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第8話
飲み物を片手にいつものソファーに座り、ぼんやりと店内を眺める。時折ちらちらと女性からの視線を感じたが、霧矢はそれらをすべて無視していた。
霧矢にその気がないとわかると、女性たちは別の男に目をつけて去って行った。
(結局、あいつにも俺はいらない存在だったってことか……)
霧矢は頭痛で回らない頭でぼんやりと考えた。あの瞬間霧矢は期待していたのだ、塔矢が自分を庇ってくれることを。
そんなことはない、霧矢はこの学園に必要だ、そう言って欲しかったのだ。塔矢ならば自分を必要としてくれるはず、霧矢はそう信じていたのだ。たが塔矢の返答は予想とは異なるもので、その瞬間霧矢は塔矢に切り捨てられたのだと思った。
自分は結局誰にとっても必要な存在ではないのだ、霧矢はそう思ってしまった。そう思った瞬間から、霧矢は何もかもがどうでもよくなっていた。
「霧矢、どうした?」
霧矢を学園まで迎えに来た一人が声をかけてくる。あの学園に居場所がなくても、ここにはあるのかも、と霧矢はぼんやりと考えていた。
「別に……」
「もしかして俺らが学校に行ったのよくなかったか?あんなお坊ちゃまばっかりだと思わなくてよ。俺ら場違いだったよな?」
「んなの、どうでもいい……」
「もしかして、俺らとつるんでることあっこにいた人に知られたくなかったとか?」
ぴくり、と反応してしまう。別に、知られたくないということではなかった。ただ、霧矢は塔矢のことを思い出して反応してしまったのだ。
「てか、あそこにいた黒髪ってよくここに来てなかったか?」
「知らねー」
霧矢はそれ以上塔矢のことを思い出したくなくて、これ以上詮索するなという雰囲気を醸し出した。それを察したのかそれ以上彼が追求してくることはなかった。
「なぁ、慰めてくんない……?」
「え?」
「なんか、わかんねーけど、お前、俺のこと好きだろ?」
霧矢は自分より少し体格のいい男にしなだれかかり、上目遣いで聞く。その気はなかったのだろうが霧矢のその仕草によってゴクリと喉を鳴らしたのがわかった。あとひと押しだ、と思い霧矢は畳みかける。
「な、ダメ?」
そいつの指を握りながらダメ押しで言う。指を握りながら、あいつとは違う、ゴツくて男らしい手だ、などとぼんやりと考えた。陥落した男は鼻息荒くクラブの上階、VIPルームへと霧矢を連れて行こうとした。
男と共に立ち上がり、VIPルームを目指そうとしたところで誰かに腕を引かれる。
「それは、ダメだよ」
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