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第27話 相性診断

「倉海、ちょっといいか?」  そんな折に、岩谷から声がかかったのはある日の放課後だった。 「はい?……俺、何かしましたっけ」 「いや、今回はそうじゃない。別件だ。とにかく付いてきてくれ」 「わかりました」  俺は大人しく岩谷に付いて行く。  連れてこられたのは、保健室だった。 「相手は……まだみたいだな。ちょっとここで待っててくれ。適当な椅子、使ってくれていいから」 「はい」  俺は中央に花を生けられた花瓶がある丸いテーブルの周りに仕舞われていた椅子を一つ引き出して座る。  と、保健室のベッドと向き合う形になってしまい、ベッドの上で三角座りで本を読んでいた男子生徒と目が合う。  堅いオーラを身に纏っているが、整った顔立ちの、女子に人気が出そうな感じのイケメンだ。 「……こんにちは」 「……どうも」  俺の挨拶に一言返した男は、また本に視線を移し、こちらの存在はないものとして扱うかのように顔を背けた。  静寂が保健室の中を包む。 「お待たせ、倉海」  暫くして、岩谷が一人の男子を引き連れて保健室へと帰ってきた。  何の変哲もない、平凡な、俺と同じような……でも少し俺より背の低い、男子生徒だ。  岩谷は俺の正面の椅子を男子生徒に進めると、自身も俺の隣の席に腰をおろした。 「で、本題だが……」  向かいの席で、平凡な男がごくりと唾をのむのがわかった。 「相性診断というものが、あるんだよ」 「……はい?」 「うーん……説明は難しいんだがな。いつまで経っても隊員ができないパイロットや、艦隊に所属できていないホロスの為に、学内のパイロットとホロスの相性を診断して、適合率や能力のパラメータから判断して相性の良かった相手を紹介する……っつー企画が、常設であるんだよ」  初耳である。  というか、淡先輩みたいに2年間も艦隊に所属せずにいたホロスもいたぐらいである。そんな救済措置を使ってまで艦隊に所属するホロスがいるということにも驚きだった。 「で、今回ホロス側から相性診断を受けて……相性の最もいい生徒だったのが、倉海、お前だ」 「えっ」  そこで俺が出てくるのか。ということは、目の前の彼は…… 「彼は、倉海と同じ一年のホロス。……自己紹介を」 「佐倉(さくら)亜純(あすみ)です」  平凡で、どこか気弱そうなところがあるとか、どこかクールな気配がするとか、そういった特徴があるわけでもない目の前の彼は、ただ普通に自身の名を名乗った。 「でだな、相性は相性診断で抜群と出てるんだが……倉海、お前んとこはもう隊員が何人か居たよな」 「はい。3人です」 「増やす予定は?」 「それは……あっ。そうでした。この間、艦隊でそんな話をしてて、隊員を増やそうかと……」 「じゃあ丁度いい。佐倉はまだ、どこの艦隊にも所属してないんだ。相性診断を受けたからには、艦隊に所属したいという希望でな」 「なるほど……」 「で、ランクなんだが……」  佐倉が、緊張するのが見て取れた。 「佐倉は、Cランクなんだ。Bランクの倉海とは、少しだが差がある」 「……Cランク……」  俺はぼやく。  Bランクの俺はいたって平凡なパイロットだが、Cランクともなればもっと力が落ちる。  スぺクタルの適合率はFランクからあり、Cランクからが徴兵対象だが、ホロスはパイロットよりも人口が多い分Cランクというのは学内でも最も凡庸な身分だった。 「それでもまあ、Cランクだってお前らと同じ立派な軍人の卵だ。どうだ、倉海。佐倉をお前の隊に加えてみないか」 「うーん……」  俺は悩む。  というのも、淡先輩のことがあって、除隊が簡単にできないということを知っていたからだった。  一度入ったら、抜けられない。  加えてオペレーター専属としては淡先輩がいて、セックスを伴う隊員に目の前の彼がなるとすれば、俺のホロスの力を吸い取る器がでかすぎてCランクのホロスでは眠ってしまうどころか気絶してしまうのは目に見えている。  Sランクの景斗とBランクの瑞貴が寝落ちたり気絶してしまうだけでも困っているのに、同じ境遇になりそうな人員をもう一人増やしたところで今の状況が改善されるとは思えなかった。

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