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仕える者*
戸惑いを瞳に浮かべたまま、答えられずにいる従者の頬をリンデルは長い指で優しく撫でた。
指先にパチパチと痛みを感じるのは、この従者がその分自分の穢れを引き受けてくれたからだ。
「分からないならいいんだよ、そんなに考え込まないで」
苦笑するようにリンデルは言うと、ロッソの口を覆う手を自分の指で優しく絡めて外す。
反応がわかりやすくなったところで、手前の部分をぐりぐりと探るように突く。
「ふ、あ、っ、んんっっ、ぅ……」
突く度にびくりとロッソの腰が跳ねる部分を見つけると、そこを繰り返し突いた。
「あっ、ぁあっ、ぅぁっっ」
切なげな甘い声に、ロッソは思わずもう片方の手で口を覆う。
こんな声が自分から出て来るなんて、思ってもいなかった。
リンデルは下だけしか脱いでいないロッソの上着を外そうとして、首を傾げる。
「この服、どうやって脱がしたらいいの?」
「じ、ぶん……で、脱ぎます……っ」
上がった息の合間から必死で答えて、ロッソが服を脱ぐ。
ボタンの無い上着は隠しホックになっていたのだなとリンデルはその慣れた仕草をぼんやり眺めた。
自分よりもひとまわり小さな手。
それなのに、自分よりいつも働き者で、サラサラと綺麗な字を書き、時にナイフを投げ、何くれとなく世話を焼いて俺を助けてくれた。
こんなに、十五年以上、ずっと傍にいたのに。
寝食も、戦闘も、全てを共にしてきたのに。
リンデルは、この従者の自分への気持ちを、今日初めて知った。
「カースは……知ってたのかな……」
「え?」
「ロッソの気持ち……」
ぽつりと零したリンデルの呟きに、ロッソは苦笑する。
「ええ、この方はとっくに……、お分かりだったようです……」
二人は、うつ伏せるように昏倒している男を見た。
その眉間には深い皺が寄せられている。
リンデルはそんな男へ今すぐ抱きつきたい衝動を、グッと堪える。
視線を戻し、ロッソのはだけた服の隙間へ長い指を差し入れた。
ピクリと小さく揺れる肩を、リンデルはそっと撫でる。
パチッと指先が小さく痛んだ。
カースは知っていた。
それでもロッソをあの家へ迎え入れた。
その上で、俺のあの質問に、あんな答えをくれたんだ……。
カースはとっくに覚悟をしてくれてた。
まさかカースがロッソごと、俺を愛そうとしてくれてたなんて……。
リンデルは、自分の及ばないところまでも、カースが自分を思い遣ってくれていた事がたまらなく嬉しかった。
リンデルのそれがさらに熱を持ち、ロッソの中を優しく擦る。
同時に、リンデルの長い指がロッソの胸の突起を捏ね回した。
ゾクゾクと甘い感覚が、止めどなくロッソを襲う。
ロッソの内側がリンデルのそれをもっともっとと奥へ誘う。
誘われるまま、リンデルは奥へと深く沈み込んだ。
ロッソは両手で必死に口を押さえたが、くぐもった声は抑えきれずいくつもいくつも夜空へと溶ける。
「……そんな、にっ、気持ち、いい……? っ、よかっ、た……っ」
ぽた。とリンデルの汗がロッソの頬に落ちる。
誘われるように見上げれば、リンデルはその金色の髪を月光に煌めかせ、頬を桃色に染めてロッソを愛しげに見つめていた。
愛されている。と感じた。
生まれて……初めて。
自分は今、一人の人間として、この人に真っ直ぐ愛を注がれている。
喜びに、涙が溢れて止まらない。
「ぁ……、あ……、ぁああっ……」
ロッソは滲む視界にリンデルの姿が霞むのが怖くて、震える両手を真上へ伸ばした。
最愛の主人へと。
「ロッソ……」
金色の瞳がゆるりと細められ、愛しげに従者の名を呼ぶ。
パチチっと軽い痛みとともに、ロッソの両手がリンデルの頬を包む。
リンデルはそれに応えるように片手に頬を擦り寄せると、もう片方の手に口付けた。
「ぅ、ん、ぁっっっっ、ぁ、ぁぁぁぁぁぁぁぁあっっ」
びくりとロッソの体が跳ねる。
求める事を許され、応えてもらえた悦びに、ロッソの内側が強く主人を抱き締める。
もう二度と、離すまいとするかのように。
搾り取られそうなその快感に、リンデルがグッと眉を寄せ、囁く。
「ロッソ……っ、イクよ……っ」
収縮の最中にずくりとナカが強引に広げられ、強烈な快感がロッソの背を駆け上る。
ひとまわり大きくなったそれで力強く奥を突かれ、その度ロッソは仰け反り喘いだ。
「ぁっ、うぁっ、んんんぅぅぁぁああぁぁっっっっ」
まだこれ以上快感を得られるというのか、身体はさらにそれを受け止めては反応する。
「ぁ、ぁぁぁっ、ぁっ、ぅぁぁぁっ」
ビクビクと痙攣する全身に、ロッソは身体の自由を奪われる。
一際奥まで突かれ、リンデルが動きを止める。
「ん、っぁああああっっ!!」
リンデルは喉をそらすと、青年らしい高い声を夜空へ上げ、達した。
熱いものがロッソの中へと勢いよく吐き出される。
「はっ、ぁっ、ぅぅんんっ、んんっ、ぁぁぁぁぁぁぁんっっっ」
ロッソは涙をボロボロ溢しながら、悦びに打ち震える。
内へ内へと痙攣する身体は、まるで愛する主人にいただいたそれを、一滴もこぼすまいとしているように思えた。
「ぅ……っ、ふぅ……っ、んっ……」
リンデルが軽く肩で息をしながら、ロッソを見下ろしつつ手の甲で汗を拭う。
リンテルの下で、ロッソは真っ赤な顔をして、まだ小さく痙攣を繰り返していた。
「……っ、ぅ……っ、んっ、ふ……っ」
その痙攣はリンデルのものを大事そうに包んだまま優しく刺激する。
青年は、なんだか嬉しくなって、長い指でロッソの目にかかる前髪をそっと分けた。
同じ黒髪でも、カースの細くて柔らかい髪とは違い、張りのあるサラサラとした髪は手を離すとまた元の場所へ戻ろうとする。
それをもう一度すくって持ち上げたまま押さえると、普段隠されがちな目元が月光に照らされてハッキリ見えた。
今は紅く色付いた白い肌も、どこまでも真っ直ぐな黒髪も、底が見えない黒い瞳も、綺麗だなとリンデルは思う。
「ロッソ……」
名を呼ばれ、止まない快楽に翻弄されていたロッソが伏せていた瞳をなんとか上げると、そこには月光を背に受けてこちらを愛しげに見つめる主人の姿があった。
「……っ……」
ロッソは胸に湧き上がる感情をどうしたら良いのか分からず、切なげに眉を寄せた。
黒い瞳からほろりと一粒零れた雫を、主人は優しく指で拭う。
花のように微笑み、優しい声でリンデルは囁いた。
「ふふ。ロッソのナカ、まだビクビクしてるよ。……気持ち良かった?」
主人の他意のない言葉に、ロッソは激しく羞恥心を煽られる。
視線を逸らそうにもロッソはリンデルに前髪を抑えられていて、それを振り払うなど考えられなかった。
他に隠れるところもなく、ただロッソは目を伏せた。
耳まで赤くなってしまった顔も、恥ずかしさに滲んだ瞳も、全てを主人に暴かれている。
その事実が、ロッソの内側をさらに熱くさせる。
「んっ……っ、ぅ……」
きゅうっと優しく締められて、リンデルは小さく首を傾げて尋ねる。
「まだ感じてるの……?」
「……っ」
ロッソはどうしようもなく顔を真っ赤にして、ぎゅっと目を閉じる。
「ごめん。まだ今は戦地だから、これ以上はやめとこう……」
リンデルは申し訳なさそうに謝りつつ、体を起こした。
ずるりとそれを奥から引き抜かれて、ロッソは冷え冷えとした喪失感を感じながらも慌てて起き上がる。
時折肩を震わせながらも、懸命に主人のそれを拭き着衣の世話を焼こうとする甲斐甲斐しい従者に、リンデルは背を丸めて耳元で囁いた。
「また帰ったら、続きをしてあげるね」
「!?」
ロッソは囁かれた方の耳を押さえながら、驚いた顔で主人を見る。
主人はキョトンと毒気のない顔でこちらを見ていた。
もう、これが最後なのだと覚悟した。
この記憶を一生忘れず、胸に刻んで生きてゆこうと思ったところだった……。
それを、こんなにあっさりと覆されて、ロッソは混乱した頭を抱えて蹲る。
「え? ロッソ、大丈夫……?」
頭上で主人が焦りを浮かべている。
「……大丈夫では、ありません……っ」
「えっ、どこか痛……頭? 頭痛い??」
心配そうに、リンデルがロッソの頭をそうっと撫でる。
ロッソの頭の中は、もう先程の主人の言葉ではち切れそうだった。
ここから無事に帰還すれば……。
私はまた、この方に、愛を注いでいただけると……?
それは本当なのだろうか。
にわかに信じられないほどに、主人の言葉は魅力的だった。
「……本当に……」
「?」
リンデルが、ロッソの微かな言葉を聞き取れず首を傾げる。
「……本当に、村へ戻ったらまた……許していただけるのですか……?」
「うん。あ。カースが嫌じゃなかったら……」
そこまで言ってから、リンデルは長い指を口元に寄せて考えるような仕草を見せる。
「んー。違うか。カースが許してくれれば。だね」
言われてロッソは肩を落とす。
そんな事、聞くまでもない。
今回が特殊なケースだっただけだ。
私がもしあの男の立場なら、大切なこの方を誰にも触れさせたくないと思うに決まっている。
すっかりしょぼくれたまま自身の衣服を整えているロッソへ、リンデルは笑ってみせる。
「そんなにガッカリしなくても、多分大丈夫だよ」
リンデルの屈託のない笑顔に、ロッソは懐疑的ながらもほんの少しの期待をしてしまう。
「……それでは、なんとしても無事帰還しなくてはなりませんね」
微笑みを返すと、リンデルも「そうだね」と笑った。
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