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第3話 ホロス
「え~今日は、自分の戦艦を管理しておけ。
それにあたって戦艦と艦隊の説明をする」
岩谷が黒板にかつかつと音を立てながらチョークで文字を記していく。
「戦艦っていうのは、俺達パイロットがスぺクタルを遠隔操作をする部屋で、搭乗用のメットや操縦席が完備されている部屋だ。各機体ごとに部屋が決まっている。仮眠用のベッドもあるし、トイレに風呂、軽食を取るための小型の冷蔵庫なんかも完備されてる。この学校の敷地内にビルがあるだろ。アレが『戦艦ビル』だ。
そして戦艦に必要な艦隊の隊員たちの為のモニターや席も用意してある」
岩谷は“戦艦”“艦隊”という文字をぐるぐると丸で囲む。
「お前らには、いちパイロットとして活躍する以前に、艦隊の隊長の役目を担ってもらわねばならない。
隊員……“ホロス”たちを抱えて自分の力を最大限に引き伸ばす必要があるからだ」
隊員、と大きな文字で下に書き加えた岩谷は、その下に“ホロス”についての説明も書き連ねていく。
「“ホロス”というのは、この学校に通うパイロットの補助を行う者たちのことだ。俺達パイロットの力を増強したり、戦闘後パイロットの壊れた精神を癒す能力を持っている。彼らも適合率でランクが決まっているが……自分よりランクの高い者と艦隊を組んでも、片方の力が余ってしまったり、逆に足りなかったりするから、“ホロス”と組むときはお互いの意思をきちんと尊重して決めろよ」
ここまでは、日本国民であればほとんどの人間が知っていることだ。
中学で適合検査が行われるため、その時に説明を受けるからだ。
スぺクタル搭乗者育成機関養成学校。
ここに通うのは、パイロット……俺達スぺクタルの操縦者と、ホロス……操縦者の補助をする役目の二通りだ。
そして、どちらも国の検診で適合率がCランク以上だった場合にのみ徴兵され、最高ランクはSランクだ。
パイロットよりもホロスの方が人数が多く、ホロスの組の方が学年ではクラス数が多い。
一つの艦隊に一人の隊長兼パイロット、そして複数人の隊員……ホロスが所属しているという図が一般的だ。
「“ホロス”が持つパイロットの補助能力の発動については、“ホロス”側でのみ授業を行っている。詳しいことは艦隊にいれたホロスに直接教えてもらえ。パイロットにできることはスぺクタルの操縦、そして艦隊の管理とケアだ。いつまでたってもホロスと組めなければ自分一人でジリ貧の戦闘を強いられることになるから、速い内にホロスと交流を持っておくように。
それじゃあ今から自分の戦艦へそれぞれ散れ。戦艦の管理が済んだらホロスのクラスに艦隊の交渉をしに行くこと。高ランクのホロスはすぐに他のパイロットに持ってかれちまうからさっさとしろよ」
授業を終えて岩谷が去って行くとクラスメイト達は自分の戦艦に向かうべく立ち上がり始める。
俺も人の流れに逆らわず、『戦艦ビル』へと向かう。
途中で他のクラスのパイロットたちと混じり合い、更に列を乱れさせながらビルへと向かう。
エレベーターに乗ると31階のボタンを押す。50階建てのこの高層ビルは、全てが戦艦となっているようだった。
入学初日に配布された携帯電話で『雪椿』の搭乗証のバーコードを読み込むと、31階のE室が『雪椿』の戦艦だと表示された。
31階のE室に辿り着くと搭乗証をカードキーとして部屋を開ける。
……すると、部屋は電気が点いている。
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