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第6話

それから霧矢の生活は少しだけ変化した。塔矢に学園内では今まで通り声をかけずに他人のように過ごしてほしいと頼んだ。霧矢は学園中からの嫌われ者だから、こんな自分と連んでいる生徒会長なの心象が悪くなると思ったからだ。 塔矢はそんなこと気にしなくていいのに、と言ったが霧矢は譲らなかった。 その代わりに夜になると塔矢の部屋で二人で過ごした。塔矢は生徒会権限で一人部屋だったので、そこなら人目を気にする必要もなかったからだ。 食堂で食事をしようと言っても霧矢はYESとは言わないので、塔矢は自室で霧矢のために料理を振る舞った。霧矢は塔矢に負担をかけたけなかったのでいらないと言ったが、そこは塔矢が譲らなかった。 塔矢は霧矢のことをそれはもうデロデロに甘やかした。愛情に飢えていた霧矢は自然とその愛情に溺れていった。 (きっといつか捨てられるのに、こいつに依存しちゃダメなのに) そう思っていても、愛されることに、甘やかされることに慣れていない霧矢はどんどんと塔矢に溺れていくだけだった。 「霧矢、出会った頃より随分可愛くなったね」 「は?」 今まで、自分のことをかっこいいという人間はごまんといたが、可愛いと言ってきた人間は一人もいなかった。だからこいつは何を言っているのだろう、と霧矢は本気で思った。 「そんなわけのわからないこと言うのはお前くらいだ」 「いいんだよ、他の人にわからなくて、俺だけがわかってればいいことなんだから」 そう言うと嬉しそうに笑いながら塔矢は霧矢の髪を撫でた。嬉しいやら恥ずかしいやらくすぐったいやらで霧矢は顔を赤らめ俯いた。そうすると塔矢は笑みを深めた。 夜は大抵塔矢の部屋で眠り、霧矢は明け方にベッドを抜け出し、窓から自分の部屋へ戻った。誰かに塔矢の部屋から出るところを見られるわけにはいかないと思ったからだ。危ないからやめて欲しいと塔矢は言ったが、霧矢はそれも譲らなかった。 そんな生活を送るようになって霧矢はクラブには行かなくなっていた。誰かと一緒にいたくて行っていた場所だったので、今の霧矢には行く必要のない場所になっていた。今、隣には塔矢がいて、それだけでいいとさえ思っていた。 ただ常に不安が付き纏っていた。塔矢にいつ捨てられるのだろうかという不安と、そして霧矢をさらに不安にさせたのはクラブで連んでいた連中だった。彼らから頻繁に連絡が入るようになっていたが、霧矢は返事をするのが煩わしく無視をしていた。 自分にとって寂しい時にだけ利用して申し訳なかったな、という気持ちがないわけではなかった。

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