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第4話 Sランク
「あれ?電気が点いてる……」
自動で電気が点く部屋なのだろうか?そう思ったが、入り口付近に電気用であろうスイッチがあるのでおそらく違う。
「……あ」
トイレと風呂を通り越して部屋の中に進んでいくと、人の声がした。
横を向くと……そこには、麗しい。という表現がぴったりな人間が、立っていた。
ミルクベージュの柔らかな髪。色素の薄い瞳。柔らかそうな薄く色づいた唇。制服の上からでもわかる華奢で長い手足。人形のような男がそこには佇んでいた。
「あの……ここ、どうやって入ったんですか?」
「……君こそ、どうして?」
疑問を口にした俺に、質問返しされる。
どうしてと言われても、自分の戦艦だからとしか言いようがないが。
「俺は、ここの戦艦――『雪椿』の、隊長で、パイロットです」
「えっ……」
「アンタは、一体?」
「僕は……僕は、『雪椿』のパイロットの……弟です」
「はっ?」
勿論、この男が俺の弟なわけではない。
「いえ……君が来たということは、もう……先代、なのでしょうね。この『雪椿』に過去に搭乗し、雪椿の機体と共に精神を破壊されて今は施設で入院している兄が、僕にはいるんです。そして僕は……ホロス。今年、一年のホロスとしてこの学校にやってきたばかりの、白薄 景斗 と申します」
「ど、どうも……パイロットの、倉海 美駒 です」
俺は男――白薄景斗と挨拶を交わす。
「それで、あのお……どうやってここに入ったんですか?パイロットの許可なしに戦艦に入れるなんて、聞いたことないですけど」
「……た」
「え?なんて?」
「嘘をつきました」
色素の薄い瞳が、俺の視線とかち合う。
「僕は、『雪椿』の艦隊隊員であり、あなたのホロスであると。そうすれば……ほら」
白薄はするりと首元からカードを取り出す。
それは紛れもない『雪椿』搭乗証だった。
「なっ……そんなバカな。学校には、パイロットとホロスが同意のうえで申請書を出さないとホロスに搭乗証は配られないはずですよね」
「……『雪椿』には、エンジニアのおじさんたちが付いていたでしょう。僕は『雪椿』に直接会いに行って、隊員であると嘘をついて、おじさんに搭乗証を貰いました。だから、学校にはまだ申請していません」
お、おっちゃん~!!
俺は内心頭を抱える。
ホロスを隊員にするなんて慎重に決めなければいけないことを、ホロス側が強行突破できる手段があるなんて思ってもみなかった。
それでなくとも、『雪椿』は一度廃棄寸前まで追い込まれたボロスぺクタルなのだ。隊員であるホロスまで選ばずに抱えるなんて俺には到底、出来そうも無かった。
「そ、それなら今からでも遅くないですよ。学校に搭乗証を返して、きちんとしたパイロットと契約を結びなおしたらどうですか」
「どうしてですか。僕は、兄が乗っていたこの『雪椿』を守りたいんです」
「そ、そう言われても……」
「では、これではどうですか」
白薄は肩から掛けていたスクールバッグをガサゴソとまさぐると、ファイルを取り出した。
そして俺に見せつけるようにファイルを掲げる。
そこに書いてあったのは……。
「……Sランク?!」
「僕はSランクのホロスです。どんなパイロットの方が相手でも隊員として能力を発揮できると思いますが」
ホロスにも、俺達パイロットと同じように適合率診断書が配られていたようだった。
そしてそこには、白薄が紛れもなくSランクのホロスであるという判が押されていた。
「お、俺は、Bランクのごくごく普通のパイロットなんですけど……」
「でしたら僕を隊員にしてくだされば、僕の力で君の力を最大限まで引き延ばして見せます。だから僕を、『雪椿』に乗せてください」
「い、いいんですか?!」
「もちろんです」
立場が一瞬にして逆転してしまった。
しかし、SランクのホロスがBランクのパイロットの元に下ってくることなんてそうそう無いだろう。
岩谷は、「片方の力が余ってしまったり――」と説明していたが、白薄の力が最大限発揮できずとも、俺の最大の味方になることには変わりない。
このオンボロのスぺクタルに搭乗するにあたって人選だけでも良ければまだ俺にも活躍できる見込みがあるんじゃないだろうか。
「交渉成立。僕のことは、景斗と呼んでください。よろしくお願いします、美駒君」
「ああ。よろしく!」
こうして戦艦『雪椿』艦隊隊員一号は、決定したのであった。
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