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第8話 Bランク
「っていっても、同じくらいのランクのパイロットなんか……」
そう呟いたそいつは、ふと俺の顔をまじまじと見つめる。
「……何か?」
「……顔は、悪くないよな……」
「な、何が??」
「ねえ、君。適合率診断書、見せてよ」
「な、何で??」
「良いから早く!!」
バッと掌をこちらに突き出して要求され、俺は慌ててカバンの中を探る。
パイロットにしろホロスにしろ、いつどこで艦隊に所属することになるかわからない。そのため、皆適合率診断書はいつも鞄の中に持ち歩けと教師たちに口酸っぱく言い聞かされている。
俺は早くとまた急かされ、適合率診断書を相手に渡した。
そこにはでかでかとBの判が押してある。
「えーとなになに……適合率B……操縦能力A+……基礎知識C……体力A+……決断力A……応用力Bか……」
「……えーと。そんなの見て、どうするんですか?」
「……僕、周防 瑞貴 。君の艦隊に入れてよ」
「は?」
「もし何か不満があれば僕の適合率診断書も見せるけど」
「い……いやそれは……まあ見せてくれるなら見るけど」
「ていうか君、名前は?」
「倉海美駒と言います……」
「ふうん。美駒。君くらいの能力なら僕、Bランクでも艦隊に入りたいって思うな。正直、伊集院君に相手にされるなんて、実際無理だと思ってたし……君でいいや。僕のことは瑞貴って呼んでね」
「い、いいやと言われましても……」
「何。駄目なの?」
「いや、駄目じゃないですが」
「じゃあ入れてよ。僕、ホロスとしての仕事もちゃんとするし。下手な方じゃないと、自分では思ってるし。戦闘中の補助に関しては……ほら」
瑞貴が、伊集院に見せる為だったのか、小脇に抱えていたファイルをこちらに見せる。
俺達パイロットと同じようにグラフで示されたその能力値は――
「補助指揮能力……A+……」
「そ。僕だって適合率こそBランクだけど、成績なら高ランクの奴らにも負けないんだから!」
「それなら……うーん……よろしくお願いします?」
「なんで疑問形なんだよ。じゃ、このまま艦隊申請に行こうよ」
「うん……わかった。よろしくな、瑞貴」
俺はかくして、3人目の艦隊隊員を獲得したのであった。
「ところで瑞貴」
「何?」
「さっき言ってたホロスの仕事って奴だけど……」
「あ、申請書取ってきて。僕申請窓口来たことなくてわかんないから」
「お、おう」
問いかけたところで、申請所に着いてしまった。
瑞貴の一声で俺は申請書を窓口前の筆記スペースへ取りに行く。
「……わかってるってことは、もう隊員が何人かいるんだ?」
「まあ、二人ほど、訳ありで……」
「はあ?訳ありのホロスお抱えってわけ?何それ。やっぱパイロット選び間違ったかなぁ……でもまあイケメンだし……」
ぼやく瑞貴の傍らで俺は必要事項を記入していく。
結局、ホロスの仕事というのは……おそらく御津八が言っていた「ホロスの何か」なのだろう。
でも、艦隊の隊員も順調に増えているし、まあいいか。と、俺は疑問を先延ばしにすることにした。
「瑞貴、こことここと、ここ、同意に丸付けて……サインも、こことここに……」
「うんっ」
伊集院にフラれてぶつかってきたときはなんだコイツと思ったものだが、こうして素直にしていれば案外可愛いものである。
人形のような景斗や、男前な御津八先輩とも違うタイプで、可愛い男というのもまた珍しい。
申請書を出して暫く、窓口に呼ばれ、瑞貴は『雪椿』の搭乗証を受け取った。
「やったっ!!僕の搭乗証!!」
喜ぶ瑞貴と共に俺は申請所を後にした。
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