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まぬけな年上恋人をいっぱい×××した

 どうすっかなーと呟いて、辺りを見渡した。  右を見ても左を見ても男ばかり。路地の片隅で壁にもたれかかり、これからのことを考えた。  視線を感じる。一人二人ではなくて、何人も。興味がないふりをしているけれど見られてる。いや、単に見られてるんじゃなくて品定めなんだろうけど。  男物の靴がいくつも交差して、二人組を作ったり別れたりしていた。良い具合だ。上背があって筋肉質で頼り甲斐のありそうなナイスガイたちが、ワンナイトの相手を求めて狭い通りを行き交っている。  このへんには同性を恋愛対象にする男どもがわんさかいるって聞いて来てみたらドンピシャ。いいねぇ。こういうのだよ、おれが求めてるのは。  フンフーンと鼻歌を歌いながら腕組みをする。まだだ。まだ焦るような時間じゃない。お相手は腐るほどいるんだから見定めないとね。  夕暮れと共に街のランタンに火が灯されていく。  誰にしようかなぁと考えていると、ボフンと気の抜けた音がして悪魔が顔の横に姿を現した。 「なーに? おまえから出てくるなんて珍しいじゃん」  いつもは天使が出てきてから顔を見せるのに。そういう順番があるんだと思ってた。  悪魔は気まずそうだった。何なんだろうな、ここ数日のこいつらときたら。出しゃばりの天使にしても最近ウンともスンとも言わなくて黙り込んでるし。ま、理由なら分かってるんだけどね。 「……やめといたほうがいいんじゃねーか。いくらおまえの性欲に際限がないとしても、この辺りは特に治安が悪い。いつもみたいにアホみたいなキノコで自慰に耽るほうがマシってもんだ」  ヤッダ、悪魔くんたら。おれの身の安全を心配してくれるだなんて。いつもなら煽るくせにどういう心境の変化なんだか。 「おれはねぇ、顔には出さないようにしてるけど結構イラチンしてんの。イラチンって分かる? イライラチンポ。三日くらい禁欲したから下半身が大爆発寸前。だからオナニーなんかじゃ収まんねぇの。ガンガンにバックで突いてもらわないと一生勃起したままで過ごすことになっちゃうだろうね」 「おまえなぁ……そういうことばっかり言ってると、いつか本当に酷い目に遭うぞ」  性欲を持たない精霊に、おれの気持ちは分からない。三大欲求が満たされないっていうのは人間にとっては死活問題なんだよ? 夕ごはんは食べてきて食欲は満たされてるし、三日間オナニーすら我慢して早寝早起きしたからバッチリ目が冴えてる。あとは性欲を解放するだけ。それなのに相手がなかなか見つからない。  港町ではそれらしい男には出会えなかったから場所を変えた。  ここの繁華街は飲み屋が多くて、そういうことをするための宿屋や休憩所も点在している。酒飲むとヤりたくなる気持ちはスッゲーよく分かる。飲み屋で適当に誰か引っかけても良かったけど、どうにも酔いたい気分じゃなかった。今日は素面でぶち込まれたい。頭がクリアな状態でのセックスって滾るよね。  そんな話をしてたら悪魔は呆れ返って「おまえなんかもう知らん」とヘソを曲げてしまった。そしてスッと消える。話し相手がいなくなっちゃってつまんない。精霊ってエログロ苦手だから、そういう雰囲気を察するとすぐにセルフプチするんだよね。だから今ここにわざわざ現れたってことは、余程文句の一つや二つや三つや四つ言いたくて出てきたってことなんだろう。  おれが素直に聞くとでも思ってんのかな。  足元の小石を蹴って暇潰しをした。  うーん、まだかな。そろそろ来ても良い頃だと思うんだけど。  いい加減じれてきたところに、満を持して近付いてきた男がいた。あえて下を向いて、意識だけは相手に向けてた。これがテクだよ、テク。下心丸出しでヤリてーって顔した男はね、一旦無視すんの。そしたら自分のほうを向かせようとしてムキになるからね。 「今ひとり?」  男が話しかけてきた。一人といえば一人だし、そうじゃないともいえる。  周囲から舌打ちがいくつか聞こえてきて思わず笑ってしまう。そーね、おれってば美形だから。話しかけたもん勝ちなんだよね。  牽制し合ってた男たちの中から抜け駆けしてきた時点で良いガッツしてる。  おれはようやく男を見た。特別カッコ良くもないし身長低いし小太り。えーん、好みじゃない。でもこのぐらいが妥協点だな。これに関しては誰でも良かったし。 「ひとりだよ」 「このあと予定ある? もし良かったらごはんでも行こう」 「メシはいいよ。やりたいんでしょ? さっさとホテル行こ」  えいっと男の腕にしがみつく。あ、嬉しそう。顔がデヘデヘしてて何かに似てる。なんだっけな。カエル? いや、人間寄りで似たようなやつがいた。正解が喉まで来てる。えーと……確かダルティ―― 「ルイ。何してる?」  手を掴まれて後ろに引っ張られた。  硬い胸板に鼻先をぶつけた。視線を上に向けると、好みドストライクの顔面がある。  下がり眉が特徴的で、一見優しそうに見える男がおれの手首を強く掴んでいた。  何度か瞬きをした。  へぇ、そう来るんだ。思ってたより素直。いや、余裕がないのか。  腕を組んでいた男も驚いて振り返っている。二人の顔を見比べて、おれはうーんと悩んだ。先約を優先するべきか、昔の男に媚びておくべきか。百ペイなら返したはずなんだけどなぁ。余程おれのことを引き止めたいみたい。  顔面ドストライク男――シモンは「聞いてる?」と苛立ったようにおれの手を強く握りしめた。 「何って? 見りゃ分かるだろ。ナニをナニするつもりだけど」 「こいつと?」 「そう。この……そういや名前聞いてなかったな。ま、いっか。この名前も知らない誰かさんとホテル行って、二人きりでエッチなこといーっぱいすんの」  おれの答えを聞いて、シモンは心底嫌そうに眉間に皺を寄せた。 「見るからに不衛生そうだ。風呂も何日か入ってない匂いがする。性病を持ってるかも。ルイはそういうの嫌いだろ」  おい、名前も知らない誰かさんに向かって失礼だぞ。確かに小汚ぇなとはおれも思ってたけど。  歯に衣着せない直球の悪口に、不衛生男は顔を真っ赤にして怒り出した。 「お、おまえ、割って入ってきたと思ったら何なんだよ! ぼくが先にこの子に話しかけたんだぞ。早い者勝ちだ」  そうだそうだ、早い者勝ちだ。  囃し立てるおれを無視して、性病男(推定)とシモンは睨み合った。喧嘩すんなって。おれのために争わないでってお目目キュルキュルしてやろうか? 「ね、ねぇ、きみはどうなの? ぼくが性病持ってると思う?」 「どーでもいいだろ、性病云々は。めんどくせぇ。もうじゃんけんで決めろよ。勝ったほうとヤるから」 「じゃんけんなんて運じゃないか。金を多く出したほうが、きみと寝る権利を得ることにしよう。ぼくは十万ペイは出せるよ」 「金ぇ?」  おれが金で靡くような男に見えんの? それに関しては異議申し立てたい。だけど、それ以上にシモンの機嫌がどんどん悪くなっていくのをビシバシと肌で感じたので黙ることにした。ツラが良い男がキレるとこわいからね。 「俺は数日前にこの子をオークションで買ってる。ちょっと目を離した隙に逃げられちゃったけどね。購入時に従属契約も結んだ。俺の許可なしには何もできないよ。ルイ、そうだろ?」 「知らねー」  こっちに話振るな。従属契約ってなに? 初耳なんだけど。じとりと睨むとシモンは「話を合わせて」と囁いてきた。あーあ悪いんだぁ。こいつ嘘つきだ。おれが他の男に抱かれんのがそんなに嫌なのかね。そう思ったら、諦めのほうが強くなってくる。 「嘘だと思うなら契約書もある。見せようか?」  畳みかけると、性病男(仮)は嫌になったんだろう。捨て台詞を吐きながら、おれの腕を振り払ってどこかへ行ってしまった。根性なさ過ぎだろ。  小さくなっていく性病男の後ろ姿を見送る。  予想外にあっさりといなくなってしまったせいで計画が狂った。シモンが不安そうに顔を覗き込んでくる。そんな顔するくらいなら最初からやるなよなぁ。  わざとらしく唇を尖らせてシモンを見上げた。 「どうしてくれんだよ。あいつ行っちゃったじゃん。ぐちゃぐちゃのドエロいセックスしようと思ってたのに」 「どう見てもアソコも小さいよ、あんな男」 「あのねぇ、見た目でちんちんの大きさを測るのはマナーが悪いよ。ちんちんは秘宝だよ? 開けてみないと宝かゴミか分からないのがいいの。あーあ。また一から探さないといけなくなった」 「駄目だってば。言っただろ。ルイは俺が買ったんだから、他の男についていくなんて許さない」 「返しただろーが」  ぶすくれながら下を向く。何でそういう言い方しかできねーんだろ、こいつ。腹立つ。  シモンは「仕方ないなぁ」とでも言うように苦笑した。 「ルイはどうしたいの?」  探るような言い方が気に入らない。やだやだ、これだからチキン野郎は。ヤりたいこととかシたいこととかないんですかね。あるから追いかけてきたくせに。せめて責任くらい取れよな。 「まぁ……溜まってることだし、今夜はあんたが相手してくれるっていうなら他には行かない」  あっちに言わせるつもりだったのに我慢できなかった。……クソ。  手がじんわりと汗ばんでいくのが分かった。シモンは何かを言いかけて、それをぐっと呑み込んでしまう。  なんでだよ、言えって。 「……俺で良いなら」  目を逸らしながら、もったいぶった答えが返ってくる。気に入らないことばかりだけど逃げられる雰囲気でもない。  ハァー。めんどくせぇ男に目つけられちゃったな。  不満の代わりに溜め息を吐き出して、シモンの大きな手のひらを握り返した。  宿屋のベッドに沈み込んだ。  出入り口付近に設置されたランタンだけでは部屋全体を照らすには心許ない。ベッドと浴室しかない小さな部屋だった。シモンが窓を閉めると、一気に閉塞感が増して息苦しい。 「カーテンも閉めて」  月明かりが思っていたより眩しく感じた。裸を見られたくないっていう羞恥心は持ち合わせてないつもりだったけど、改めて顔を突き合わせると妙な気恥ずかしさがあった。  シモンはカーテンを閉めてくれなかった。体の上に乗り上げてくる男を見つめる。  あのぉ、シャワーもまだなんですけど。くんずほぐれつに睦み合うのは好きだけど元々清められた体が汚れていく過程に興奮するのであって、最初からきったねぇのは話が変わってくるんだよ。よく言うだろ、真っ白なキャンバスを俺色に染めたいって。それだよ。おまえ色に染めたいなら、最低限やるべきことがあるってこと。てことで、先にシャワー浴びてこいよ。 「シャワーは……いいか。入ってる間に逃げ出しそうだし。魔法で綺麗にしとく。防音魔法もかけておこう。ルイの喘ぎ声うるさいから」 「喘がせてるのは誰だよ。あんあん言わせるの好きなくせに。少なくもおれは悪くないからな」 「うん。俺のせいだね」  シモンが笑いながら鼻先を首筋に押しつけてくる。その流れで何をするつもりなのか、簡単に予想がついた。口を大きく開けて噛みついてくる。分かってたはずなのにビクッと肩が跳ねる。押さえつけられて、その力強さにゾクゾクが止まらない。  無理矢理されるのが好きだってことはお見通しみたいだった。  歯が皮膚に食い込んでいく。痛いのに感じてる。じっと息を詰めて耐えていると、歯型に沿って舌が這う。 「う、ふ……」 「後で治すから、ちょっとだけ頑張って」  いてぇんだよ、バカ。  これが始まると長いことは理解していた。下手に刺激すると噛み痕を倍くらいに増やされることも。だから今おれができるのはシモンの頭を撫でてやることくらいだった。  まるで猫みたいに嬉しそうに目を細めている。シモンはこう見えて甘やかされたいって願望が強い。本人が自覚してるかどうかは知らねぇけど。  首ばかり狙ってくるから、いいかげん辛くなってきた。 「他のところもして」 「他のところって?」 「全部。服着てても見えるところでもいいし、シモンにしか見せないところにも痕つけていいよ」  シモンの喉元がゴクリと上下する。言わせたがりの男のために恥を忍んで言葉にしてやってるんだから感謝してほしいくらいだった。おれってば、ベッドの上では尽くすタイプだからね。セックスを盛り上げるためなら多少の自己犠牲は厭わない。性癖に忠実に生きないと損だし、相手がこいつだからってのもある。  ボタンをひとつひとつ外していく間が惜しい。俯いたシモンの前髪が目にかかって表情が見えない。どうしても今、どんな顔をしてるのか気になって、腕を伸ばして髪を掻き上げた。  おれね、こいつの平たい額が妙に好きなんだよな。眉毛の形も良い。露わになった腹に釘付けになっていた緑の瞳がこっちを向いた。 「俺の服はルイが脱がせて」 「破っていい?」 「だめだよ」  何がおもしろいのかシモンは笑っていた。一番上のボタンを外そうとして上手くいかない。指が震えてることに、そのときようやく気がついた。  理由なら分かってる。だけど今ボロを出すわけにはいかねぇの。 「ルイ?」 「脱がせてやるから、その間おっぱい触って。乳首クリクリしてほしい」 「噛んでいい?」  頷いてやると、早速胸に吸いついてきた。はぁ、と息を吐く。白い歯に挟まれて自分の乳首がいじめられてるところを見るのってたまんねぇな。舌でベロベロされるとそれだけでイキそうになる。 「ぺろぺろすきぃ……」 「手が止まってるよ。はやく脱がせて」 「ん。わかってる」  たっぷりと唾液を含んだ舌で舐め回される。背を反らすと、その隙間に腕を入れられて抱き寄せられる。  ちゅうちゅうって音を立てながら硬くなった乳首を吸われた。密着したせいで身動きが取れなくてシモンの頭を抱えることしかできない。 「も、やぁっ、脱がせたいのにっ」 「赤くなってきた。かわいいね」 「聞けってばぁ……ん、んんっ」  シャツの襟元を掴んで引っ張る。シモンは容赦がなかった。唯一自由になっている足をバタバタと動かしたけれど意にも介さない。じわじわと顔が火照っていく。ヤバイ。本当にイク。  先端を噛まれた。内腿に力が入る。同時に下着の中が濡れていく感覚があった。生温かいのが広がって、しつこく舐られている間に徐々に冷たくなっていく。 「イッちゃった……パンツの中、気持ち悪い」 「見せて」  シモンがようやく上から退いた。一回達したせいで怠い。スラックスがうまく脱げないでいると、下着ごと引き下げられた。ゆるく勃ち上がった性器の先と下着が糸を引いてる。それを見て興奮したんだろう。何度も額にキスをしてくるからムッとして押しのけた。  それなのにまた力づくで押し倒そうとしてくる。  股間が散々なことになってるし冷たいし、おればっかり乱されてる。何でシモンがこんなふうに強引にしたがるのか分かってる。焦ったんだろ。おれが自分から他の男と腕を組んだから、慌てて俺のもんだって主張しようとしてる。独占欲強くて無口な男は、これだから困るんだよな。前の恋人に振られた理由も分かるよ。だってこいつ全然自分の思ってること言わねーんだもん。  なんかこう、もっとさ。こんなことする前にしなくちゃいけないことあるだろ。  いつまでも黙って受け入れると思うなよ。 「さっき、おれにどうしたいって訊いたけどさぁ。シモンはどうしたいの?」  言ってくれたらおれ、何でもしてあげるよ。とは言ってやらない。  シモンは虚をつかれたような顔をした。やべー、こいつ。実はおれ以上に何も考えてないのかも。 「俺は……ルイが喜ぶことがしたい」 「ほんとにぃ? 今のおれの惨状見て言ってる? 喜んでるように見える?」 「……見える」  わはは、大正解。さっすがマイダーリン。  おれのことで頭いっぱいなおまえが大好きだよ。  何を考えてるか知りたいんだろう。本心を探るような目付きをしたって、教えてって訴えるように腕を掴まれたって、おまえが素直になってくれなきゃ何にも答えてやんない。  シモンが好きなことをいっぱいしてやれば多少は口が軽くなるかなって出来心を起こした。 「今日はおれが上に乗っていい?」  なんかがっついてて怖いんだもん。組み敷かれたままだと多分抱き潰される。それだけは回避したいんだよね。  シモンがうれしーって顔で見つめてくるの想像しただけで胸が疼いた。 「へばって『シモンが突いてよ〜』って泣くんじゃない?」 「腰抜けちゃうの。そんときはちんちんの持ち主が責任持って引き継ぐべきだろ。受け入れる側も大変なんだからな。ちんちんが大きすぎてごめんなさいって謝ってほしいくらいだわ」 「大きくてごめん」 「フッ。本当に言った」  おれが笑うとシモンは嬉しそうにする。腹の上に跨ると頬を優しく撫でられた。 「ルイが笑ってると安心する」  出た出た。そういうことを大真面目に言われると困る。モテる奴ってのはどうしてそう小っ恥ずかしいことをサラリと言ってくるんだろうな。本当に大事なことは何も言わないくせに。  シモンが満足するまで撫でられることにした。頬から耳をくすぐって、髪に指が埋まる。反対の手が唇を掠めていくから噛みついて捕まえた。そんなお遊びみたいな触れ合いが楽しい。  さっきはシモンに邪魔されて上手くいかなかったけど、今度は服を脱がされるのを楽しんでいる様子だった。ベルトのバックルに手をかける。外すときの金属がカチャカチャって鳴る音だけで期待し始めてしまう。 「全然勃ってねーじゃん。どっかの誰かで抜いてきたの?」 「まさか。俺はルイ一筋だよ」含みのある視線を向けてくる。「どこかの誰かさんと違ってね」 「もー。すぐ嫉妬する。結局ついていかなかったんだからネチネチ言うなって」 「結構焦ったよ。あっちを選ぶかと思った」  ハァ? こいつマジでバカなのかも。あんなのおまえが見てるって知った上でやってんだよ。ポーズだよ、ポーズ。大魚を釣るには小魚を泳がせるなんて常識中の常識だろ。 「ちょっと揶揄おうとしただけだってば。本気にすんなよ。あ、だから奴隷契約とか訳分かんない嘘ついたん? 性奴隷ってことじゃん。エロ本の読み過ぎ」 「従属契約だよ。実際にオークションのオーナーからは提案されたけど意識のない相手と強制的にそんな契約したくなかったし」 「意識があったら検討してたってことかよ。ドスケベ」 「そんなことしなくてもルイは俺がお願いしたら大抵のことはしてくれる」  そうだろ、と殊の外強い視線を向けられてウッと詰まった。分かった上でやってるんだとしたら相当性格が悪い。 「俺が咥えろって言ったら素直に口を開けてくれるし、出したもん飲めって言われたらルイは逆らえない」  あごの下を撫でられると口の中に唾液が溜まってくる。上唇を親指の腹が押し当てられる。 「咥えて」 「ん」  逆らえない。シモンはおれのことをよく知ってる。ずりずりと下がっていって、立派な下半身を前にして正座をする。シモンのちんちんは元がデカイから掴んだだけでも片手では収まりきらない。最初はふにゃふにゃだったけど、すぐに硬くなり始めた。  顔を近付けると、わざとぴょこぴょこと上下に動かすから腹立つ。先端を追いかける様子を観察されてる。  竿を掴んで亀頭を口に含む。先走りの味は少ししょっぱい。先端のへこみを舌でぐるりと一周した。  悩ましげな吐息に気を良くする。おれのフェラテクは一級品だからね。ブチ込む前のちんこをベストな状態に持っていくのが技術が光るポイント。バッキバキになればシモンもおれも気持ち良いしお互いにウィンウィンってわけ。いわばこれは快楽の等価交換。セックスっていうのは一方的に与えるだけじゃなくて相互に高め合わないとお話にならない。その点、シモンは完璧に等価交換を理解してる。  足先でちんこを揉まれて身悶えした。足の指でこすこすされるの気持ち良い。 「ルイばっかり気持ち良くなってるよ。ちゃんと奥まで咥えて」  だって、息が苦しくてしゃぶりついてられないんだもん。代わりに唾液を垂らして両手使って擦ってたけど許してもらえなかった。ちぇっ。 「たくさん後ろでしゃぶってやるから、それでいいだろ」 「根元まで咥え込むんだよ」 「分かってる」  腹につくほど反り返った性器は充分に濡らしてある。跨って、先端を後ろにあてがった。 「やべ。めっちゃ滑る。ちんちんぬるぬるで上手く支えられない」 「手伝ってあげる」  腰を持たれて、グイと引き寄せられる。ずぷりと先端が埋まる感覚に肌が粟立った。 「おれ、やるっていったのに」 「最初だけだよ。あとは自分でやるんだよ」 「あ、入ってく……シモンのおちんちん入ってるっ」  上手だよと優しく言われて、ビクビクと身体が震えた。褒められると嬉しくてどうにかなってしまいそうになる。頭の中が眼前の男のことでぎゅうぎゅうになって、他のことが考えられない。シモンを喜ばせたくて、くっついていた膝頭を大きく左右に広げた。 「入ってるとこ見える?」 「うん。口みたいにパクパクしてる。俺のを食べてるね」 「エロい?」 「すっごくエロい。もっとエッチなとこ見せて」  そう言いながら一回だけ突き上げられた。目の前で火花が散るほど気持ち良かった。またその感覚が欲しくて、一気に呑み込む。 「あ、あッ、これすごっ」  びゅくびゅくと精子が飛ぶ。シモンの胸まで汚してしまった。イッたときの余韻が引いていかなくて、ぼんやりとそれを見つめていると「サボらないよ」と無慈悲にも下から突かれる。 「ん、だめぇ、今イッちゃったからっ! 気持ち良いの待ってよっ」 「待てない」 「おれ、自分でやるっ、やるからぁ……っ」  恋人繋ぎで手を掴まれて、抜き差しが激しくなると受け入れることしかできなくなる。 「やだ、やだぁ、わかんなくなっちゃうっ」  シモンの手に力が入る。押し倒そうとしてるのが分かった。阻止しようとして失敗する。体勢が逆転して、シモンが獲物を追い詰めたみたいな顔するから逃げたくなる。 「とまって、しもん止まってっ、奥ごちゅごちゅやだぁっ」 「やだやだしないで。気持ち良いことだけしてあげるから、俺のこと好きって言って」 「うそ、さっき痛くしたっ!」  噛まれたところがまだ痛い。優しくしてくれるのを良いことに駄々をこねた。首筋を見せつけると「うわ、痣になってる」と呟いていた。それだけでもうムカついて涙が出てきた。  感度が上がると感情まで制御できなくなる。歯を食いしばったのにポロポロといくつも目から溢れて止まらなくなる。  その間も激しい抽送は続けられて睨みつける。こいつ今、歯型を見ながら気持ち良くなってた。絶対そう。痕つけたくらいで手に入ったと思ってる。極めつけに諦め悪く「ねえ。好きは?」と催促してくるからタチが悪い。  言いたくない。口を引き結んで声も我慢した。 「本当にルイがやめてほしいならやめる」  あーもー。こいつは本当にどうしようもねぇな。  涙でべちょべちょになった頬を擦り寄せる。最初は冷たく感じたけど、徐々にお互いの体温が混じっていく。おれね、実はこれだけでも結構満たされてんだよ。あとは背中を撫でてもらえたら、もうそれで満足。好きの伝え方なんていくらでもあるからね。でもちゃんと言葉にしてほしい。付き合い長いのに、何でそんなことも分らねぇんだろ。 「好きだよ、シモン」  かつての恋人の唇がきゅっと閉じるのを見て、変わらねーなと思った。口元が綻んでしまいそうなのを耐えてて可愛い。おれのこと大好きだもんな。あとは何だっけ? やだって言われたくないんだったか。拒絶の逆だから受容? 「来て。シモンのでいっぱいにして」  おれはとことん、おまえに甘いらしい。  中で元気を失ってた性器がどんどん存在感を取り戻していく。内側から押し広げられて、イイところを擦られると全部どうでも良くなってきてしまう。  徐々に叩きつける速さが増していく。  めいっぱい揺さぶられるの好き。ケツを掴まれて、左右に割り開かれる。下っ腹に力が入ってしまう。締めつけて、シモンの形を覚えようとするのに突かれてたら思考がとろけていく。 「すきって、言って」  腕を伸ばすと抱き寄せられる。思ってたより恥ずかしくて顔を見られたくなかった。  シモンはしばらく何も答えてくれなかった。無言で犯されていると段々と惨めな気持ちになってくる。先程とは別の意味で泣きそうになって堪えていると、中で大きく性器がうねった。  達したのが分かった。いっぱい出されてる。身体を離そうとしても抱きしめる力はむしろ増した。  好きって言ってくれなかったくせに。ずるいんだよ。  強情な男を引き剥がしたくて横っ面を張った。 「好きなんかじゃ足りない。愛してるよ」  嘘つき。 「それなら何で、おれの記憶消したの?」  一瞬、固まったあと、何かを言いかけたシモンの口を塞いだ。……信じらんねぇ。こいつまた忘却魔法使おうとしやがった! 「ルイ、待て。待った!」 「いいかげんにしろよ、このクソバカ」 “拘束しろ!”  股間を蹴られると思ってガードしたシモンがそのままの体勢で魔法の紐で縛られていく。おれだって簡単な魔法くらい使える。誰に教えてもらったと思ってるんだよ。 「もう我慢できない。一回目のとき、最初におれの記憶を消したときに何て言ったか覚えてない? 『次それやったら別れる』って言ったはずだよな」  このボケは忘れてるかもしれないけど、こっちは覚えてる。記憶力は良いほうなんだよ。シモンがこんなアホみたいな魔法を使わなければ!  すばやく荷物をまとめて、ついでにシモンの鞄から財布を抜き取った。あーあー。期待して損した! たった一言でも謝ってくれさえすれば許してやったのによぉ。バカだ。この強情男も、おれも。 「おまえなんかもう知らねー。勝手にしろ」  呆然とする元恋人を置いて、力いっぱいドアを閉めた。全身がギシギシ痛むけど意地で足を進める。  クソ、クソ、クソ! 全部クソだ!  ぼたぼたと涙の粒をこぼしながら、あのボケが追ってこられないところまで逃げてやろうと決める。  おれは、こんなに愛してるのに。  あのクソボケは何も分かってない。

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