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落札相手を誘惑したら×××されました
人身売買って知ってる?
人間をまるで物みたいに金で売り買いするドグサレ行為を指す言葉ね。殊オークションに関しては、商品対象の範囲が人間のみならず獣人にも及ぶ。
獣人っていっても多種多様。かわいいうさぎさんのお耳がついてる子なんて街中でよく見るし、全身が鱗で覆われたカッコイイ爬虫類系獣人もいる。とはいえ、人口としては圧倒的に人類が多くて、獣人はもっぱらその体質に合った地域で生活している。
獣人の中でも特に希少な種族がいる。おれ、この名称だけで結構テンション上がっちゃうんだけど、竜人って知ってる? 竜と人との混血って言われてる種族。
おれさぁ。竜人好きなんだよ。まず名前がカッコ良い。竜だよ? 空飛べるんだよ? 鱗も頑強で口から火を吐くこともできる。完璧じゃん。男のロマンが詰まってる。好きにならない理由はないね。
ま、そんなふうに男なら一度は憧れる竜人をとっ捕まえてオークションに売り出してやろうっていうドグサレがいたわけ。
たまたま路地で揉めてる奴らがいると思って野次馬根性出しちゃったのが運の尽きだった。
逃げてきた竜人の親子と、なぜか一緒になって逃げるおれ。あれよあれよと言う間に捕まって親子共々檻に入れられちゃった。
そんなことある?
「本当に、本当にすみません……」
竜人親が土下座の勢いで頭を下げてくるから、おれとしては何とも言えない気分になってくる。別にそっちが悪いわけじゃないしね。じゃあ誰が悪いかっていえば人身売買するようなカスが悪い。更にいえば喧嘩を覗き見してやろって出来心を出したおれが悪い。つまり一割くらいは自業自得だから特に気にしてなかった。
竜人親子は美人な母親と、これまたバリバリに親の血を引いてるのが分かる綺麗なキッズだった。おれと同い年くらいなのに子ども育てててスゲェっていう間抜けな感想しか出てこない。
なるほどねぇ。顔が良いと狙われるのは世の常だもんね。おれもそうだよ。分かる分かる。ツラが良いから。
両手につけられた手錠は硬いけど、おれの力なら千切れる程度だった。
折を見て逃げ出そう。そう思ってたんだよね。
「レディースアンドジェントルメン!! 高貴なお客様方にご満足いただくべく、今宵も多種多様な最高級品を取り揃えました!」
オークションの司会っていうの? マイクを握りしめてノリノリで語り出すスーツ姿の男は、ステージ上から客のボルテージを煽るような文言で話し始めてた。司会の男の視線の先には客席があって、ほとんどの席が埋まってる。仮面をつけた悪趣味な貴人貴婦人たちが、ステージ上の檻に入れられたおれを見下ろしていた。
そう。おれを。
商品にされちゃったよ。
竜人の仲間だと思われてたらしいんだけど普通の人間ってことがそのあとすぐにバレた。そこで逃がしてくれればいいものを、手に入れた資源は最大限有効活用するっていうのが、このカスどものポリシーのようだった。最悪だよ。
おれ以外の出品物は全て珍品らしく、唯一ノーマルで親しみやすいおれを最初に出すことで場を温めるとか何とか言ってた。あったまるか? それなりに外見は良いほうだと自負してるけど、こちとらコソ泥という肩書しか持ってない。そう訴えたのに、オークションサイドは短時間のうちにおれのことを調べたようで売れると算段したようだった。
壇上のライトはやり過ぎなくらい眩しかった。肌まで焼かれそうなくらい強い光に目を細める。
「さぁっ! 本日も大入りで始まりました当オークションでございます。人魚や竜人、傾国の姫など取り揃えましたので、是非最後までご参加いただければと思います! それでは早速まいりましょう。本日の一品目。あ、えーと……? ああ、そうでした、そうでした。まずは人間の男性です。ただ見目麗しいだけではございません! 当方で調べたところによると、彼の名はルイ・エールアルト! 世紀の大罪人ライル・エールアルトの弟君――つまりはエールアルト男爵家の三男でございます!」
パッとしねぇなぁ。そんな観客の声が聞こえてくるようだった。大罪人本人ならまだしも弟て。しかももっと高位の貴族なら多少は反応は違っただろうが、よりにもよって男爵。微妙過ぎる。
ハァ。おれ、その肩書はもう捨てたつもりだったんだよね。
出自がバラされたところで商品価値は上がらない。観客の中には席を立つ者もいた。それはおれに失礼でしょうが。競り落としに来いよ、男爵家三男じゃあ何の役にも立たないだろうけど夜のお相手ならバッチリだからよぉ。
そんな嘆きじみた自己アピールは届かなかったようで、スタートは最安値の五十ペイから始まった。
ちなみにパン一個分の値段が二十五ペイね。
おれの価値、パン二個分しかないみたい。
ルイ・エールアルトの落札価格、百ペイ。
わーい、パン四個分になったねなんて喜べるわけがない。パン四個だぞ、パン四個。人一人を奴隷のごとく扱える権利をここでは売り買いしてるんだろうがよ。じゃあもっと出せよ、おれという最高級品に。
百ペイで落札されたのが自分が思っていたよりショックだったらしい。おれは落札価格が確定した後、大暴れに暴れた。こういうのはさ、普通怪しげなマスクをつけたアゴの尖った美青年たちが次々に値を吊り上げてウン千万だのウン十億だのを出して競り落としにかかるところだろうが。それが王道だろ。何考えてんだよ、手を挙げたのが一人だけって。石油王とか実業家スパダリとか裏社会のボスとか、誰か一人でいいから連れてこいよ!
おれは司会からマイクを奪って主張した。拘束なんてあってないようなものだった。途中からただの人間だからって理由で縄で緩く繋がれてただけだったからね。縄はもういいんだよ。そう何回も緊縛回をやってたまるか。
ステージ上の檻を引き倒してぐしゃぐしゃにしてやった。
悲鳴を上げながら観客たちは引き上げていく。ざまぁみろ。おれの価値を低く見積もったからだ。
唯一、おれに百ペイを払うと言ってくれた客だけは、悠々と座席に座って肩を震わせてた。最初、チビってんのかと思ったけど、あれ多分笑ってるわ。そうと分かったら尚更腹が立ってきて、警備の男たちに捕まるまで大立ち回りを続けた。ショーが台無しだ!と嘆くオークションのオーナーに中指を立てる。バカが。ボケカス手段で稼ぐゴミがおれは世界一嫌いなんだよ。
そんなふうに喚いているとゴツンと頭を殴られて昏倒した。
意識を失っている間におれの身柄は無事に客へ引き渡されたようだった。
目を開けたときには既にどこかの屋敷の一室だった。ハッとしてポケットに手を当てると、その中のものは無事みたいで胸を撫で下ろした。
「ルイ・エールアルト。さっきは面白いものを見せてくれてありがとう。おでこ大丈夫? 一応、治癒魔法かけておいたけど」
ソファーから勢い良く上半身を起こして、声がした方向から距離を取る。床に這いつくばるようにして姿勢を低くしていると、声をかけてきた男は軽く眉を上げるだけで危害を加える気はないことを伝えてきた。
間違いなくおれを落札した男だった。あのときは仮面をつけていたから分からなかったが、大層整った顔面をしている。おれより年上だろう。三十代くらいに見える。優しげな下がり眉が特徴的だった。
男はおれが寝かされていたソファーに腰掛けると「なにか飲む?」と聞いてくる。用意されている飲み物は酒しかないようだった。
「……いらね」
「そう警戒しなくてもいいよ。ルイに酷いことしようなんて思ってないから。そこに座って少し話でもしよう」
嫌だと言っても聞いてくれる雰囲気じゃなかった。渋々ローテーブルを挟んで反対側のソファーに座る。真正面から見ると、男の見た目はドンピシャで好みだった。頭の中がピンク色になりそうになるのを必死で耐える。それどころじゃないんだよ、今は。
そんなおれの様子を男は興味深そうに観察していた。
「なぁ。ここどこ? オークション会場じゃないよな」
「俺の別邸の一つだよ。本来なら他人は招きたくなかったんだけど仕方なくね。ひとつ聞きたいんだけど、ルイは何でオークションに出品なんてされてたの?」
「え? ああ、ちょっとヘタこいて。間抜けな理由だから話すまでもないかな」
「あ、そう」
男は手元のグラスの中身を一気に飲み干した。そうしておれを見つめる。その目が先程とは一変して真剣味を帯びているように見えて、おれは息を呑んだ。
「なに……?」
「いや、ルイは相変わらずお人好しだなと思っただけだよ。ところで、上着のポケットに入ってるのをそろそろ出してくれないかな。言っただろ。俺、家に他人を招くのはあまり好きじゃないんだ」
「何も入ってないけど」
「嘘つくな。右のポケット。さっきからそっちばかり気にして俺との話に集中してない」
思わずポケットを強く押さえつけてしまう。すると中から「ぐっ」という呻き声が聞こえてきた。
しまった。そう思ったときには手遅れだった。男はテーブルを軽々と飛び越えてきて、おれを押し倒した。
「やめろ!」
「やめないよ。先に嘘をついたルイが悪い」
男はポケットをまさぐって、すぐに目的のものを見つけ出した。指先で摘むように取り出されたのは例の竜人親子だ。おれが、魔法で小さくした二人は目前に迫った男に恐怖して悲鳴を上げる。
男はフーッと二人に息を吹きかけた。すると魔法は解けてしまう。端から効果の程は知れていた。おれは魔法使いではないし正統な修行も積んでない。だから効果は持って数時間だと踏んでいた。
オークションのケツを待ってたんじゃあ間に合わない。巻きで終わらせるために適当に暴れて閉会に持ち込んでやったわけだが、それをこいつに知られてしまったのは誤算だった。隙を見て逃すつもりだったのにと歯噛みする。
男を睨みつけ、親子との間に立ち塞がった。こんなのは柄じゃない。だが、あの場にいたということは、こいつも竜人親子を狙っていた可能性が高い。手始めに珍品……って自分では言いたくないけど、おれを落として景気付けにしたかっただけで、獣人を弄ぼうとするクソカスと同類ではないとは決して言い切れない。
男は驚いたように目を見開いた。
「ルイ。俺はその人たちに何かするつもりはないよ」
「分からねぇだろ、そんなの。おれはね、おれも大概カスだけど、ガキだの女の人に酷いことをするようなカスにだけはなるなって親から言いつけられて育ってんの」
「うーん……それは知ってるんだけどね……。あのね、俺は女の人にも、ましてや子どもにも興味ないよ。ただルイが隠し事してるみたいだったから腹が立っただけ。その人たちが望むなら――というか、ルイがそうしろって言うなら、彼女たちを元の住処に魔法で転移させてもいい」
本当かな。疑いの目で見つめていると、「わかった。じゃあもう今やってみせるから」と言い出した。
「きみたち、出身は? ミーシャ沿岸部の竜人集落?」
「あ、はい。そうです」
竜人母が答えるやいなや、男は呪文を唱えた。
“転移せよ!”
その一言だけで親子はその場から姿を消した。辺りを見渡し、カーテンの裏や、飾りで置かれた壺の中まで探したけれど親子はいなかった。
「スッゲェ。あんた転移魔法使えんの? かなり魔力を食う高等魔法じゃん」
男は脱力したようにソファーに背を預けていた。
「そうだよ。すごく疲れるから、あまり何度も使いたくないんだ。でもルイにそこらの下衆と同類だと勘違いされるなんて耐えられないし……はやく二人きりになりたかったからね」
「てっきり、おれが竜人を庇ってるのを見破った上で競り落としたんだと思ってた。じゃなきゃ、あえておれを買う理由がない」
「俺にとってルイは何よりも価値のあるものだよ。百ペイなんかじゃ足りない。……女子供にそんなことをするような奴だと思われたのは不本意だな」
「うん、まあ。あんたモテそうじゃん。お相手に不自由してなさそうだから、女遊びに飽きて、あえてアブノーマルな方向にいったんかなと」
「俺はこう見えても一途なんだよ」
むっとしたような表情を隠しもしなかった。「ごめんて」と軽く謝罪して、改めて正面に座る。
「助けてくれてありがとう。連れ出したはいいけど、その後どうやって家まで帰してやればいいのか良い案が浮かばなくて困ってた」
「別に大したことはしてないよ。今回はたったの百ペイだからね。この間の五千万に比べたら安いものだ」
「五千万?」
首を傾げると「なんでもない」と男は顔の前で手を振った。「俺のことはシモンって呼んで」
「おれはね、ルイ。エールアルトのほうは捨てた名前だから忘れていいよ」
「分かった。それで、ルイはオークションで買われて俺のものになったわけだ」
「そーね。……あ。ご主人様って呼んだほうがいい?」
おふざけ半分で訊いてみる。すると案外反応は悪くなかった。あ、そういうこと? 異性じゃなくて同性が好きなタイプ?
だからあの美人な竜人にも一切興味を示さなかったのか。
にんまりと笑うと視線を避けるようにシモンは下を向く。へぇー、ほぉー、ふーん。
マジでおれのことが欲しくて金を出したってことね。見る目あるじゃん。
シモンの足元にきて膝をつく。照れているのか実は臆病なのか、視線が泳いでいた。
「ご主人様? 恩もあることだし、少しだけならご奉仕してやってもいいよ?」
こいつの見た目、結構好きだし。
膝上に置かれた手を取って口付ける。そして顎を乗せ、小首を傾げながら見上げた。
「何してほしい?」
「……キス、してほしい」
まー、ウブなことで。もっとエゲツないことを要求されるかと思いきや、キスて。ガキの恋愛でも、もう少し進んでる。
膝に乗り上げて、少し高いところからシモンを見下ろした。目が合うようになってから、ちゅっ、と頬に口付ける。不満そうに唇を尖らせるから笑ってしまう。分かってるよ。口にしてほしいんだろ。
でもなぁ。どーしよっかなぁ。
「ご主人様が命令してくれるんだったら何だってしちゃうのになぁ」
段々と楽しくなってきて、そんなことを口走ったのが良くなかった。
「何でも?」
両手首を掴まれる。びくとも動かせなかった。
「何でも。気持ち良いことなら何でもするよ。エッチもしちゃう?」
くすくすと笑いながら思った以上に本気にした男を誘う。さっきまでは人目があったから抑えてたけど、今は二人きりだから、どんな恥ずかしいことをしても見られるのはこいつだけ。おれって結構、こういうときには相手に尽くすタイプだから。
「まずはキスしよ。さっきは意地悪しちゃってごめんね」
顔を近づけると、シモンはすぐに目を閉じた。唇同士をくっつけて、その感触を楽しむ。薄く開いた唇を舌で割って入る。
「舌出してよ。ちゅーってしたい」
奥に引っ込んだ舌を捕まえて軽く歯を立てる。驚いたように肩が震えたことに満足して、宣言通り舌先に吸いついてやった。
キスだけで気持ち良い。顔を傾けて更に密着する。お互いに主導権を握りたくて、無言の攻防が続いたけれど、勝ったのはシモンだった。厚い舌が歯列をなぞる。
たまらなくなったように、その場に引き倒されて、見上げた男は欲を孕んだ目でおれを見下ろしていた。
股間の膨らみを指先で撫でる。根本から先端に辿り着く。
「咥えてあげよっか」
性急に前をくつろげて性器を取り出す様をゆったりと観察した。おれのご主人様ったら、まるで余裕がないみたい。好みの外見の男に求められるのは悪い気がしない。
取り出された性器は驚くほど大きかった。
その先端が鼻先に当たる。匂いを嗅ぐとオス臭くて最高だった。
「ルイ。舐めて」
言われたとおりに裏筋に舌を這わせる。唾液をまとわせて先端を口に含むとシモンは気持ち良さそうに呻いた。
マウントを取られながら、ろくに身動きできない状態でのフェラは最高に股間にキた。竿を掴んでたくさん擦ってやると、見たことないサイズまで大きくなった。浮き出た血管にうっとりする。はやくこれで中をゴリゴリとえぐられたい。
「次はどうしてほしいの? 喉奥に突っ込みたい? それとも、もう挿れたい?」
一応ご主人様の意見は聞いてやらねぇとな。
大きさを損ねないように上下に擦りながら聞く。シモンは「挿れたい」と完璧な答えを返してきた。そうこなくっちゃ。
再び上に跨ってシモンの性器を後ろの穴に当てがった。ずぷりと沈んでいく感覚に思わず強く目を閉じる。
「あ、あっ。きもちいいっ」
背を反らして、容赦なく深く突き入れていった。
「ルイッ、ちょっと待て、駄目だって」
「やぁだ。シモンので腹ん中いっぱいにすんの」
極太ちんぽで犯される感覚に夢中になった。頭の中はシモンのことしか考えられなくなっていく。
濡れた下生えがくっつく。最奥まで辿り着いたことが分かった。
「ほんと、きもちい」
腰を浮かすと、その分を埋めるように突き上げてくる。駄目とか待てとか言う割にシモンも楽しんでた。
「ね、ベッド連れてって」
耳元で囁くと男前の頬に朱が差す。ちんちんがますます硬さを増したのを感じた。挿入されたまま、シモンは膝裏を抱えて立ち上がる。
「やだっ、ねぇ、いっかい抜いてよ、やっ、やぁああ!」
奥にちんこの先が当たってる。シモンの首元にしがみつくしかなくて、すごく意地悪だった。その状態であっという間に上り詰めてしまう。
まだ息も整わないうちに今度は立ったまま後ろから犯された。壁に手をついて、突き上げが激しくなると耐えられなくなってきて爪を立てる。腰を掴まれているせいで、快感を逃すことができない。
「イッちゃう! しもんやだっ、やだってばぁ……」
足の爪先が浮いて宙を掻く。シモンの脛を蹴って抵抗したのに、より深いところを抉られて喘ぐことしかできなくなる。吐精の瞬間の惨めさといったらなかった。キスで顔を赤くするようなウブだと嘲笑ったのが間違いだった。脱力した身体を優しく抱き上げられ、別室へと連れて行かれそうになる。
「も、むり、休憩する」
胸板に顔をすりつけて懇願した。少しの振動でまた達してしまいそうになる。このままだと相手のペースに呑まれて戻ってこれなくなる。そんな恐怖から「おねがい、ご主人様」と上目遣いで訴えた。
「煽ったのはルイでしょ」
「だって、そんなに慣れてると思わなかったんだもん。これまでいっぱい遊んできたの?」
「一途だって言っただろ。……一人としかしたことない」
「嘘だぁ」
口調から本気で言ってることは分かったけど軽口で誤魔化した。もしかして触れちゃいけない話題だった? ガチで泣きそうな顔になってるんだけど。
「ごめんね。聞かれたくなかった? ちゅーしてあげよっか。あ、もしかして恋人いんの?」
やっべ。相手がいる奴とヤるのは避けてたんだけどな。本命彼氏が出てきて修羅場になるなんて絶対嫌だし。シモンはモテそうな外見の割に童貞みたいな反応をするときがある。これはこいつの恋人とやらは、さぞヤキモキしただろうなって思った。
ここらでやめとくか?という考えが浮かんで、うーんと頭を悩ませた。続きがしたい。立ちバックだけで狂いそうなくらい気持ち良かったし、ちんちんも大きかった。これを逃したらもうこいつ以上の巨根には出会えないかもしれない。でも浮気相手にはなりたくない。めんどくさいから。
理性と欲の間で揺れているおれのことなど全く構う様子もなく、シモンはベッドがある部屋へと連れ込んだ。
あーあ、悪いんだ。浮気セックスほど萎えるもんはないから。名残惜しいけど、さっさと退散しよ。
起き上がろうとしたらシモンが腹の上に乗ってきた。おれも力が強いほうだけど、こいつの腕力には勝てない。素の力なのか、魔力で強化してるのか分からないけど、なんとなく前者なんだろうなと感じた。
おれ、自分より強い奴に組み敷かれるの正直大好き。キュンキュンしちゃう。
「質問への回答だけど」
「うん? 恋人いるかってやつ?」
「そう」
聞きたくねーって。これでいるって言われても状況的におれはもう逃げらんねぇんだから。無理矢理エッチするの確定の体勢になってんじゃん。
「恋人はいないよ。人生で唯一付き合った相手にはフられた」
「あ、そ」
「だから浮気にはならない」
それはそれでコメントに困るんだよなぁ。慰めセックスしたほうがいい? 癒しとか求めてたりする?
まぁ、おれが癒せるとしたら、目の前のちんちんだけなんですけどね。
「じゃあセックスし放題だね。良かったじゃん」
な? おれに情緒とか人の心とか期待すんなよ。ろくなコメント出てこないから。
案の定シモンは微妙な顔をしていた。かわいそうに。
「おれのこと、その恋人だと思ってズコバコする? いいよ。そいつの名前呼びながら突っ込んでも」
「ハァ……」
あー。なんかまた間違えちゃったみたい。甘い雰囲気は完全に霧散した。おれってこういうときの選択肢をことごとく外すんだよなぁ。それでも妥協することに決めたのか、額に軽く口付けられて、そのくすぐったさに身を捩った。
「ルイがバカなのは知ってたつもりだけど、今のはさすがに胸にきた。何で俺こんなことされても好きなんだろう」
おい、今聞き捨てならないこと言ったな。バカとは何だ。
「顔が可愛くなかったら許せなかったかも」
おれも。今の褒め言葉がなかったら許せなかったところだよ。
「おれの顔好きなの?」
「好きだね。世界一好みの顔してる」
ちゅ、ちゅ、と軽く唇にキスされて、おれはすぐにご機嫌になった。
「だろー? 結構整ってるほうだと思うんだよな。案外おれの顔に一目惚れして落札したパターン? いいねぇ。お目が高い」
「うん。惚れてるのは確かだね」
その言葉に今度はおれが顔を赤くする番だった。なんだこいつ。もしかしてセックスのときは心にもないことをスラスラと言える人なの? うわ、本気にしないように気をつけよう。
シモンのキスを受けながら決意を固める。いるんだよなぁ、こういう人たらし。先に好きになったほうが痛い目を見るのは分かりきってる。
「もう挿れていい?」
先程から太腿に硬いものが擦りつけられていて気になって仕方がなかった。自ら足を広げて、シモンを見つめる。
「前の恋人の名前で呼んでいいよ?」
わざと萎えるようなことを言った。お互いちょっと嫌なセックスだったなって思うくらいが丁度いいと思った。そうじゃないとこいつは延々と心にもない甘い言葉を囁いてくるから心臓に悪い。
シモンは意図を察したのか、フッと馬鹿にしたように笑った。
「かわいいね、ルイ」
ダメだってば。
押し込まれてきた性器に息を詰める。一息に奥まで突き入れられて、それがたまらなく気持ち良い。背筋がゾクゾクする。ヤバイって思ってるのに戻れない。
「ルイ。こっち見て」
「……やだ」
「嫌じゃないよ。感じてる顔見せて」
腰骨からジワジワと上がってくる快感に抗えない。目にかかっていた前髪をシモンが優しい手付きで払った。視線が交わってしまうと、もう我慢できなかった。愛おしいものを見つめるような瞳で見下ろされると言いなりになってしまう。
「俺の名前呼んで」
「しもん……?」
「そう。えらいえらい」
浅いところをえぐられて涙が溢れた。
「そこ、すきっ」
「うん。知ってるよ。あと、ここね」
「あっ、そこ、ごちゅごちゅすき、あっ、あッ」
身体を折り畳まれて、的確に感じるところを攻められる。首を振って上に逃れようとする。シモンの腕を引っ掻いた。
「ほら。イクとこ見せて。目閉じないで、俺を見て」
「できないっ、やだ、できないよぉ……っ」
潤む視界にシモンだけが映っていた。
「誰に抱かれてるか言ってごらん」
「しもん、シモンに抱かれてるっ」
「そう。じゃあルイが好きなの誰?」
「う、うっ、やだぁあ……言いたくないっ、んぁっ、ああっ!」
激しく突き上げられて達した。それなのにシモンは解放してくれなかった。性器の先から精子が溢れる。
おれが限界なのは分かってるくせに奥を何度も攻めた。好きだって言うまで終わらない。息も絶え絶えに「好き」と言わせるまで、シモンは決して諦めなかった。
最後にはべそべそと大泣きするおれを抱きしめて一番奥に出していた。強引過ぎる。でも今までにないくらい気持ち良くて癖になりそうだった。
隣に倒れ込んだ男の胸を無言で叩いて抗議した。やり過ぎ。今後シモンのちんちん無しで生きていけなくなったら責任取ってほしい。
慰めるように頭を撫でてくるけど、当分の間は返事をしないって決めた。不貞腐れてるおれの顔をシモンは目を細めて見つめてた。その様子でまた「かわいい」とか「好き」とか言ってきそうだったから一睨みすることで牽制した。これ以上おれの心を乱そうとするな。
そんな気持ちが伝わったのか、単に出してスッキリしたのか、シモンはそのままうとうととし始めた。
「ねむい?」
シモンは目を擦り、おれを抱き枕代わりに抱きしめた。腕の中で体温を感じていると、なんだか胸のあたりがムズムズしてくる。
「ごめん。ちょっと寝る。一時間くらいしたら起こして」
言うな否や、すやすやと寝息が聞こえてきた。相当疲れていたらしい。それはそうだ。転移魔法なんて使った後でセックスまで出来るこいつの体力がおかしい。
こっそりと寝顔を観察した。起きているときより幼く見える。
……うん。やっぱりそうだ。
「なーんか、見覚えあるんだよなぁ……」
どこかで会ったか?
記憶に引っかかる人物はいないけれど、あともう少し時間をかければ分かりそうな気がした。あるいは、もう一度名前を呼んでくれれば思い出せるかもしれない。
「シモン、シモン……?」
脱力した腕の中から抜け出す。下半身がべっしゃべしゃのぐしゃぐしゃだった。自分の身体と、雑にシモンの身体も拭ってやる。
記憶を掘り起こしながら服を着た。守れない約束には返事をしない主義だ。端から起こしてやるつもりなんて、さらさらなかった。
いや、でもまぁ。悪くなかった。
大変盛り上がるセックスだった。次また会うようなことがあればセフレくらいにはなってもいいな。
ポケットを探って百ペイ硬貨を見つけ出す。それを枕元に置いて、少し迷ったあとで頬に口付ける。
「またな」という呟きは、夢の中にいるシモンには届かなかった。
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