年の顔が滲んで溶ける。
(リンデルを……、置い、て、行きたく……な…………ぃ………………)
悔しさに噛み締めた奥歯が鳴る音は、男の耳にはもう届かなかった。
ギリッと奥歯を鳴らした男の声がぷつりと途絶えて、リンデルは顔を引き攣らせた。
「あ……、うわぁぁ……。また、カース、気絶させちゃった……」
意識を失ってもなお、男の体内は青年のそれに吸い付くようにビクビクと痙攣を繰り返している。
そんな姿がどうにもたまらなく愛しくて、リンデルはしばし男の顔をじっと見つめていた。
しかし、脚を持ち上げたこの姿勢のままでは鬱血してしまうだろう。
リンデルは残念そうに、渋々自身のそれを抜き取ると男の足をそっと下ろす。
「ぅ……ん……」
微かに甘い声を上げて、男が小さく痙攣するのを見て、リンデルはまた自身に力が戻ってくるのを感じる。
男に倣って手拭いで自身と男のそれを拭うも、男のそれからは殆ど体液は出ていなかった。
一方でリンデルが入っていたそこからは、どろりとした液体が止めどなく溢れ出す。
拭き取ろうとそこを擦る度に、男は小さく肩を揺らす。
乱れた黒髪がかかる口元から熱い息が漏れるのを聞いて、リンデルはごくりと喉を鳴らした。
「ええと……、寝てるのに、ごめん……」
謝りながらも、青年は先程のカースの言葉を胸に蘇らせていた。
俺なら何をしても許してくれると、この男は言った。
ずっと昔、盗賊団にいた頃、わざとではなかったがこの男を酷く激昂させるようなことをした事があった。
それでも、男はリンデルを傷付ける事なく、ただ許してくれた。
今日だってそうだ。
半年も待たせてしまったのに、カースは俺を責めたりしなかった。
どうしてこんなに、彼は俺に寛容なんだろう。
どうしてこんなに、彼に応えきれない俺を、愛してくれるんだろう。
その理由は分からないままだったが、男の愛と、自分の男への愛は紛れもなくここにあった。
リンデルは男を布団の真ん中へ横向きに寝かせると、自分もその隣へと滑り込む。
そして肩まで布団をかけると、男の背にぴたりとくっついた。
自分の脚を男の脚の間に割り込ませ、後ろ側をそっと撫でる。
そこはまだ熱を帯びて柔らかく、触れれば小さくピクリと反応した。
「……カース……」
リンデルは僅かに上擦った声で男の名を呼ぶと、既に反り返るほどに勃ち上がってしまったそれを、男の後ろへとあてがい静かに侵入する。
「……っ、う……ん……っ」
意識の戻らない男が、それでも小さく震えリンデルを受け入れる。
それがあまりに嬉しくて、リンデルは僅かに腰を揺らしてしまう。
びくりと男の肩が跳ね、息が揺れる。
「ん……ごめん。続きは起きたら、しようね……」
男にそう囁くと、リンデルは目を閉じた。
男の髪から、ふわりとリンデルの大好きな香りがする。
花のような香りに男の汗の匂いが混じった、この香りがリンデルはたまらなく好きだった。
「カースの匂い……大好き……」
男を抱き締めながら、男の内側に包まれて、そのあたたかさを全身で感じる。
きっと目覚めたら、またカースに呆れられてしまうんだろう。
やれやれといった顔で俺を見て、宝石みたいな瞳を細めて、困ったように笑うんだ。
そして、それでも俺を許してくれて、優しくキスをしてくれる。
「ふふ。楽しみだなぁ……」
青年は愛に満たされた気持ちのまま、ふかふかのベッドでゆっくりと眠りについた。
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