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第7話
そんな穏やかな生活が一変したのは突然のことだった。クラブでつるんでいた連中が学園まで押しかけてきたのだ。それは別に学園を荒らしに来たというわけではなく、純粋に連絡の取れなくなった霧矢を心配してのことだった。
ただ育ちの良いお坊ちゃまが大半を占める学園だ、異物が紛れ込んだような目線が向けられるのは当然だった。彼らはそれに対して怒りで対応した。
「何見てんだよ!!俺らは霧矢には会いに来ただけだっつの!!」
あぁ、やっぱりか、この手の連中はあの男絡みに決まっている、誰もがそう思った。
霧矢は足早に校門へ向かった。この学園の連中になんと思われても構わないけど、奴らに弁解しなくては、そう思いながら。
校門に着くと霧矢以外にも学園の人間がいた。塔矢だった、霧矢は驚いたものの、生徒会長だから当たり前か、と思った。そこにいたのは塔矢だけではなく恐らく他の生徒会メンバーであろう人間もいた。
その人間が生徒会の人間なのか霧矢にはわからなかったが、塔矢が引き連れているからそうなのだろう、と思った。
「霧矢!霧矢じゃん!」
霧矢の存在に気がつくと、彼らの一人が嬉しそうに声をかけてきた。
「元気だったんだな、急に連絡つかなくなって焦ったぜ。どっかで死んでるかと思った」
「悪い、連絡してなくて」
「全然返事もしてくれないからさ、前にここの生徒だって誰かから聞いたから、来ちまった」
純粋に、霧矢を心配してのことなのはわかったし、ガラは悪いが基本的に身内に優しい。クラブにも来ず返事もなく、家族とうまくいっていない霧矢を心配して来てくれたのだ。こんな風に心配してくれる人間を利用してたなんて俺は酷い人間だな、と霧矢は胸が痛んだ。
その反面学園では目立ちたくなかった霧矢はなんでわざわざこんな山奥の学園まで来たんだ、とも思っていた。
どこからどう見ても今の霧矢は悪目立ちしているし、何より塔矢に迷惑をかけているであろうこの状況が耐え難かった。
「会長、やはりあの男の知り合いみたいですよ」
ひそり、と塔矢の隣にいた生徒が塔矢に耳打ちする。
「こんな野蛮な人間をこの学園においていて良いのですか?この学園にふさわしくないですよ」
腸が煮えくり返るとはまさにこのことなのかもしれない、と霧矢は漠然と思った。それは霧矢だけではなく霧矢の友人、と言っていいのかわからないが、友人に対する侮辱も含まれていた。おい、とそいつに声をかけようとしたその時だった。
「そうだね、これはちょっとお痛がすぎるかもね」
塔矢のその返答にガツンと頭を殴られたような衝撃に襲われた。ズキズキと頭が痛み、耳鳴りと共に何も聞こえなくなる。
霧矢はその場に立っているのがやっと、という状態になっていた。俺はこいつにとっても結局いらない人間だったのか、と思いそのまま霧矢は校門をくぐった。
後ろで塔矢がどこへ行くんだい!待って!と叫んでいたが、霧矢の耳には入ってこなかった。他の生徒会メンバーに制止され、霧矢を追いかけてきたのは霧矢の友人だけだった。
「おい、霧矢、どこ行くんだ?」
「クラブに行く」
一言だけそう答えると霧矢はどこか遠くを見つめたまま歩き出した。霧矢の友人は制服のままじゃ流石にまずいだろ?と言って、霧矢に服を貸してくれた。クラブはいつもと変わらない喧騒で、ギラつくネオンが目に痛かった。
頭痛は先ほどよりも酷くなっていて、ズキズキというよりもガンガン、という感じに近かった。
それでも学園内にいたくはなかった。
(あのまま、あそこに、残っていたら……)
そしたら塔矢に何を言われていただろうか、想像するのも嫌になり、霧矢は思考を閉ざした。
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