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第10話
「もしかして、俺は間違ってた……?あの場で霧矢を庇った方が良かったの……?」
不安そうに揺れる塔矢の瞳を見ながら、霧矢は二の句が継げなかった。全部、己のせいだったのだ、こんなに恥ずかしいことはあるだろうか。
そう自覚すると霧矢はみるみるうちに真っ赤になった。
「どうしたの、霧矢?」
「うるせぇ!!!」
気が付くと霧矢は大声で怒鳴っていた。霧矢が突然大声を出すと思っていなかった塔矢は驚き目を見開いた。
「ご、ごめん」
「お前が!お前が悪いんだろうが!」
一度口を切ってしまえば、そこから言葉が止まらなくなった。
「あんなん、俺のことが好きなんだったら、少しくらい庇ってくれてもいいじゃねーか!何が恋人だよ、恋人が悪口言われてんのに黙って乗っかりやがって!俺が傷付かないとでも思ってんのかよ!」
もはや自分の意思でコントロール出来ずに何を言っているのかわからなくなっていた。
「どいつもこいつも俺の気持ちなんか考えやしねぇ!!ふざけんな!!馬鹿!!」
最後は子供の悪口になってしまっていた。一気に捲し立てるとそれに腹を立てた塔矢も言い返してきた。
「誰が馬鹿だよ!俺にだって立場があるんだから庇える時と庇えない時があるに決まってんだろうが!俺だって腹立ってるに決まってるじゃん!大好きな霧矢の悪口言われてるんだからさ!!」
「俺のこと好きだってんならもっと言い方考えろよ!!俺だってお前に惚れてんだから傷付くに決まってんだろうが!!あんな奴のことよりもっと俺だけのこと考えてろよ!!」
そこまで言うと霧矢はハッとした、自分は今とんでもないことを口走ったのではないか、と。
現に塔矢も呆然としている。それもそのはず、霧矢は今初めて塔矢に好きだ、と告白したのだから。しまった、と思いながらその場から逃げ出そうとするも、塔矢に腕を掴まれたままだ。呆然としてるものの力は緩むことなく逃げ出すことができなかった。
クラブのど真ん中で大声で告白してしまったなど、霧矢は羞恥でいっぱいだった。
「今、なんて言った……?」
ようやっと塔矢が声を発した、その声は掠れていた。声からも塔矢の動揺がありありと伝わってくるようだった。
「あのさ、俺、もう行くからさ、二人でゆっくり話したら?帰ってちゃんと話し合った方がいいと思うぜ」
どう返事をしたら良いか俯いていた霧矢に助け舟を出したのは先ほど誘った友人だった。目の前でしょうもない痴話喧嘩を繰り広げてしまい、巻き込んで申し訳ない気持ちと羞恥で霧矢は彼の顔をまともに見れなかった。
「霧矢、今日は色々悪かったな。二人で話し合って、落ち着いたらまたこっち来いよ。俺たちはいつでもお前のこと待ってるしさ」
彼は霧矢の制服が入った袋を差し出しながら笑顔で言った。霧矢は羞恥やらなんやら訳のわからない感情になりつつ袋を受け取り、ありがとうと一言だけ礼を言った。
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