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四十四、愛しています

 触れ合う指先はいつまでもあつくて。  いつまでも繋がっていたいと思ってしまう。  幾度となく身体を重ねているのに、毎回はじめてのような恥じらいを見せてくれるので、銀花(ぎんか)はその度に(ゆずりは)を優しく宥め、言葉を尽くすようにしていた。 「楪、よく頑張ってくれた。おかげで溜まっていた穢れはすべて浄化されたようだ」  はい、と掠れた細い声が返ってくる。当たり前だ。あんなに何度も交われば、普段大人しい楪でもさすがに声を出さずにはいられないだろう。拒むということをしないどころか、銀花のために頑張ろうとする姿に応えないわけにはいかなかった。  おかげでこのような状態になってしまっているわけだが、うとうととしている楪の身体を拭いたり整えてあげることが、銀花の楽しみでもあった。 「楪、そのままでいいので聞いて欲しい」  手を動かしながら、ずっと伝えたかったことを言葉にし始める。こくり、とゆっくり頷いた楪の表情は未だ夢うつつのように思える。 「昼にも話したが、氷雨(ひさめ)が神狐として成長したら、一度この山を離れることになるだろう。水月(みなづき)様や黒鴉(くろあ)蛭子(ヒルコ)たちともしばらく逢えなくなる。それでも俺と共にいてくれるか?」 「······お別れの日が、近いの····ですね」  ぼんやりとした瞳に銀花を映して、楪は少しだけ哀しそうな顔をした。情事の終わった寝床の上で楪はじっと見つめてくる。  その姿は淫らなのにどこか美しい。肩から半分ずれ落ちている単衣。赤く腫れた唇。潤んだ瞳に残る涙の痕。(うなじ)にある、(つがい)の印である三日月の痣。首筋や太ももに残った赤い印も噛み痕もぜんぶ、銀花が楪を愛した証だった。 「私、は······銀花様の花嫁です」 「ああ、そうだな。俺の可愛い花嫁だ」 「氷雨様、は······可愛い銀花様の分身、です」 「ああ、そうだな。目に入れても痛くない」  楪は眠たそうに瞼を半分閉じながらも、銀花をまっすぐに見つめてそう言った。 (しかしその言い方だと、俺が可愛いということになるが······まあ、いいか)  楪の言うことに関して、細かいことは気にならない銀花は、今日も俺の花嫁は可愛いな、と乱れた衣を直し始める。衣にかけられたその指先をぎゅっと掴んで、ふふっと小さく笑う楪は、おそらく眠りに落ちる一歩手前だろう。 「······銀花様、愛しています」 「俺も、この世で一番楪を愛している」 「私も、銀花様が一番、です」 「ありがとう、楪」  愛して欲しい。そう、ずっと昔に願った。今は、こうやって毎日のようにお互いに伝え合う。その感情を楪が理解した時、ふたりはやっとひとつになった。そうなるまでかなり時間を要したが、銀花は辛抱強く待ったのだ。 「ずっと、一緒、······です」 「ああ、そうだな。ずっと一緒だ」  愛しい花嫁の唇にそっと口付けをし、何度も誓い合った永遠を約束する。 「命が尽きるその時まで、お前を愛し続ける」  何度も何度も。何度でも。繰り返す、言葉。  唯一無二の番である、愛しいひと。  どうか、ずっと傍にいて欲しい。  いつか朽ちてしまう、その瞬間まで。

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